トルコリラ円見通し ドル円の反騰で持ち直すがドル高リラ安は進行
〇週末のトルコ円、米指標鈍化で7.49まで下落後、パウエル議長タカ派発言で高値7.57へ切り返す
〇対ドル18.20で連日の安値更新、ドル高リラ安継続中だが、当面はドル円動向に左右される展開続く
〇今週はトルコ4-6月期GDP、米8月雇用統計予定、リラ安加速の場合下落再開のリスクも
〇米ジャクソンホール講演で引き締め姿勢強調、利下げ強行のトルコ金融政策、異様さが目立つ
〇7.53以上での推移中は、7.62超えから7.65前後への上昇を想定する
〇7.53割れから続落の場合は7.49試しとし、7.49割れからは7.40前後試しを想定する
【概況】
トルコリラ円の8月26日は7.57円から7.49円の取引レンジ、27日早朝の終値は7.56円で前日終値の7.51円からは0.05円の円安リラ高だった。
8月26日夜の米PCEデフレーターが予想を下回る鈍化となったことでドル円が下落した局面でトルコリラ円はこの日の安値7.49円をつけて8月23日夜安値7.50円をわずかに割り込んだが、パウエル米FRB議長によるジャクソンホール講演において大幅利上げ継続姿勢が改めて示されたことでドル円が137円台回復へ反騰して27日早朝には137.55円まで戻したため、トルコリラ円も円安と同調して27日早朝にこの日の高値となる7.57円へ切り返した。対ドルでのリラ安基調は継続しているものの、ドル/トルコリラの値動きを上回るドル円の反騰でトルコリラ円も持ち直した印象だ。
週間では8月19日終値7.57円から0.01円の円高リラ安。8月2日に7.27円まで急落したところから8月23日には7.62円まで戻したが、6月27日高値からの大幅下落一服により日足レベルではやや底上げをしつつジグザグ型の中段持ち合いを形成している印象だ。
【ドル/トルコリラは18.20リラへ安値を更新】
ドル/トルコリラの8月26日は18.20リラから18.12リラの取引レンジ、27日早朝の終値は18.14リラで前日終値の18.17リラからは0.03リラのドル安リラ高だった。
8月18日のトルコ中銀による予想外の利下げ強行で1ドル18リラの壁を超えて当日安値で18.14リラをつけたが、8月22日にはエルドアン大統領が「利上げの必要はない」と述べて利下げ政策継続を強調したことから18.15リラへ安値を更新、24日に18.16リラ、25日に18.18リラ、26日も18.20リラへと連日の安値更新となり昨年12月23日高値10.06リラ以降の最安値更新が続いている。
8月25日終値で18.17リラをつけて終値ベースでの史上最安値を更新したが、26日は取引時間中の安値更新後にリラ買い戻し優勢となって終値ベースでの史上最安値更新には至らなかった。
週間では8月19日終値18.09リラから0.05リラのドル高リラ安だった。
【当面はドル円の動向に左右されやすいがドル高リラ安の加速に注意】
ドル/トルコリラにおけるドル高リラ安は進行中だが、トルコリラ円にとっては8月18日のトルコ中銀による予想外の利下げ等によるリラ急落等を除けば7月後半からはドル円の変動率がドル/トルコリラの変動率に勝っているためにドル円の動向に左右される展開が続いている。
ドル円が7月14日高値から8月2日安値へと大幅下落した局面でトルコリラ円も7.90円台から8月2日安値7.27円へ下落し、ドル円が8月2日安値を起点に二段戻しに入るとトルコリラ円も8月9日高値7.60円を8月23日高値7.62円でわずかに上抜いて二段戻し型の動きを見せている。ただし、ドル高リラ安により上値が抑えられるためにドル円が8月2日への下げ幅に対して凡そ8割を戻して7月14日高値へ迫っているものの、トルコリラ円は7.60円台では上値が重くなり、底上げしつつもジグザグ型で7月後半の下落を解消できない範囲にとどまっている印象だ。
ドル円が8月23日高値137.71円を超えて7月14日高値139.39円へ迫ればトルコリラ円も円安による押し上げで戻り高値を切り上げる可能性も考えられるが、ドル高リラ安が加速する場合は円安では押し上げきれずにリラ安優勢で失速することも考えておく必要があるだろう。
当面の予定として、8月31日のトルコ4-6月期GDP、9月2日の米8月雇用統計、9月5日のトルコ8月CPIと重要イベントが続くが、そこでリラ売りが加速する場合はトルコリラ円もジグザグ型の調整から下落再開へ進みかねないと思われる。
【3か月サイクルではまだ下げ足りず】
トルコリラ円の日足チャートでは概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルで推移しており、昨年12月20日に史上最安値をつけたところからは今年3月11日安値、6月16日安値で底打ちしてきた。8月2日安値からやや戻しているものの底打ちの日柄としては浅いため、現状のジグザグ型の下げ渋りが途切れるところから下げ再開に入り、このサイクルの安値形成期と想定される9月半ばから10月序盤にかけての間へ一段安しやすい状況にあるのではないかと思われる。
今年3月11日安値7.73円、6月16日安値7.60円が前回までのサイクルボトムであり、移動平均では26日線に到達しているが52日線(現在7.72円)には届いていないことを踏まえると、7.60円台から7.70円台序盤では戻り売りにつかまりやすいのではないかと思われる。
8月23日以降は7.50円前後を下値支持線として下げ渋ってきたため、7.49円割れからは下向きと考えるが、8月2日と8月11日の安値を結ぶジグザグ展開での下値支持線も7.50円近辺に来ているため、7.49円割れから続落に入る場合は支持線割れによる下落再開感が強まり、8月11日安値7.33円、8月2日安値7.27円を順次試してゆく流れへ進みやすくなると考える。
【ジャクソンホール講演後の情勢変化】
パウエル米FRB議長によるジャクソンホール講演では「景気よりも物価抑制」との姿勢が改めて強調され、年末への大幅利上げとその後も引き締め状態を維持する姿勢が示された。米FRBの引き締め姿勢を中核として今後は主要国の引き締め姿勢も強化され、新興国は通貨防衛とインフレ抑制のための利上げ継続を余儀なくされると思われるが、そうした状況にあっても逆に利上げしないで利下げするトルコの金融政策についての異様さが突出してくると思われる。
仮にトルコ中銀が9月に連続利下げを強行する可能性が高まるようだと、トルコ中銀や財務省によるリラ安抑制策ではリラ安の速度調整になったとしても持ち堪えられず、対ドルでの史上最安値に接近するところでリラ売りが勢い付く可能性も抱えていると注意したい。
米国がロシア制裁に関連してロシアと通じるトルコ企業への制裁発動の可能性を書簡で警告したことも地政学的なリラ安へのリスクとして今後の続報に注目したい。
以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)当初、7.49円を下値支持線、7.62円を上値抵抗線とする。
(2)7.53円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは7.62円超えから7.65円前後への上昇を想定する。7.65円以上は反落注意とするが、7.55円以上を維持しての推移なら高値試しを継続しやすいとみる。
(3)7.53円割れから続落の場合は7.49円試しとし、7.49円割れからは8月2日以降の戻り一巡による下落期入りとみて7.40円前後試しを想定する。また7.49円以下での推移が続くうちは安値試しを続けやすいとみて、先行きは7.30円台序盤、さらにリラ売りが加速し始める場合は8月2日安値7.27円に迫る流れと考える。
【当面の主な予定】
8月29日
16:00 8月 経済信頼感指数 (7月 93.4)
16:00 7月 貿易収支 (6月 -81.7億ドル)
8月31日
16:00 4-6月 GDP 前期比 (1-3月 1.2%)
16:00 4-6月 GDP 前年同期比 (1-3月 7.3%、予想 7.5%)
9月1日
16:00 8月 イスタンブール製造業PMI (7月 46.9)
20:30 週次 外貨準備高 8/26時点 グロス (8/19時点 714.9億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 8/26時点 グロス (8/19時点 138.8億ドル)
9月5日
16:00 8月 消費者物価指数 前月比 (7月 2.37%)
16:00 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 79.6%)
16:00 8月 消費者物価コア指数 前月比 (7月 3.4%)
16:00 8月 消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 61.7%)
16:00 8月 生産者物価指数 前月比 (7月 5.17%)
16:00 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 144.61%)
注:ポイント要約は編集部
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