想定線の結果で動意薄、ユーロ・円は緩やかなユーロ安円高が継続
【今回のポイント】
〇 想定通り政策金利は0.25%引き下げ
〇 追加利下げに関しても想定通りの「データ次第」
〇 7月11日の175円95銭がユーロ高円安のピーク
【ECB理事会の結果】
欧州中央銀行(ECB)理事会は、主要政策金利を0.25%引き下げた。今年3月に決定した運用枠組み見直しにもとづくスプレッドの縮小も実施したことで、預金ファシリティー金利は現在の3.75%から3.50%に引き下げられ、政策金利(主要リファイナンス・オペ金利)および限界貸出ファシリティー金利(オーバーナイト貸し出し、翌日返済)はそれぞれ3.65%および3.90%に引き下げられる。以前の政策金利は4.25%だったが、スプレッドの縮小実施によって3.65%となったが、政策金利引き下げ幅はあくまでも0.25%である。
声明では、ユーロ圏のインフレ率はなおも高水準で推移しており、賃金は依然として上昇し続けているとしたが、企業の利益が労働コストの圧力を部分的に吸収しており、賃金上昇がインフレに与える影響を緩和しつつある。
一方、金融環境は厳しく、脆弱な個人消費と投資活動を反映して景気は依然として低迷しており、ECBのエコノミストは2024年のユーロ圏の経済成長率を0.8%、2025年を1.3%、2026年を1.5%と予測。これは6月の前回予想からそれぞれ0.1ポイントの下方修正となった。また、ECB理事会は適切な制限水準と期間を決定するために引き続きデータ依存で、会合毎のアプローチを行うとした。政策金利引き下げも今後の見通しもほぼ市場コンセンサス通りの内容だった。
ラガルドECB総裁は記者会見で下記のような発言をした。
「決定は全会一致だった」
「我々は引き続きデータに依存している」
「我々の経路は、方向としては低下していくことが明らかだが、回数も幅も事前に決まってはいない」
「10月17日まで5週間というのは、過去の間隔と比べると比較的短い」
「我々はデータに依存し、会合毎に決定を行う」
「25年の下半期にインフレ率が目標に到達するというベースラインの見通しを基準に、ベースラインの変化を観察し、どの程度利下げを続けるべきか、十分に制限的なのかを決定する」
「我々は、このリスクには明らかに注意を払わなければならず、それは目標が2%安定である理由であり、戦略見直しで提示したように中期的には対称でなければならず、引き続き完全に妥当である」
「ドイツ経済の減速はブンデスバンクにより予想され、またECBでも予想していたし、ユーロシステム全体で共有されている」
「成長率見通しの下方修正は、インフレが大幅に低下し、所得が増加しはじめたのに、回復期待があった消費が回復しなかったことによる」
【市場の反応】
市場コンセンサス通りの内容だったこともあり、ユーロは対円で156−57円台、対ドルでは1.10ドル水準とともに小動き推移となった。日銀関係者の発言が「タカ派」な内容が相次いだことで年内利上げ実施を織り込む動きが強まっており、円は主要通貨に対して総じて買われている。とくに17−18日の米連邦市場公開委員会(FOMC)にて米連邦準備制度理事会(FRB)は4年半ぶりに利下げを実施する見通しが確実視されており、ドルは対円で年初来安値を更新。FRBが大幅な利下げを実施するといった思惑も強まっていることで、ユーロより、ドルや円の動向に関心が集まっている。
【今後、ユーロはどう動く?】
為替市場では、上記の通りドルが対円で年初来安値を更新したが、ユーロは対円で8月5日につけた安値154.40円に到達していない。ただ、じりじりと下落していることで、年初来安値を更新するのは時間の問題のような状況だ。
ECB理事会は明確な利下げスケジュールを公表していないが、今回、26年までの経済成長率見通しを下方修正したこともあり、断続的な利下げ実施を続ける方針は間違いなさそうだ。今後、エネルギー価格等に左右されがちなインフレ指標や、小売売上高など様々なデータを確認して利下げ実施のタイミングを計るわけだが、日欧金利差縮小の方向性が明確なことから、ユーロ安円高の地合いは続く。
今会合を受けて、7月11日につけたユーロ・円の175円95銭という水準が、長期的なユーロ高円安トレンドのピークと判断する。今後、少なくても2025年にかけては、ユーロ安円高の地合いは続くだろう。
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間を記載しているので、金利発表及び記者会見は日本時間翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日・・・マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、展望レポート見通し引き上げ、記者会見後は円全面安の展開
6月13日−14日・・・国債買入額を引き下げる方針を決定、詳細は7月に公表
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)・・・国債買入額の減額と利上げ実施を発表
9月19日−20日
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
12月18日−19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・4会合連続で金利据え置き
3月19日−20日・・・5会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長は、年内利下げの可能性を再表明
4月30日−5月1日・・・6会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長はややハト派な発言
6月11日−12日・・・7会合連続で金利据え置き、24年利下げ回数は3回から1回に修正
7月30日−31日・・・8会合連続で金利据え置き、9月利下げ実施を示唆
9月17日−18日
11月 6日− 7日
12月17日−18日
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日・・・現状の金融政策を維持、大きなサプライズが無い限り6月利下げ開始か
6月 6日・・・想定通り政策金利を0.25%引き下げ、追加利下げは明言せず
7月18日・・・金据え置きを発表、利下げ実施は「データ次第」
9月12日・・・政策金利0.25%引き下げ、今後の利下げスケジュールは「データ次第」
10月17日
12月12日
以上
オーダー/ポジション状況
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