格付け引き上げも市場最安値更新、トルコ中銀会合注目だが一段安の可能性も
【先週のトルコリラ】
先週のトルコリラは、良好な経済指標発表や、格付け会社フィッチがトルコの長期外貨建て発行体デフォルト格付けを「B+」から「BB−」に引き上げなど好材料があったものの、史上最安値を更新するなどジリ安の展開は続いた。
9日、フィッチは財政政策の改善を理由に引き上げを実施した。より厳格な金融政策や計画的予算削減、賃金調整がインフレ低下と経常赤字縮小につながり、最終的には外貨準備の維持に役立つとの見方を示した。格上げは今年2回目で、見通しは「ポジティブ」から「安定的」に変更した。
5月のS&P、7月のムーディーズに続く格付け会社による引き上げのほか、7月の失業率や鉱工業生産指数が市場予想よりも良好な結果となるなどポジティブな材料が続いたが、トルコリラはジリ安が継続。週末には4.1275円と史上最安値を更新した。
トルコリラ・円(東京時間:9月9日―9月13日)
※Investing.comの日足を参照
始値:4.1849円
高値:4.2347円
安値:4.1275円
終値:4.1482円
【先週と今週の重要指標】
※時間は東京時間
9月10日
16時00分、7月失業率、前回:9.2%、結果:8.8%
16時00分、7月鉱工業生産指数(前月比)、前回:−2.4%、結果:0.4%
16時00分、7月鉱工業生産指数(前年比)、前回:−5.0%、結果:−3.9%
9月11日
16時00分、7月小売売上高(前月比)、前回:8.9%、結果:5.4%
9月12日
16時00分、7月経常収支、前回:4.1億ドル、結果:5.7億ドル
9月19日
20時00分、政策金利、前回:50.00%、市場予想:50.00%
※予定は変更することがございます。
【今週の見通し】
今週のトルコリラは、19日のトルコ中央銀行の金融会合での声明内容に関心が向かおう。政策金利は50.00%と据え置かれる公算が大きく、大統領府とトルコ中銀の中期的なインフレ見通しに対する見解の相違が修正されるかが注目だ。
ユルマズ副大統領が5日に公表した中期経済計画(2025年−27年)では、26年までにインフレ率を1桁台に引き下げ、27年までに経済成長率を5%に引き上げる方針を示している。24年のインフレ率の予想は41.5%で、25年は17.5%、26年は9.7%。一方、トルコ中銀が8月に公表した最新のインフレーションレポートでは、消費者物価の上昇は24年が38%、25年は14%に鈍化するとの見通しだ。
トルコ中銀が8月に公表したインフレ見通しを、わずか一カ月後の今会合で修正する可能性は低いと考える。大統領府と中央銀行のズレが修正されなかった場合、市場にエルドアン大統領による再介入という警戒感や、高い政策金利の維持に伴う経済への悪影響なども強く意識されよう。
エルドアン大統領は、金利を引き下げて景気を刺激すればインフレは収束するという考えのもと、金利引き下げをトルコ中銀に強く要請し、トルコ中銀総裁を何人も更迭した過去がある。中東情勢という地政学リスクに金融・財政政策に対する強権発動リスク(両方ともエルドアンリスク)が意識されれば、トルコリラの4円割れは近いと考える。
テクニカルでは、史上最安値を更新していることで、下値模索の弱い状況と言えよう。日足の一目均衡表では、右肩下がりの転換線が上値抵抗として意識されており、リバウンドが狙いにくい状況だ。転換線のほか20日移動平均線も下向きとなっていることで、史上最安値更新の地合いは続くと考える。
トルコリラ円日足
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