下値しっかりだが、上値の重い地合いも継続中
【先週のトルコリラ】
先週のトルコリラは、経済鈍化やインフレ再加速が意識されそうな経済指標発表などを受けて、やや売りが強まる場面が見られた。
3日に発表された5月生産者物価指数は前年比57.68%増と前回よりも伸びが加速したほか、5月消費者物価指数も前年比75.45%増と前回より伸びが加速し、市場予想も上回ったことでインフレ再加速が意識される内容となった。
また、同じに日に発表された5月製造業PMIは節目の50を下回っただけではなく、前回よりも大幅に鈍化したことでトルコ経済への先行き警戒が強まり、トルコリラは下落。一時5月3日以来の4.73円水準まで下げる場面が見られた。
トルコリラ・円(東京時間:6月3日―6月7日)
※Investing.comの日足を参照
始値:4.8815円
高値:4.9043円
安値:4.7340円
終値:4.8375円
【先週と今週の重要指標】
※時間は東京時間
6月3日
16時00分、5月生産者物価指数(前年比)、前回:55.66%、結果:57.68%
16時00分、5月製造業PMI、前回:49.3、結果:48.4
16時00分、5月消費者物価指数(前年比)、前回:69.80%、市場予想:75.00%、結果:75.45%
6月10日
16時00分、4月失業率、前回:8.6%
16時00分、4月鉱工業生産指数(前月比)、前回:−0.3%
16時00分、4月鉱工業生産指数(前年比)、前回:4.3%
16時00分、4月経常収支、前回:−45.4億ドル、市場予想:−60.0億ドル
※予定は変更することがございます。
【今週の見通し】
今週のトルコリラは、上を窺いそうな雰囲気はあるものの、4.9円水準が壁となっていることから方向感に乏しい状況が続きそうだ。
先週4日付の官報にて、憲法裁判所は、最大野党・共和人民党(CHP)による異議申し立てを受け、エルドアン大統領が2018年に法令によって、大統領に付与したトルコ中央銀行総裁と副総裁の任命と解任権を無効とする判断を下した。同裁判所によると、この権限は法律によって規制されるべき問題で、議会に法制化の時間を与えるため判決は12カ月後に適用されるとのことだ。
これを受けて、大統領府報道局は、「憲法裁判所の判断は、トルコ中銀総裁らの任免権が「法令ではなく、法律によって規制されるべき」ことであって、現行の大統領権限を無効にするものではない」との見解を示し反論した。
下記の通り、2019年7月にチェティンカヤ・元トルコ中銀総裁が解任されてからの5年間で合計5人が解任もしくは辞任している。エルドアン大統領が、独自の金融政策である「低金利」でインフレを抑制する金融政策を強行したことが背景にある。こうした大統領の強権発動がリラ安、高いインフレを招いた経緯があった。
〇チェティンカヤ氏(16年4月-19年7月)
就任時に7.5%だった政策金利は18年9月に24.0%まで上昇。トルコリラ売りを止めるために大幅な利上げを実施したのち更迭。
〇ウイサル氏(19年7月-20年11月)
就任時に24.0%だった政策金利は20年5月には8.25%へ引き下げ。その後、20年9月に10.25%へ引き上げた結果、同年11月に更迭。
〇アーバン氏(20年11月-21年3月20日)
就任早々から利上げを実施。21年3月に政策金利を19.0%としたことでエルドアン大統領の逆鱗に触れ、わずか5か月で更迭。
〇カブジュオール氏(21年3月-23年6月)
エルドアン大統領の意向を踏まえ21年9月から利下げを加速。23年5月CPIが前年比+40%ほどの高インフレのなか政策金利は8.5%まで引き下げられた。満期まで2年残し交代(更迭ではなさそうだが辞任でもない)。
〇エルカン氏(23年6月-24年2月)
米系銀行出身。23年6月の就任時に8.25%だった政策金利を24年1月には45.0%まで引き上げた。同年2月に一身上の都合で辞任。
〇カラハン氏(24年2月-)
副総裁だった同氏はエルカン前総裁の突然の辞任によって就任。インフレ収束に自信を示す。
現状、エルドアン大統領、カラハン・トルコ中銀総裁、シムシュキ財務大臣との連携は取れていることから、この憲法裁判所の判断を巡るリラへの影響は限定的と考えるが、今しばらくは憲法裁判所と大統領府の小競り合いは続きそうだ。
なお、テクニカル面は、日足の一目均衡表の雲下限がサポートラインとなり、雲上限より上を推移している。4.9円水準での上値の重さは意識されているが、3月13日の史上最安値4.5227円から下値をじりじりと切り上げており下値不安は乏しい。上に動きそうな雰囲気は感じるが、きっかけ不足といったところか。
トルコリラ円日足
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