トルコリラ円見通し 5月18日からは軟調推移、徐々に4月26日安値試しへ(21/5/24)

19日の波乱一服で20日夜には13.06円まで戻したもののその後は勢い続かずに軟調推移となり、日足は21日も陰線引けとなり18日から4日連続陰線で週を終えた。

トルコリラ円見通し 5月18日からは軟調推移、徐々に4月26日安値試しへ(21/5/24)

5月18日からは軟調推移、徐々に4月26日安値試しへ

〇トルコリラ円、20日夜に13.06まで戻したが勢い続かず軟調推移、日足は4日連続の陰線で週を終える
〇ドル/トルコリラは8.41から8.31のレンジ、20日が戻し気味の日足陽線に対し21日は上ヒゲの陰線に
〇トルコの物価上昇率が上ブレを続ければ中銀が引締め姿勢を強めることを市場が要求しリラ売りの可能性
〇トルコ中銀の相次ぐ国内仮想通貨への規制強化で、国内投資家が資金シフトへ向かうか
〇13円以下で推移中は一段安余地あり、12.88割れから12.80前後への下落を想定
〇13.00から13.06手前にかけて戻り売りにつかまりやすい、13.06超えから13.10前後への上昇を想定

トルコリラ円の5月21日は13.02円から12.92円の取引レンジ。
5月14日夕刻安値12.83円から18日午前高値13.14円まで戻したもののその後は失速気味の推移が続いており、19日夜には仮想通貨市場の暴落をきっかけとした株式及び為替市場のリスク回避的な動きの中でドルストレートでドル高が進行する一方でドル円も深夜に急落してからV字反騰するなど乱調な展開となり、トルコリラ円はドル円の急落時に12.88円まで安値を切り下げた。19日の波乱一服で20日夜には13.06円まで戻したもののその後は勢い続かずに軟調推移となり、日足は21日も陰線引けとなり18日から4日連続陰線で週を終えた。

ドル/トルコリラの5月21日は8.41リラから8.31リラの取引レンジ。20日のレンジと変わらなかったが、20日が戻し気味の日足陽線だったのに対して21日は上ヒゲの陰線に終わっている。
5月13日安値8.51リラへ下落して4月26日安値を割り込み昨年11月6日の史上最安値8.57リラ以来の安値水準となったところからいったん戻したが、18日夕刻高値8.28リラからは再び失速気味の推移で日々の戻り高値も徐々に切り下がり気味となっている。

【史上最安値更新への余裕が徐々に乏しくなる】

対ドルでのトルコリラは11月6日安値8.57リラから2月16日高値6.88リラまで反騰したところから下落に転じ、3月19日のトルコ中銀アーバル前総裁解任騒動から暴落商状となって3月30日安値で8.45リラまで下げた。その後も4月26日安値8.48リラ、5月13日安値8.51リラへと徐々に安値を切り下げている。
今のところは11月6日安値割れを回避しているものの、徐々に余裕は乏しくなっている。
アーバル前総裁が解任されたのは、昨年11月に就任してから三度の利上げで政策金利の週間レポレートを当初の10.25%から19%へ引き上げたことを、利下げ派であるエルドアン大統領が気に入らなかったのが要因であり、その後に新総裁へ就任したカブジュオール総裁はエルドアン大統領と同様に利下げがインフレを抑えるとの説を主張する政治家だった。

市場は物価上昇を抑えるために常識的に必要な利上げ及び金融引き締めを否定する布陣としてトルコの金融政策への不信感を爆発させてリラ暴落を引き起こした。新総裁はリラ防衛のために「インフレ率を下回るような利下げはしない」と市場へアピールしたことで多少の落ち着きを取り戻しているが、新総裁が「インフレ率は4月がピーク」とし、アーバル前総裁が活用していた「必要に応じて追加利上げする準備がある」との文言を中銀金融政策発表時の声明から削除したことで、今の中銀は本心は利下げをしたいができない状況であり、積極的な引き締めによるリラの価値を引き上げることはないと受け止めている。

トルコの次回物価上昇率発表は6月3日。次回の中銀金融政策決定会合は6月17日。
4月の消費者物価上昇率(前年比)は17.14%で3月の16.19%から加速しており、2019年10月の8.55%を底とした上昇基調を継続している。4月は食品やエネルギー等を除いたコア指数でも17.8%の上昇となっている。
消費者物価に先行する生産者物価上昇率は4月に35.17%となり3月の31.20%から加速、2019年10月には1.70%で2020年5月でも5.53%だったところから大上昇している。ハイパーインフレというほどではないが、コロナ不況の中での輸入物価上昇、資源価格や穀物相場等の高騰が背景ともいえるが、リラの弱さによる通貨インフレの様相も色濃いと思われる。

次回の物価上昇率発表前段階では、大きな動きになりにくいかもしれないが、物価上昇率が上ブレを続けてくれば中銀が一段と引き締め姿勢を強めることを市場は要求してリラ売り攻勢をかけてくる可能性がある。またトルコ中銀が相次いで国内の仮想通貨取引への規制を強めているため、リラ安からの逃避先としては仮想通貨が使い難くなる中でユーロやドル等のハードカレンシー、あるいは金へと国内投資家が資金シフトへ向かう可能性も考えられ、結果的にリラ安を助長してゆくことも考えられる。アーバル前総裁以前には通貨取引の日々の値動きを抑えたりするなどの外貨取引規制を強化した経緯もあるが、そうした手法はリラ防衛には逆効果であり、抑制が効かなくなればかえってリラ暴落を加速するきっかけにもなりえる。

【トルコリラ円はダブルトップからの下落基調続く】

【トルコリラ円はダブルトップからの下落基調続く】

トルコリラ円は2月16日高値15.26円と3月19日高値15.13円をダブルトップとして下落した。3月19日高値以降は3月30日安値13.01円へ一段目、4月26日安値12.69円へ二段目の下げとなり、4月29日の戻り高値から徐々に戻り高値を切り下げて一段安を伺う展開となっている。
5月14日安値12.83円を割り込めば下げ足が早まり4月26日安値試しへ向かい、安値更新からは昨年11月6日の史上最安値12.03円を試す流れへ進みやすくなると思われる。4月26日安値前後でいったん下げ渋ったとしても、下値支持線フラットで上値抵抗線が切り下がる三角持ち合い型にとどまれば下降トレンドの時間的な調整に過ぎずにきっかけ待ちから持ち合い下放れへ進みやすい状況となりうる。三角持ち合いを形成できるに安値更新から下げが加速すれば売りの連鎖反応も引き起こしかねない状況と思われる。

【当面のポイント】

(1)当面、5月19日安値12.88円を下値支持線、5月20日高値13.06円を上値抵抗線とする。
(2)13円以下での推移中は一段安余地ありとし、12.88円割れからは12.80円前後への下落を想定する。12.80円以下は反騰注意とするが、13円以下での推移なら25日以降も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.00円から13.06円手前にかけては戻り売りにつかまりやすいとみるが、13.06円超えからは13.10円前後への上昇を想定する。13.10円以上は反落警戒とするが、13.06円を超えた後も13円以上での推移なら25日以降も戻り高値を試しやすいとみるが、5月18日高値13.14円を超えない範囲なら4月29日以降の戻り高値が切り下がる下落基調の範囲としてその後の一段安へ向かう起点となりやすいと考える。

【当面の主な予定】

5月24日
 17:00 4月 観光客数 前年比 (3月 26.07%)
5月25日
 16:00 5月 製造業景況観指数 (4月 111.0)
 16:00 5月 設備稼働率 (4月 75.9%)
5月27日
 20:30 週次 外貨準備高 5/21時点 (5/10時点 495.9億ドル)
5月28日
 16:00 4月 貿易収支 (3月 -46.5億ドル)
 16:00 5月 経済信頼感指数 (4月 93.9)
5月31日
 16:00 1-3月期 GDP 前期比 (10-12月期 1.7%)
 16:00 1-3月期 GDP 前年比 (10-12月期 5.9%)

6月1日
 16:00 5月 イスタンブール製造業PMI (4月 50.4)
6月3日
 16:00 5月 消費者物価上昇率 前月比 (4月 1.68%)
 16:00 5月 消費者物価上昇率 前年比 (4月 17.14%)
 16:00 5月 生産者物価上昇率 前月比 (4月 4.34%)
 16:00 5月 生産者物価上昇率 前年比 (4月 35.17%)


注:ポイント要約は編集部

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