エルドアン大統領リスク強まる、対円でも史上最安値更新に警戒
先週のトルコリラは、リスクオフの高まりに伴う主要通貨に対する円全面高の地合いが一服したものの、エルドアン大統領がパレスチナ支援姿勢を再度強調したことから地政学リスクが重しとなった。
7月上旬から続いた投機筋による円売りポジションの巻き戻しは一巡したとの見方から、主要通貨に対する円全面高はようやく一服。日米ともに株は持ち直し、米VIX、日経平均VIはともに低下したことから、先行き不透明感は大幅に和らぎ、株式市場は通常モードに近づきつつある。
一方、エルドアン大統領は14日、パレスチナ自治政府のアッバス議長とアンカラで会談した。パレスチナ自治区ガザで続くイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突について議論し、エルドアン大統領は「パレスチナの大義を支援し続ける」と発言。また、「イスラエルに対する国際社会の圧力を強めるため、努力を続ける」とし、イスラエルがガザの病院や学校を攻撃していることに対しては「一部の西側諸国は沈黙を貫いている」と欧米の姿勢を批判した。
トルコリラは、エルドアン大統領の親パレスチナ姿勢が嫌気されたほか、12日発表された6月失業率が前月比で悪化したことなどが影響し、対円では4.3円台で推移した。なお、対ドルでは史上最安値を更新。
トルコリラ・円(東京時間:8月12日―8月16日)※Investing.comの日足を参照
始値:4.3732円
高値:4.4542円
安値:4.3573円
終値:4.3815円
【先週と今週の重要指標】
※時間は東京時間
8月12日
16時00分、6月雇用統計、前回:8.5%、結果:9.2%
8月13日
16時00分、6月経常収支、前回:−10.2億ドル、市場予想:3.0億ドル、結果:4.1億ドル
8月20日
20時00分、トルコ中銀政策金利、前回:50.00%、市場予想:50.00%
8月22日
16時00分、8月消費者信頼感指数、前回:75.90
※予定は変更することがございます。
【今週の見通し】
今週のトルコリラは、トルコ中央銀行(トルコ中銀)会合に関心がむかう一方、エルドアン大統領を起因とした地政学リスクが引き続き重しとなりそうだ。
エルドアン大統領は、4月にイスラエルとの貿易輸出制限を導入後、5月にイスラエルと貿易の完全停止を発表した。今回のアッバス議長との会談も含めて、保守的なイスラム教徒の支持を得るためのパフォーマンスと見られているが、欧米批判も行っていることから、格付け会社によるトルコ格下げで外国人投資家による資金流入期待が後退する可能はある。
今週は、20日に開催されるトルコ中銀会合にて政策金利50.00%の据え置きが発表されると見込まれている。カラハン・トルコ中銀総裁からは、堅調な実態経済の回復とインフレ沈静化に関するポジティブな話が出る公算は大きいが、パレスチナ情勢で発言を強めているエルドアン大統領が、軟調なトルコリラの水準に耐えかねて金融政策に再び口を出すリスクは意識しておきたい。
テクニカルでは、5日に長い下影(下ヒゲ)を残し、日足の一目均衡表の転換線を上回った。基準線は下向きのままだが、転換線はようやく上向いており、下押し圧力は和らいだイメージ。4.51円まで下がっている20日移動平均線を捉えたいところだが、地政学リスクが重しとなっており反発は弱い。対ドルに続き、対円でも史上最安値更新を頭にいれておきたいところだ。
トルコリラ円日足
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