『日米金融政策格差を背景としたドル買い・円売りが再開』
〇今週のドル円、週央にかけ147.64まで下落後、週末にかけ高値149.57まで急伸
〇日銀内田副総裁の講演でのハト派的発言、米株式市場、米経済指標の好調等が背景
〇ユーロドル、週末にかけECB関係者のタカ派発言、欧州債利回り上昇等に1.0795まで上昇
〇ドル円、主要テクニカルポイントを上抜け、強い買いシグナルも実現、テクニカルの地合い極めて強い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の違いと円キャリートレード継続期待がドル円をサポート
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):148.00ー151.00、(EURUSD):1.0650−1.0925
今週のレビュー(2/5−2/9)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初148.35で寄り付いた後、(1)ミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「現時点では今年2ー3回の利下げが適切だと考えている」とのハト派的な発言や、(2)米金利低下に伴うドル売り圧力、(3)上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売り、(4)米12月貿易収支(結果622億ドル赤字、予想620億ドル赤字)の市場予想を上回る赤字額が重石となり、週央にかけて、週間安値147.64まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(5)ボストン連銀コリンズ総裁による「利下げを支持するにはさらなるデータが必要」との早期利下げに慎重な発言や、(6)リッチモンド連銀バーキン総裁による「利下げには忍耐強くなるのが合理的」との早期利下げに慎重な発言、(7)清水日銀理事による「マイナス金利を解除しても緩和的な環境が続く」とのハト派的な発言、(8)内田日銀副総裁による「マイナス金利解除後もどんどん利上げするパスは考えにくい」「緩和的な金融環境が大きく変化することは想定されない」とのハト派的な発言、(9)日経平均株価の堅調推移、(10)米主要株価指数の堅調推移、(11)米新規失業保険申請件数(結果21.8万件、予想22.0万件)の良好な結果、(12)米12月卸売売上高(結果+0.7%、予想+0.3%)の市場予想を上回る結果、(13)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(14)植田日銀総裁による「先行きマイナス金利解除を実施したとしても緩和的な金融環境が当面続く可能性は高い」とのハト派的な発言が支援材料となり、週末にかけて、週間高値149.57(昨年11/27以来の高値圏)まで急伸しました。
引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間2/10午前5時00分現在)では、149.30前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0784で寄り付いた後、(1)前週末金曜日以降のドル買いの流れ(2/2に発表された米1月雇用統計のポジティブサプライズ→米ドル全面高)の継続や、(2)ユーロ圏12月生産者物価指数(結果▲10.6%、予想▲10.5%、前年比)の市場予想を下回る結果、(3)米1月ISM非製造業景況指数(結果53.4、予想52.0)の市場予想を上回る結果、(4)スペイン中銀デコス総裁による「インフレ率が目標の2%に戻りつつあり、次の政策行動が利下げになることを確信している」とのハト派的な発言、(5)ユーロ圏12月小売売上高(結果▲1.1%、予想▲1.0%、※前月比)の市場予想を下回る結果、(6)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力が重石となり、翌2/6にかけて、週間安値1.0722(昨年11/14以来の安値圏)まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(7)シュナーベルECB専務理事による「借り入れコストの低下はインフレ再燃リスク」「サービス部門のインフレが懸念材料」とのタカ派的な発言や、(8)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、(9)欧州株の堅調推移、(10)ベルギー中銀ウンシュ総裁による「賃金上昇が利下げを阻んでいる」「より安心できる賃金データが得られるまで待つ価値はある」との早期利下げに慎重な発言や、(11)レーンECB専務理事兼チーフ・エコノミストによる「2%目標への道筋確保には一段のディスインフレが必要」との早期利下げに慎重な発言、(12)オーストリア中銀ホルツマン総裁による「ECBが今年中に利下げを実施しない可能性は確かにある」とのタカ派的な発言が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.0795まで上昇しました。
引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間2/10午前5時00分現在)では、1.0785前後で推移しております。
来週の見通し(2/12−2/16)
<ドル円相場>
ドル円は昨年12/28に記録した安値140.25をボトムに切り返すと、今週末にかけて、約2ヵ月半ぶり高値となる149.57(昨年11/27以来の高値圏)へと急伸しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイントを上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「昨年11/13高値151.91と昨年12/28安値140.25を起点としたフィボナッチ76.4%戻し」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを決定づけるチャート形状となっております。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による金融緩和の長期化観測(今週は清水日銀理事による「マイナス金利を解除しても緩和的な環境が続く」とのハト派的な発言や、内田日銀副総裁による「マイナス金利解除後もどんどん利上げするパスは考えにくい」「緩和的な金融環境が大きく変化することは想定されない」とのハト派的な発言、植田日銀総裁による「先行き、マイナス金利解除を実施したとしても緩和的な金融環境が当面続く可能性は高い」とのハト派的な発言あり)や、(2)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(パウエルFRB議長は先週「適切であれば金利を長期間維持する用意がある」「3月利下げの可能性が高いとは考えていない」と早期利下げに慎重な構えを強調)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米金利差拡大に着目した円キャリートレードの継続期待)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。
来週発表される一連の米経済指標(米1月消費者物価指数、米1月小売売上高、米1月生産者物価指数、米2月ミシガン大消費者信頼感指数・期待インフレ率)が市場予想を上回る場合や、米当局者(リッチモンド連銀バーキン総裁、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、シカゴ連銀グールズビー総裁、バーFRB副議長、アトランタ連銀ボスティック総裁、サンフランシスコ連銀デーリー総裁)より早期利下げに慎重な発言が相次ぐ場合、本邦10ー12月期GDP速報値が市場予想を下回る場合には、「米利下げ開始時期の後ずれ観測→米金利上昇→米ドル買い」の経路と、「日銀によるマイナス金利解除時期の後ずれ観測→円金利低下→円売り」の経路が組み合わさることで、ドル円に強い上昇圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続(心理的節目150.00や、昨年高値151.91に向かって駆け上がるシナリオ)をメインシナリオとして予想いたします(尚、米地銀を巡る経営不安については、リスク回避の円買いとリスク回避のドル買いで綱引き状態となることが予想されるため、ドル円相場への影響は限定的と予想)。
来週の予想レンジ(USDJPY):148.00ー151.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は、12/28に記録した約5ヵ月ぶり高値1.1141をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、約3カ月ぶり安値となる1.0722(昨年11/14以来の安値圏)まで急落しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイントを下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感や、(2)ECBによる利下げ開始時期の前倒し観測、(3)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測、(4)上記2、3を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い圧力)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。
来週発表されるドイツ2月ZEW景況感指数が市場予想を下回る場合や、欧州当局者(レーンECB専務理事、チポローネECB専務理事、デギンドスECB副総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、シュナーベルECB専務理事)よりハト派的な発言が相次ぐ場合には、「ECBによる利下げ開始時期の前倒し観測→欧州債利回り低下→ユーロ売り」の経路で、ユーロドルに強い下落圧力が加わる恐れもあるため、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(米地銀を巡る経営不安が欧州圏に飛び火する場合には、ユーロ売り圧力が予想以上に強まる恐れあり)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0650−1.0925
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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