トルコリラ円見通し トルコ6月CPI悪化でドル高リラ安だったが円安に支えられる
〇トルコリラ円、7/4午前8.04へ下落後いったん8.09まで戻すも、CPI発表後に売られ夜8.04まで下げる
〇しかしドル円が上昇に転じ深夜8.09へ再び戻し、7/5午前序盤ドル円続伸に押し上げられる
〇対ドル、7/4は16.84から16.73の取引レンジ、CPI発表直後のリラ売りにより6/27以降の安値を更新
〇昨日発表のトルコ6月CPI、前年同月比は80%に迫る大幅上昇、PPIも依然として高い伸び率
〇8.06以上での推移中は上向きとし、8.11超えからは8.14前後への上昇を想定する
〇8.06割れを弱気転換注意とし、8.04割れからは8.00前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の7月4日は8.09円から8.04円の取引レンジ、5日早朝の終値は8.06円で先週末終値と変わらずだった。
7月4日夕刻に発表されたトルコ6月消費者物価上昇率が前年比78.62%となり5月の73.5%からさらに悪化したことがリラ売り材料となりドル/トルコリラは発表後にドル高リラ安へ進んだ。トルコリラ円は午前にドル円が134.70円台へ下げたところで8.04円へ下落したところからいったん8.09円まで戻していたが、消費者物価上昇率発表から売られて夜安値では8.04円の同値まで下げた。しかしリラ売りが一服する中でドル円が上昇に転じたことで4日深夜には8.09円へ再び戻し、5日午前序盤にドル円が続伸したことに押し上げられて戻り高値切り上げを伺う位置取りとなっている。
ドル円が7月1日午後に134.74円へ下落し、1日深夜と4日午前にも134.70円台まで下げたものの安値更新を回避して足場を固め、クロス円全般の上昇基調と欧米の長期債利回り上昇再開感から5日午前には136円に迫ってきており、トルコリラ円もドル円の騰落に合わせて8.04円前後の水準を何度か試したところで足場を固めていったん持ち直しに入ってきた印象だ。
【トルコのインフレ悪化でドル高リラ安反応】
ドル/トルコリラの7月4日は16.84リラから16.73リラの取引レンジ、5日早朝の終値は16.80リラで先週末終値の16.76リラからは0.04リラのドル高リラ安だった。
7月4日16時発表のトルコ6月消費者物価上昇率が5月からさらに悪化したことで発表直後のリラ売りにより6月27日以降の安値を更新した。
米国市場は休場だったためにその他の手掛かりには乏しかったが、ユーロ圏の5月生産者物価上昇率が前年比で36.3%となり4月の37.2%からは若干低下したものの深刻なインフレ状況を示したことで金融引き締めが強化されるとの思惑から欧州等の長期債利回りが上昇し、休場明けの米長期債利回りも5日午前序盤は先週末までの大幅低下からの反騰気配で開始している。
欧米の物価対策についてはロシア制裁の影響によりECBがやや出遅れているものの今月のECB理事会では利上げ再開に入り、米連銀もパウエル議長発言にみられるように「景気よりもインフレ抑制」という強い金融引き締め姿勢を見せていることは、欧米と比較してはるかにインフレが深刻化しているトルコにおいて利上げを拒否するエルドアン政権と中銀に対する不信感を強めるものと思われる。
6月24日に突然発表された外貨保有企業に対する融資規制などによるリラ防衛のための無理筋な政策は今後もまだ繰り出される可能性もあるだろうが、6月24日から27日にかけての一時的なリラ急伸も収まっており、トルコリラのファンダメンタルズ的な弱さが再び認識されやすい状況となってゆくのではないかと思われる。
【トルコのCPI前年比は80%に迫り24年ぶり高水準に】
7月4日16時に発表されたトルコの6月消費者物価上昇率は前月比が4.95%となり市場予想の5.38%を下回ったものの5月の2.98%から大幅に伸びた。前年同月比は78.62%となり5月の73.50%から大幅に上昇、市場予想の78.35%も超えた。コア指数の前年同月比は57.3%となり5月の56.0%からさらに悪化した。
6月の生産者物価上昇率は前月比で6.77%となり5月の8.76%からは低下したものの依然として高い伸び率で、前年同月比は138.31%となり5月の132.16%からさらに伸びた。
消費者物価のうち、運賃・輸送は前年比123.37%、食料・飲料品は93.93%、生活用品は81.14%となっている。
国内のインフレ率についてはすでに100%をはるかに超えて160%近い水準との調査報道もあるが、ハイパーインフレに近い状況にあり、エルドアン大統領による「利下げがインフレを抑制する」との持論は結果を出していない。
トルコの政策金利は現在14%であり、消費者物価上昇率との差である実質金利はマイナス64.62%と計測される。
エルドアン大統領は付加価値税の8%から1%への大幅引き下げや、今年二回の最低賃金の引き上げ、6月24日に発表した基準を超える外貨保有企業に対する融資禁止措置などでリラ防衛及び生活支援策を示してきたが、高インフレによる国民の不満も高まり求心力低下が懸念される状況だ。
次回のトルコ中銀による金融政策決定会合は7月21日でありまだ先だが、大統領は6月6日に「利下げ政策を継続する」と演説しており、トルコ中銀にとって利上げはありえない選択だろう。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月27日午後高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとしていたが、6月30日時点では下げ一服となった29日午後安値を直近のサイクルボトムとして底割れからは新たな弱気サイクル入りとし、30日夜に29日午前安値を割り込んだために7月1日午前時点では底割れによる弱気サイクル入りとして7月4日午後から6日午後にかけての間への下落を想定した。
7月4日午前と夜に8.04円の安値を付けてから戻しているため、7月4日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。サイクルトップ形成期は5日午前から7日午前にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあると注意し、8.04円割れからは弱気サイクル入りとして7日夜から11日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、7月4日深夜の上昇から遅行スパンが好転し、先行スパンへ潜り込んできているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパン上限が上値抵抗線となるのではないかと思われる。遅行スパンが再び悪化するところからは下げ再開とみて安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は7月1日午後からの安値更新に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて60ポイントまで切り返している。50ポイント以上での推移中は上向きとして70ポイント手前を試すとみるが、70ポイント手前は反落警戒とし、50ポイント割れからは下げ再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.04円を下値支持線、8.11円を上値抵抗線とする。
(2)8.06円以上での推移中は上向きとし、8.11円超えからは8.14円前後への上昇を想定する。8.14円以上は反落警戒とするが、8.06円以上を維持しての推移なら6日午前にかけても高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.06円割れを弱気転換注意とし、8.04円割れからは8.00円前後への下落を想定する。8.00円割れは買い戻しも入りやすいとみるが、下げ足が早まる場合は7.97円から7.95円にかけてのゾーンへ下値目途を引き下げる。また、8.04円を割り込んでの推移なら6日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7月7日
20:30 週次 外貨準備高 7/1時点 グロス (6/24時点 603.4億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 7/1時点 ネット (6/24時点 75.3億ドル)
23:30 6月 財務省現金残 (5月 1492.3億リラ)
7月8日
16:00 5月 経常収支 (4月 -27.4億ドル)
7月13日
16:00 5月 失業率 (4月 11.3%)
注:ポイント要約は編集部
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