トルコリラ円見通し 大暴落後の5連騰から4日間の反落、8円台維持で下げ渋る(22/1/4)

年明けの1月3日は8.13円まで一段安したものの、夕刻の物価上昇率発表後は当面の売り材料消化として持ち直した。

トルコリラ円見通し 大暴落後の5連騰から4日間の反落、8円台維持で下げ渋る(22/1/4)

トルコリラ円見通し 大暴落後の5連騰から4日間の反落、8円台維持で下げ渋る

旧年中はご愛読ありがとうございました。本年もよろしくお願いいたします。


〇トルコリラ円、1/3は8.13まで一段安となるが物価上昇率発表後持ち直す、8円台を維持し落ち着く
〇対ドル、1/3は12.52まで安値を切り下げたが、物価上昇率発表後は目先の材料消化で落ち着いた印象
〇対円・対ドルともに、12/20からの5連騰の後反落となる
〇昨日発表の12月消費者物価上昇率、リラ暴落を反映し急上昇
〇トルコ政府、電力・天然ガスの価格引き上げを発表
〇8.50以上での推移中は上昇余地ありとし、9.00超えからは9.25前後への上昇を想定する
〇8.50割れから続落に入る場合は下げ再開を警戒し、1/3夜安値割れからは7円台後半を目指すとみる

【概況】

トルコリラ円の1月3日は9.00円から8.13円の取引レンジ、4日早朝の終値は8.78円で12月31日終値8.63円からは0.15円の円安リラ高となった。3日の安値はベンダーにより8.22円から8.27円と幅があった。
高インフレ下での連続利下げ強行を背景に歴史的な大暴落に見舞われて12月20日には6.17円の史上最安値を付けたが、12月20日夜にエルドアン大統領がリラ預金の為替差損を補填する政策を発表したことからリラの買い戻しが殺到して12月20日から12月24日まで5連騰の急騰となり12月23日には11.14円の高値を付けた。しかしトルコ中銀による市場介入で外貨準備高が大幅に減少、リラ預金保護政策の実効性や先行き不透明感から反騰一巡となり、12月27日から12月30日までは4日連続の下落となり、12月31日には8.35円まで安値を切り下げた。

年明けの1月3日は8.13円まで一段安したものの、夕刻の物価上昇率発表後は当面の売り材料消化として持ち直した。
12月20日安値から12月23日高値まで4.97円の急騰幅に対して1月3日安値まで3.01円の下落であり上昇幅の凡そ6割を削ったところだが、8円台を維持してひとまず落ち着いた印象だ。

【対ドルでも5連騰後の反落】

ドル/トルコリラの1月3日は13.91リラから12.52リラの取引レンジ、4日早朝の終値は13.11リラで12月31日終値13.31リラからは0.20リラのドル安リラ高だった。
高インフレ下での4会合連続利下げ強行により12月20日安値18.36リラまで暴落的な下落となり史上最安値を大幅に更新したが、大統領によるリラ預金の為替差損補填方針発表から反騰入りして12月23日には10.05リラまで高値を切り上げた。12月24日までは終値ベースで5日間の反騰継続だったが、12月27日からはリラ買いが一巡して揺れ返しの下落となり、12月31日まで5日間の続落となった。
1月3日は12.52リラまで安値を切り下げて12月20日からの急騰幅の8.31リラに対して3.86リラの下落となり上昇幅の46%を削ったが、物価上昇率発表後は目先の材料消化で落ち着いた。

【エルドアン政権による博打的な利下げと混乱は続く】

トルコのネバティ財務相は12月29日にCNNトルコのインタビューに答えて「トルコリラの現在の動きを懸念していない」「政府による物価点検がインフレ率の緩やかな低下をもたらす」とし、インフレ率については「2023年には一桁台に低下する」との見通しを示した。同財務相は12月23日にもリラ建て預金を為替変動の影響から保護する新制度に100億リラ(8億8900万ドル)相当の外貨預金が移行していると述べている。
トルコ中銀は12月29日に「特定の為替相場にコミットせず相場の水準や方向性を設定するための市場介入を今後はしない」とし、「2022年の金融・外国政策文書においては中期的なインフレ率目標を5%に維持する」とした。またすでに外貨・金口座をリラ口座に転換することを支援しているとし、中銀に預けている外貨の一部をリラに替える商業銀行に対しては高めの金利を支払い、市中銀行による外貨準備預金に対しては年ベースの手数料を課すとし外貨からリラへの転換を促す政策をとり始めている。

ただし、リラ預金保護政策は市中金利の上昇を招いており、12月29日にトルコの10年債利回りは過去最高の24.9%へ上昇して政策金利の週間レポレート14%を10%以上上回る状況となっている。市中のリラ預金に対する金利は20%超の水準へ上昇しているが、一方では借入金利が30%台に上昇しているともされており、企業にとっては借入コストの急増による圧迫感も広がっている。

【トルコの12月消費者物価はリラ安反映で跳ね上がる】

1月3日にトルコ統計局が発表した12月の消費者物価上昇率は前年比36.08%となり11月の21.31%から大幅上昇、市場予想の30.6%を超えた。前月比は13.58%となり11月の3.51%から急上昇した。食品とエネルギーを除くコア指数の前年比も12月は31.9%となり11月の17.6%から倍近い急上昇となった。
生産者物価上昇率は前年比で79.89%となり11月の54.62%から一段と跳ね上がった。前月比も19.08%で11月の9.99%から急加速した。

トルコリラ円見通し 大暴落後の5連騰から4日間の反落、8円台維持で下げ渋る

トルコリラの暴落を反映したものであり、輸入物価の高騰が生産者物価にとどまらず消費者物価を急上昇させており、もはやハイパーインフレに近い印象もある。
消費者物価の部門別の前年比では、燃料高騰を反映して運輸が53.66%、食品飲料が43.8%。生活雑貨が40.95%、レストラン等外食が40.85%となっている。
生産者物価の部門別の前年比では、エネルギーが122.76%、電気ガスが117.14%。製造業が77.44%、消費材が54.23%、耐久財が46.16%、中間財が92.13%等と高騰している。

【トルコの電気ガス料金値上げ】

トルコ政府は1月1日に電力・天然ガスの価格引き上げを発表、2022年の法人等大口需要家向けを最大125%引き上げ、一般世帯向けも50%程度引き上げる。またガス配給会社BOTASは家庭向け天然ガス価格を25%引き上げ、産業向けを50%引き上げ、電力会社向けも15%の引き上げになる。
リラ安により、ブルガリアとギリシャからは大量の買い物客が殺到しているというが、トルコ国民は安いパンを買うために長い行列に並んでいる。インフレ率の実際についても公式発表よりも高く60%近い上昇という見方もある。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月27日に10円割れへ下落したために28日時点では25日早朝高値でサイクルトップを付けて弱気サイクル入りした可能性があるとし、24日深夜安値割れからは弱気サイクル入りとして29日夜から31日深夜にかけての間への下落を想定するとした。
12月30日午後安値からいったん戻してから一段安となり、1月3日へ続落したところから9円まで戻したため、現状は1月3日夕安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたと思われる。12月30日夕高値を基準として高値形成期を1月4日から6日夕にかけての間と想定するが、戻りは短命の可能性もあるとみて8.50円割れを弱気転換注意とし、1月3日夕安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして6日午後から10日夕にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では1月3日夜の上昇から先行スパンを上抜きつつあり遅行スパンが好転しているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とする。先行スパンから再び転落するところからは新たな下落期入りを警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は12月29日深夜から1月3日への安値更新に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて50ポイント以上へ戻している。このため50ポイント台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとするが、45ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.50円を下値支持線、9.00円を上値抵抗線とする。
(2)8.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、9.00円超えからは9.25円前後への上昇を想定する。9.25円以上は反落警戒とするが、8.50円以上を維持するなら5日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8.50円割れから続落に入る場合は下げ再開を警戒し、3日夜安値割れからは7円台後半(7.50円から8.00円)を目指すとみる。8.50円以下での推移なら5日も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

1月06日
 20:30 週次 外貨準備高(グロス) 12/31時点 (12/24時点 725.6億ドル)
1月10日
 16:00 11月 失業率 (10月 11.2%)
 19:00 12月 自動車生産 前年比 (11月 -19.7%)
1月11日
 16:00 11月 経常収支 (10月 31.56億ドル)
1月13日
 16:00 11月 鉱工業生産 前年比 (10月 8.5%)
 16:00 11月 小売売上高 前月比 (10月 0.9%)
 16:00 11月 小売売上高 前年比 (10月 16.2%)
 20:30 週次 外貨準備高(グロス) 1/7時点 


注:ポイント要約は編集部

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