ドル円見通し 138.90円へ年初来高値を更新した後も138円台中盤で確り(23/5/24)

ドル円、夜高値で138.90円まで高値を伸ばし、139円到達へは進めずにいるものの24日朝にかけては138円台中盤で確りしている。

ドル円見通し 138.90円へ年初来高値を更新した後も138円台中盤で確り(23/5/24)

138.90円へ年初来高値を更新した後も138円台中盤で確り

〇ドル円、5/23夜138.90まで高値を伸ばし、24日朝にかけて138円台中盤で確り
〇米連邦債務上限問題の協議に進展は見られず
〇米10年債利回りは8日ぶりに終値ベースで低下、ドル円の上昇にもやや頭打ち感
〇NYダウ、5/19から3営業日続落、ナスダック総合指数も160.53ポイント安
〇欧米の製造業景況感は悪化が顕著、年後半への景気減速感を強める内容
〇138円台を維持するうちは139円超えから139円台前半への上昇を想定
〇138円割れからは下落再開の可能性、22日午前安値137.48及び19日深夜安値137.42を試す下落を想定

【概況】

ドル円は5月23日午前に138.87円へ上昇して19日早朝高値138.74円を上抜き1月16日安値127.22円以降の高値を更新、いったん138円台序盤へ下げてから夜高値で138.90円まで高値を伸ばした。139円到達へは進めずにいるものの24日朝にかけては138円台中盤で確りしている。
5月19日にパウエル米FRB議長が利上げ停止に含みを持たせる発言を行ったことで137.42円まで下げたものの、5月22日夜の米FRB高官らによる利上げ継続支持発言等をきっかけとしてドル高感が強まり、米長期債利回りが5月12日からの連騰を続けたことにより23日も高値を伸ばした。

5月23日夕刻から夜にかけては独、欧、英の5月製造業PMIが軒並み予想を下回る悪化となったことでユーロやポンドが売られてドル高感が強まったが、その後の米5月製造業PMIが予想を下回る悪化となったことや、米連邦債務上限問題の協議に進展が見られなかったことでドル高にややブレーキがかかり、米10年債利回りは5月11日以降の高値を更新したところからの反落で8日ぶりに終値ベースで低下したため、ドル円の上昇もやや頭打ち感が出ている。5月25日の米GDP改定値と新規失業保険申請件数、26日の4月個人消費支出(PCE)デフレーターの発表を控えて取引もやや慎重な動きにとどまった印象だ。

【米連邦債務上限問題は進展無し】

米連邦債務上限問題を巡るホワイトハウスと共和党との事務方レベルの協議が5月23日に行われたものの進展は無かったようだ。バイデン政権に対抗する共和党のマッカーシー下院議長は「非常によい協議だった。我々はお互いの現在地を知っている」と述べて合意へ向けた楽観姿勢を示したものの、事務方協議の現場においては下院金融サービス委員会のマクヘンリー委員長が「歳出について意見が分かれており協議がいつ再開されるかは明らかでない」「双方の隔たりは依然として大きく、民主党側が富裕層や企業に対する増税を主張する一方で共和党側は歳出削減を求めている」と述べるにとどまり、共和党交渉担当者のグレーブス下院議員は「交渉がうまくいっているとは思えない。政権側は支出を減らすことを拒否している」と述べて進展が見られていない状況を吐露している。
債務上限問題は毎年のように繰り返され、結局は合意に至ってきたため今回もギリギリのところで合意に達するだろうと市場は見ているが、来年の大統領選挙を控えて共和党側の態度が硬化することも懸念されている。

【欧米の製造業景況感は悪化が顕著に】

5月23日に発表が続いた欧米のPMI(購買担当者景況指数)ではサービス業の改善が目立ったものの製造業が軒並み悪化した。独5月製造業PMIは42.9となり、4月の44.5から悪化して市場予想の45.0を大幅に下回り、サービス業は57.8で4月の56.0及び市場予想の55.3を上回った。
ユーロ圏5月製造業PMIは44.5となり、4月の45.8から悪化して市場予想の46.0を下回り、サービス業も55.9で予想の55.6を上回ったものの4月の56.2から悪化した。英国の5月製造業PMIは46.9で4月の47.8から悪化して市場予想の48.0を下回り、サービス業も55.1で4月の55.9及び市場予想の55.5を下回った。
米国の5月製造業PMIは48.5となり、4月の50.2から悪化して市場予想の50.0を下回り、サービス業は55.1で4月の53.6から改善して市場予想の52.6を上回った。

これらは主要国中銀の金融引き締めによる景気減速感を示しており、米銀破綻をきっかけとした信用不安を背景に銀行の与信基準が厳格化して事実上の追加引き締め効果を示していることも踏まえると、年後半への景気減速感を強める内容だったと思われる。米債務上限問題も併せてドル円としてはリスク回避感の側面から139円台への上昇を躊躇させるものとなったようだ。
米商務省による4月の新築一戸建て住宅販売件数(季節調整済、年換算)は前月比4.1%増の68万3000戸となり、2022年3月以来の高水準となり市場予想の66万5000戸を上回ったが、3月分は65万6000戸に下方修正され、販売価格中央値は前月比7.7%低下の42万800ドルとなり2021年12月以来の低水準となった。

【米10年債利回りは8日ぶり反落、NYダウは3営業日続落】

5月23日の米長期債利回りは米経済指標の悪化と株安を受けて概ね低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.02%低下の3.70%となった。5月12日から22日まで7連騰の上昇となり、23日も一時は3.76%まで続伸したが、その後の反落により8営業日ぶりの低下となった。
30年債利回りは0.02%低下の3.95%となり、利上げに敏感な2年債利回りは横ばいの4.33%だったが、5月12日から22日へ7連騰となり、23日に4.42%まで高値を伸ばしてから失速した。
一方、NYダウは前日比231.07ドル安となり5月19日から3営業日続落した。米連邦政府債務上限引き上
げ協議での具体的な進展がないことと製造業PMIの悪化で売られた。ナスダック総合指数も160.53ポイント安と続落した。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】 

【60分足一目均衡表・サイクル分析】 

ドル円は5月23日午前序盤に19日早朝高値を上抜いて年初来高値を更新したことで5月19日深夜安値に対するダメ押しとなった22日午前安値を起点として上昇期に入ったとし、当面の高値形成期を26日未明にかけてと想定した。またダブルトップに終わる可能性もあるとして138円割れからは弱気転換注意とした。
5月23日夜に高値を更新してからも138円台を維持しているのでまだ一段高余地ありとするが、引き続き138円割れからはダブルトップ形成による下落期入りを疑い5月22日午前安値137.48円及び5月19日深夜安値137.42円を試す下落を想定する。

60分足の一目均衡表では5月23日未明への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いたが、その後は高値を若干切り上げた程度にとどまっているために先行スパンを上回った状況を維持しているものの遅行スパンは実線と交錯している。
先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンから転落する場合は下落期入りと仮定して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は5月19日早朝高値から23日夜への高値更新に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行の気配がみられるが、50ポイント割れを買い戻されて確りしているので、60ポイント超えからは上昇再開として70ポイント台を目指すとみる。ただし45ポイント割れからは下落期入りの可能性を優先して30ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、138.00を下値支持線、139.00を上値抵抗線とする。
(2)138円台を維持するうちは139円超えから139円台前半(139.10円から139.40円台)への上昇を想定する。139.30円以上は反落警戒とするが、138円台を維持するか、直前高値から1円を超える反落が発生しないうちは25日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)138円割れからは下落再開の可能性を優先して22日午前安値137.48円及び19日深夜安値137.42円を試す下落を想定し、138円割れの状況が続く場合は25日の日中も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/24(水)
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 5.25%、予想 5.50%)
15:00 (英) 4月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (3月 0.8%、予想 0.7%)
15:00 (英) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 10.1%、予想 8.2%)
15:00 (英) 4月 CPIコア指数 前年同月比 (3月 6.2%、予想 6.7%)
15:00 (英) 4月 RPI(小売物価指数) 前月比 (3月 0.7%、予想 1.2%)
15:00 (英) 4月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (3月 13.5%、予想 11.1%)
17:00 (独) 5月 IFO企業景況感指数 (4月 93.6、予想 93.0)
22:00 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:30 (米) 財務省2年変動利付債入札
26:00 (米) 財務省5年債入札
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨 

5/25(木)
15:00 (独) 1-3月期 GDP季調済・改定値 前期比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (独) 1-3月期 GDP季調前・改定値 前年同期比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
15:00 (独) 6月 GFK消費者信頼感 (5月 -25.7、予想 -23.8)
21:30 (米) 1-3月期 GDP改定値 前期比年率 (速報 1.1%、予想 1.1%)
21:30 (米) 1-3月期 個人消費改定値 前期比年率 (速報 3.7%、予想 3.7%)
21:30 (米) 1-3月期 コアPCEデフレーター改定値 前期比年率 (速報 4.9%、予想 4.9%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 24.2万件、予想 25.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 179.9万人、予想 180.0万人)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前月比 (3月 -5.2%、予想 1.1%)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前年同月比 (3月 -23.3%) 

注:ポイント要約は編集部

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