『エルカン総裁の辞任やCPI上振れなど悪材料噴出するもリラ売りでの反応は限定的』
〇今週のトルコ円、週央にかけて、週間安値4.81円まで下落
〇トルコ中銀エルカン総裁の突然の辞任発表、トルコ指標の冴えない動き等が背景
〇売り一巡後は、後任のカラハン総裁のエルカン路線継続の安心感、円安進行等に4.90まで上昇
〇テクニカルにはアップサイドより一目均衡表の分厚い雲が覆いかぶさり、売りシグナルも継続
〇ファンダメンタルズもトルコ経済先行き不透明感、インフレ昂進懸念、米利下げ後ずれ観測等が重石
〇引き続き、トルコリラ円相場の一巡後の下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):4.70ー4.95
今週のレビュー(2/5−2/9)
今週のトルコリラ円相場(TRYJPY)は、週初4.86円で寄り付いた後、(1)トルコ中銀エルカン総裁の突然の辞任発表(エルカン総裁は2/2夜遅くに突如辞任→エルドアン大統領はカラハン副総裁を後任に指名)や、(2)米金利上昇に伴うドル買い圧力(前週末金曜日に発表された米1月雇用統計が力強い結果となったことで対主要通貨で米ドルが急伸→新興国通貨に下落圧力)、(3)トルコ1月消費者物価指数(結果+64.86%、予想+64.56%)および、トルコ1月コア消費者物価指数(結果+70.48%、予想+68.80)の市場予想を上回る結果、(4)上記3を背景とした実質金利の更なる低下、(5)ドル円相場の冴えない動き(ドル円下落→トルコリラ円連れ安)が重石となり、週央にかけて、週間安値4.81円まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(6)エルカン総裁の後任に指名されたカラハン新総裁による「物価の安定を達成するまで現状の金融引き締めを維持する」との発言(金融政策・正常化方針が継続されることに対する安堵感。同氏は米ニューヨーク連銀でエコノミストとしての勤務経験がある他、アマゾン・ドット・コムでも主任エコノミストを務めた実績あり)や、(7)シムシェキ財務相による「1月CPIは一時的な事象で上昇した」「CPIは2月以降顕著に減速すると見込む」との発言、(8)ドル円相場の急反発(ドル円急伸→トルコリラ円連れ高)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値4.90円まで上昇しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間2/10午前5時00分現在)では、4.86円前後で推移しております。
来週の見通し(2/12−2/16)
トルコリラの対円相場(TRYJPY)は、週を通して底堅く推移しましたが、アップサイドより一目均衡表の分厚い雲が覆いかぶさってくることや、強い売りシグナルを示唆する「弱気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の下落トレンド」が継続していること、対ドル相場が史上最安値を更新し続けていること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)トルコ経済の先行き不透明感(直近で発表されたトルコ1月製造業PMIは好不況の分岐点50割れ)や、(2)トルコ国内のインフレ高進リスク(今週発表されたトルコ1月CPI、トルコ1月コアCPIは共に市場予想を上回る結果→実質金利の更なる低下→構造的なリラ売り圧力)、(3)上記2を背景とした「利上げ催促」のリラ売り圧力(トルコ中銀は先月開催された金融政策決定会合で利上げサイクルの終了を示唆するも、上述の通り、インフレ抑制には依然至らず→利上げ催促のリラ売り再開懸念)、(4)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(米金利上昇・米ドル買いは、新興国通貨の下押し要因)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の一巡後の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はトルコ12月失業率や、トルコ12月経常収支、トルコ12月小売売上高が予定されております。
来週の予想レンジ(TRYJPY):4.70ー4.95
注:ポイント要約は編集部
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