ドル円見通し 強い米雇用統計、週末へ3連騰で週明けも高値切り上げに(21/8/10)

9日夜にはやや利益確定売り優勢で110.01円まで下げたものの深夜に持ち直して10日早朝には110.35円までわずかながら高値を切り上げた。

ドル円見通し 強い米雇用統計、週末へ3連騰で週明けも高値切り上げに(21/8/10)

強い米雇用統計、週末へ3連騰で週明けも高値切り上げに

〇ドル円、米雇用統計の結果が強くドル高が加速し6日深夜に110.34の高値をつけた
〇ワクチン普及により米7月雇用統計は非農業部門業者数、失業率、平均時給が予想上回る
〇9日夜にやや利益確定売り優勢で110.01へ下げ、深夜に持ち直し10日早朝に110.35へ高値を切り上げる
〇米10年債利回りは前日比0.03%上昇の1.33%、9日も伸び下降トレンドから脱却し上昇再開の可能性
〇110円を割り込んでも切り返すうちは高値追及の流れ、110.50超えから110.75、111.00を試すとみる
〇109.75前後か直近の高値から0.50超の下落場面は買われやすく0.70前後の下げ幅で調整安を想定

【概況】

ドル円は8月6日深夜に110.34円へ急伸、9日夜にはやや利益確定売り優勢で110.01円まで下げたものの深夜に持ち直して10日早朝には110.35円までわずかながら高値を切り上げた。
米長期債利回り低下を背景に7月23日深夜高値110.58円から下落に転じて8月4日夜には米ADP民間雇用報告が低調だったことで108.71円まで安値を切り下げてきた。この間の下げ幅は1.87円だったが7月2日高値111.65円からの下げ幅は2.94円安にまで拡大した。しかし8月4日夜はADP後のISMサービス業景況指数が予想以上に好調だったこととクラリダ米連銀副議長によるテーパリング早期開始の可能性言及によって急反騰となり、4日深夜には109.67円まで直前安値からは1円近い上昇となった。

8月5日も米週間失業保険申請件数が2週連続で改善したことやウォラー米連銀理事が年内のテーパリング開始可能への言及で109.70円台へ上昇していた。
8月6日の米雇用統計では非農業部門就業者数が予想を超え、失業率が大幅改善、平均時給も予想を上回るなど総じて力強い内容だったことでドル高が加速、ドル円は110円を超えて深夜には110.34円の高値を付ける一段高となった。8月9日も小反落から切り返している。日足は8月4日から6日まで3日連続陽線=赤三兵、9日は小陰線ながら高値を切り上げて確りしている。

【米雇用統計は強かった】

米労働省が8月6日に発表した7月雇用統計では非農業部門就業者数が前月比94万3000人増となり市場予想の87万人増を上回った。3か月連続の拡大で2020年8月以来の増加数だった。失業率は6月の5.9%から5.4%へ改善、平均時給も前月比で0.4%となり予想の0.3%を上回り、前年同月比では4.0%となり予想の3.8%及び6月の3.7%を上回った。ワクチン普及による経済活動の再開が進んでいることで雇用回復も力強さを示した印象だ。パンデミックにより米国では2200万人が失業したが凡そ7割が回復している状況だ。 米労働省が8月9日に発表した6月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数は1007万3000件となり過去最高を記録して前月の948万3000件から増加して市場予想の928万1000件も上回った。

米連銀のクラリダ副議長は8月4日の講演で「予想通りに景気回復が続けば事実上のゼロ金利を解除できる条件が2022年末までに整い、2023年には利上げが可能となる」と述べた。ウォラー理事は5日の講演で「7月と8月の就業者数の伸びが月80万〜100万人となれば量的緩和策の縮小を始められる景気の条件を満たす」、「9月のFOMCで量的緩和策の縮小を始められる条件を満たしたと判断できれば秋に開始できる可能性がある」とした。
米連銀のパウエル議長は7月14日の議会証言等で雇用回復にはまだ遠く量的緩和を急がないとの姿勢を繰り返してきたが、前回7月29日未明のFOMC後会見ではジャクソンホール講演の原稿を考えているところだと意味ありげに述べており、8月26-28日のジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の経済フォーラム)での議長講演では従来よりもより具体的なテーパリング=量的緩和縮小開始への条件と手段及び時期を示すのではないかと思われる。

【米長期債利回りは低下トレンドから転換】

8月9日の米2年債利回りは0.01%上昇の0.22%となった。8月4日に0.16%へ低下して6月17日未明の前々回FOMC声明発表で0.15%台から6月18日に0.28%へ急伸した時以来の最低水準となっていたが、そこから3連騰で8月6日には一時0.22%台へ上昇した。
8月9日の米10年債利回りは前日比0.03%上昇の1.33%。年初に1.0%を超えたところから3月31日の1.77%まで上昇し、その後は途中に数日の反発を入れながらも7月20日に1.12%まで低下してきた。4か月に及ぶ低下トレンドだったが、8月4日に再び低下したところでは1.12%で同値としてから3連騰での反騰となり8月6日に1.30%へ、9日もさらに伸びている。7月22日の戻り高値である1.31%を超えてきたために3月31日以降の戻り高値を切り下げての下降トレンドから脱却して7月20日と8月4日をダブル底として上昇再開に入る可能性が高まったと思われる。

米連銀は物価上昇の上ブレは一時的として量的緩和を急がない姿勢を繰り返して来たが、ここにきて連銀高官の発言も量的緩和縮小開始への準備段階を市場に意識させるようなものへ変わってきている。物価上昇率は確かにそろそろピークアウトして年後半には落ち着く可能性があるが、雇用回復が順調で物価上昇率の高い状況が続くならば量的緩和による金融市場への資金供給で投機マネーを増長させる必要も後退し、逆にバブル崩壊のトリガーとなることを避けることが優先されてくるとも考えられる。
デルタ株による不確実性があるためまだ決めつけられないものの、ウォラー理事等が示したように次回8月分の雇用統計(9月3日)が100万人前後規模の雇用増を実現すれば量的緩和縮小の年内開始も早ければ10月、遅くとも12月に行われるというコンセンサスが形成されてゆくのではないかと思われる。

【4か月サイクルの底打ち】

【4か月サイクルの底打ち】

8月4日から日足は3日連続陽線=赤三兵でV字反騰してきた。まだ7月23日高値110.58円を超えていないがV字反騰の規模と勢いは7月19日からの反騰時を超えて4月23日安値からの反騰時に近い印象となっている。連騰後には反動安も入りやすいものだが、3分の1から2分の1押しレベルにとどめて足場を固めて戻り高値を切り上げてくれば、4月23日底から5月3日高値へ2.23円の上昇後に1.37円の下げを入れてから上昇継続へと進んだ展開のようにジグザグ上昇パターンを形成する可能性がある。

また1月6日底からの上昇では1月11日高値まで1.82円の上昇後に1月21日へ1.08円の反落をややジリ安型で入れてから一段高へと進んでいるので、今回も上昇一服でややジリ安気味の持ち合いを形成してから一段高値へ進むケースも考えられる。
米長期債利回り上昇に示された米連銀による量的緩和縮小開始時期の接近感を覆すような動き、デルタ株など変異株による急激な活動委縮の再燃等が無ければ、ドル円としては米長期債利回り上昇基調と同調して高値試しを続けて7月2日高値111.65円に迫ってゆくことも考えられる。弱気転換には8月4日からの上昇幅の3分の2以上を解消するような反落とその後も切り返せない状況等の発生が必要と思われる。

【当面のポイント】

8月4日夜からの連騰に対する反動安にも注意が必要だが、押し目形成からさらに上昇基調を伸ばしてゆく可能性のあるところとみて、多少下げたところは押し目買い有利、突っ込んだところは買い拾われやすい状況にあると考える。
(1)109.75円前後を下値支持線、110.50円前後を上値抵抗線とみておき、110円を割り込んでも切り返すうちは高値追及の流れとし、110.50円超えからは110.75円、111.00円を段階的に試してゆくとみる。
(2)109.75円前後ないしは直近の高値から0.50円超の下落場面は買われやすいとみる。やや深めの反動安の場合は直近の高値から0.70円前後規模の下げ幅での調整安を想定するが、そこは突っ込み買いされやすい水準とみる。

【当面の主な予定】

8/10(火)
10:30 (豪) 7月 NAB企業景況感指数 (6月 24)
10:30 (豪) 7月 NAB企業信頼感指数 (6月 11)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー現状判断DI (6月 47.6、予想 43.4)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー先行判断DI (6月 52.4、予想 49.2)
18:00 (独) 8月 ZEW景況指数 (7月 63.3、予想 56.7)
18:00 (欧) 8月 ZEW景況指数 (7月 61.2)
21:30 (米) 4-6月期 非農業部門労働生産性速報値 前期比 (1-3月 5.4%、予想 3.5%)
21:30 (米) 4-6月期 単位労働コスト速報値 前期比年率 (1-3月 1.7%、予想 1.1%)
23:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省3年債入札
27:30 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、討論会主催

8/11(水)
08:50 (日) 7月 マネーストックM2 前年同月比 (6月 5.9%、予想 5.4%)
09:30 (豪) 8月 ウエストパック消費者信頼感指数 (7月 108.8)
15:00 (独) 7月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.9%、予想 0.9%)
15:00 (独) 7月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 3.8%、予想 3.8%)
21:30 (米) 7月 消費者物価指数 前月比 (6月 0.9%、予想 0.5%)
21:30 (米) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 5.4%、予想 5.3%)
21:30 (米) 7月 消費者物価コア指数 前月比 (6月 0.9%、予想 0.4%)

21:30 (米) 7月 消費者物価コア指数 前年同月比 (6月 4.5%、予想 4.3%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
23:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
25:00 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省10年債入札
27:00 (米) 7月 月次財政収支 (6月 -1742億ドル、予想 -2315億ドル)


※ポイント要約は編集部

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