NZウィーラー中銀総裁の商工会議での講演
ニュージーランド中銀ウィーラー総裁がOtago商工会議所でのスピーチ時の内容を記載したものです。
(本文の抜粋)
金融政策が厳しい時期に直面している。
世界的な金融危機が起きてから約10年位経過したが、世界的経済はまだ厳しい局面にいる。世界的に強烈な緩和にも関わらず、トレンド以下の成長、貿易取引の下降トレンド、世界的に広がる保護主義、低インフレと低金利、この中で金融資産は高い価格の中にいる。これらが複雑に絡み合って世界成長の正しい伸びを阻害しているかもしれない。
この様な状況で、「中銀は経済データに基づく分析・研究・シナリオ分析を行い、金融政策の持続的見直しを進めて行かねばならない」とウィーラー総裁は述べている。
そして、総裁は柔軟なインフレ目標こそがNZにおいて金融政策を遂行していくうえで、適切な金融フレームであるとみている。十分な柔軟性を備えることで、外的ショックなどの厳しい衝撃を和らげ、適応させていくことが許されており、金融政策に最も重要な貢献は金融政策に効率性を与え、長期的な収入をもたらし、物価安定した中で雇用が拡大していくものでなければいけないと述べている。
それでも中銀は金利をより下げるべきではないとの見方も共有していなければいけない。 というのも、現状の強い経済成長では利下げが補償される訳でも、望ましいものでもないからである。
しかしながら、もし資本市場が中銀はインフレ目標以下で満足していると信じているなら、資本市場は緩和プロセスを終了したと見て、為替は上昇するように進めるだろう。それも持続的に。
貿易加重平均での為替はまだ中銀のモデルに基づけば高い水準にあり、今後も通貨が強くなれば、貿易ベースでの収入を削いでしまう。そして貿易品のインフレを長期間にわたり低いままに抑えてしまうと指摘している。この貿易インフレ下方圧力が国内のインフレを下げ、デフレにしてしまう。
もし期待インフレが大きく下がると、もはやそれを回復することは困難になる。その様な状況下では、経済活動を上げ、インフレ圧力を高めるために更なる利下げが必要とされる。
ウィーラー総裁は中銀が先手打ち利下げし、それがインフレをもたらし、ひいては中期のインフレレンジ内に回帰させると見ている。
急速で継続する利下げはおそらく持続不可能な急成長をもたらすかもしれず、ボトルネックインフレをおこすかもしれない。既に過熱感が出ている住宅市場を煽っているかもしれない。すべての中銀は将来の経済や資本市場ショックに対応するには、その余地は限られているようだ。
8月の利下げは短期インフレ期待の一層の低下を抑えるために実施した。
「我々の現状の分析では、更なる利下げ余地幅35ベーシスを含めて、経済にかかるリスクを分析し、消費者物価指数を目標とする1〜3%レンジに向かう様に行っている」と述べている。
「我々はまだ政策目標協定にあるインフレに向けて約束している。見通しは(金融政策が)現状維持の状況でもなく、急激な緩和を行う状況でもない。もし新興国の状況やリスクが変わるようなら、我々の政策や見通しも変更していくと」と述べている。
(注)NZ中銀総裁講演要旨は一部を和訳したものであり、詳細はHP記載の本文をお読みください。
中銀はまだ利下げできる余地を残していることを念頭に、現状の利下げが世界的なデフレ状況に対応するためと述べています。
NZ経済自体は順調に伸びており、国内活況の中で、世界的な需要減退・NZドル高で、それが国内物価への跳ね返りを抑えるべく利下げを継続しています。
国内の住宅市場を勘案すると、先手で打っている利下げが中々効果発揮していないディレンマに落ち入っているようです。これからの利下げは少し難しい領域に入ってきているようです。
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