トルコリラ円見通し 急激な円高にドル高リラ安も継続で6月27日以降の安値更新
〇トルコリラ円、ドル円乱高下の影響受け7/29安値7.39更新後、高値7.50まで反騰
〇ドル高リラ安基調でのドル円調整局面、トルコリラ円も史上最安値試しを続けるか
〇対ドル、7/30早朝終値17.91つけ史上最安値18.36に迫る、トルコ中銀の防衛行動が注目される
〇トルコ7月CPI、前年同月比80.50%予想、高インフレ深刻化で大統領選への影響が懸念される
〇6月貿易収支、輸入額急増による大幅赤字続く、観光収入は拡大、観光客数はパンデミック前水準回復
〇7.50以下での推移中は一段安警戒とし、7.39割れからは7.30円台前半を目指すとみる
〇7.30以下は反騰注意だが、7.45以下の水準継続や、安値からの反騰が0.07以下の場合は安値試し続くか
【概況】
トルコリラ円の7月29日は7.50円から7.39円の取引レンジ、30日早朝の終値は7.43円で前日終値の7.49円からは0.06円の円高リラ安だった。
ドル円が7月29日午後安値で132.49円へ大幅続落した局面でトルコリラ円も7.39円の安値をつけて昨年12月23日高値11.15円以降の最安値を更新したが、ドル円が29日夜に134.58円まで午後安値から2円を超える反騰となったためにトルコリラ円も7.50円まで反騰し、ドル円が30日未明に再び133円台序盤へ失速したためにトルコリラ円も7.40円台序盤へ失速するという展開で、ドル円の乱高下に振り回された。
週間では7月22日終値7.66円から0.23円の円高リラ安であり、日足は終盤の3日間を連続陰線で下落、週足も2週連続の陰線となった。
ドル円の7月14日高値からの下落幅は7円近くとなり2021年1月以降では最大の下落規模であり、歴史的な大上昇を再開できるのか、さらに深い調整へ向かうのかによりトルコリラ円をはじめクロス円全般が影響される状況だ。
【ドル高リラ安続き終値ベースの史上最安値をさらに更新】
ドル/トルコリラの7月29日は17.98リラから17.70リラの取引レンジ、30日早朝の終値は17.91リラで前日終値の17.90リラからは0.01リラのドル高リラ安だった。
週間では7月22日終値17.72リラから0.19リラのドル高リラ安で、4週連続の週足陰線による下落となっている。
6月23日終値17.35リラを7月13日に抜いたところからほぼ連日にわたって終値ベースでの史上最安値を更新中であり、昨年12月20日につけた取引時間中の史上最安値18.36リラへ徐々に迫っている。ベンダーによっては7月28日及び29日に18リラ台の安値提示も見られたが、1ドル18リラに対してトルコ中銀が何らかの介入的な防衛行動をとるのか注目される。
【8月3日の7月トルコCPI前年比は80%超えの見通し】
8月3日にトルコの7月消費者物価上昇率などの発表がある。ロイター社による事前予想調査では、前月比が6月の4.95%から2.90%へと減速する見通しだが、予想レンジは2.28%から4.00%と幅広い。前年同月比は6月の78.62%から80.50%へさらに伸びる見通しだが、予想レンジは79.45%から82.50%まであり、予想中心値を超える上昇率となる可能性もあるところだ。
既に実態の消費者物価上昇率は6月時点で年率160%近いとの調査報道も出ており、今年1月にトルコの統計局長が突然解任されてからの公式統計は実態を反映していない可能性も指摘されている。
生産者物価上昇率は6月に前年同月比で138.31%であり、既にハイパーインフレ状態ともいえる。エルドアン政権は今年2度の最低賃金引上げ、付加価値税の大幅削減、企業の外貨保有規制等を行ってきたが、高インフレが深刻化する中で大統領への信認も低下して来年6月に予定される大統領再選への影響も懸念されるところだ。
【トルコの貿易収支、輸入額拡大による赤字状況続く】
7月29日に発表されたトルコの6月貿易収支は81.7億ドルの赤字で5月の106.1億ドルからは若干減ったものの輸入額の急増による大幅赤字が続いている。
6月の輸入は季節調整済で317億ドルとなり過去最高を記録した5月の317.2億ドルからは若干減ったものの前年同月比では40.3%増となり5月の同40.0%を上回った。国際原材料相場の高騰が響いている。一方で輸出は226.7億ドルで前年同月比は19.0%だった。
トルコの6月期輸出先の上位はドイツ(8.0%)、米国(6.6%)、英国(5.2%)、イラク(5.1%)、イタリア(4.9%)であり、輸入先はロシア(16.1%)、中国(11.6%)、ドイツ(6.3%)、イタリア(4.5%)、米国(4.2%)だった。
同日に発表された4-6月期の観光収入は87.2億ドルで1-3月の54.5億ドルから拡大したが貿易赤字を埋め合わせるレベルには至っていない。
6月の海外からの観光客数は501万4821人で、前年比は144.9%増、6か月間のトータルでは1636.5万人で前年比185.72%増となった。パンデミック発生前の2019年6月は531.9万人であり、ほぼパンデミック前の水準まで改善したといえる。入国の上位5か国はドイツ71.9万人、ロシア60.2万人、英国45.4万人、ブルガリア24.2万人、イラン21.2万人だった。
【概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルにおける下落期】
トルコリラ円の日足チャートでは概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルが見られる。2020年11月6日底以降では2021年3月8日、6月2日、9月27日、史上最安値をつけた12月20日、そこから3か月後の今年3月11日、さらに3か月後の6月16日に直近のサイクルボトムをつけている。7月29日にかけての下落で6月16日安値を割り込んだことにより、現状は6月27日高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしている状況にあり、次の安値形成期は6月16日安値から3か月後の9月半ばあたりと推察される。
またドル円の日足チャートも概ね3か月から4か月前後の底打ちサイクルで推移しており、現状は5月25日安値を前回のサイクルボトム、7月14日高値を同サイクルトップとして弱気サイクル入りしているところと思われ、次の安値形成期は8月後半から9月半ばにかけての間と推察される。ドル円の歴史的な大上昇と反動安にトルコリラ円も影響を受けるため、ドル高リラ安傾向が続く中でのドル円の調整局面がまだ暫く続きやすいとみれば、トルコリラ円も当面はリバウンドを入れながらも戻り売り優勢でドル円と共に安値試しを続け、史上最安値を試してゆくのではないかと思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月29日の高安レンジである7.39円を下値支持線、7.50円を上値抵抗線とする。
(2)7.45円から7.50円手前にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)7月29日午後安値から29日夜高値へ戻したものの深夜に反落して週明けの8月1日午前序盤も下落しているため、既に戻り一巡から新たな下落期に入っている可能性があるとみて7.50円以下での推移中は一段安警戒とし、7月29日午後安値7.39円割れからは7.30円台前半(7.35円から7.00円)を目指すとみる。7.30円以下は反騰注意とするが、7.45円以下での推移が続く場合や直前安値から0.07円を超えるような反騰が見られないうちは8月3日のトルコCPI発表にかけて安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な予定】
8月1日
16:00 7月 イスタンブール製造業PMI
8月3日
16:00 7月 消費者物価 前月比 (6月 4.95%、予想 2.90%)
16:00 7月 消費者物価 前年同月比 (6月 78.62%、予想 80.50%)
16:00 7月 生産者物価 前月比 (6月 6.77%)
16:00 7月 生産者物価 前年同月比 (6月 138.31%)
8月4日
20:30 週次 外貨準備高 7/29時点
8月5日
23.30 7月 財務省現金残 (6月 266.1億リラ)
8月10日
16:00 7月 失業率 (6月 10.9%)
注:ポイント要約は編集部
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