年初来ドル高値更新、ただ上値は依然重そう
〇先週のドル円、年初来高値を上抜け138円台に乗せた後一時急反落、137.95レベルで取引を終え越週
〇米債務上限問題に関する楽観発言が好感され、年初来高値の更新とドルの買いの要因に
〇今週は、米経済指標や通貨当局者の発言に要注意、一喜一憂する展開か
〇先週末に掛けて再び雲行きが怪しくなった米債務上限問題にも注目
〇テクニカルには、200日線に下値を支えられ140円方向に向かうことが出来るかにまずは注目
〇年初来高値138.74が最初の抵抗、超えればフィボナッチポイントにあたる139円半ばが意識されるか
〇今週のドル円予想レンジは、135.50-139.50
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場はドルが一段高。週末にやや失速したものの、週のザラ場ベースでは年初来高値を更新する局面も観測されている。
前週末は、G7財務相・中銀総裁会議にあわせて日米財務相会談も実施され、金融情勢などの意見交換が行われた模様。また14日に実施されたトルコ大統領選は決着がつかず、「28日決選投票」となる公算が大きいとして思惑を集めていたようだ。
そうした状況下、ドル/円は135.60-65円で寄り付いたのち、しばらくはレンジ取引。ドルの上値も重く、136円半ばをなかなか超えられなかった。しかし突破すると、そのまま137円台乗せ、さらに137.91円の年初来高値も上抜けて138円台へ。さらなるドル高の進行期待も取り沙汰されるなか、週末には調整と思しき動きから一時急反落。1円を超える下げを記録し、週末NYは結局137.95円レベルで取引を終え越週となった。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「米債務上限問題」と「G7サミットなど」について。
前者は、日本時間17日早朝に実施された「バイデン大統領と議会指導者の債務上限問題の再交渉」も特段進展なし。しかし、終了後には共和党のマッカーシー下院議長から「週内の合意は可能」とのコメントが聞かれたほか、バイデン氏からも「米国がデフォルトにならないよう合意できると確信している」との発言が取り沙汰されていた。合意に向けたしっかりとしたエビデンスはなかったものの、金融市場はそれら発言を好感。ドル/円が年初来高値を更新する一助、ドルの買い要因となっていたことは間違いない。ただ、一時期かなりの楽観ムードに傾いていた市場が週末に一変。バイデン氏不在のなか行われていた協議が一時中断となり、マッカーシー氏は「政府側が動かないことが一時停止の理由」として強い不満を滲ませている。
対して後者は、前述した米債務上限問題もありG7欠席も一時取り沙汰されたバイデン氏だったが、結局18-21日と当初予定通りの出席が決定した。しかし、上記のしわ寄せが別のところに噴出。G7サミット後に予定されていたオーストラリア訪問がキャンセルされ、実施される見込みになっていた米豪首脳会談、そして「クワッド」4ヵ国首脳会議は日本で代替え実施されていた。一方、それとは別に当初は19日に「オンラインで会議に参加する」とされていたウクライナのゼレンスキー大統領は、紆余曲折を経たのち結局20日に訪日。21日に直接会合に参加した。なお、岸田首相はホスト国の首相として18日夜に日米首脳会談を行うなど、英独伊残り5ヵ国すべての首脳そしてインドなど招待国首脳との二国間会談を行っていた。
<< 今週の見通し >>
先週のドル/円は週のザラ場ベースで一時138.74円を示現し、それまでの年初来高値を1円近く更新している。リスクという意味ではドル高方向にバイアスで、週内に140円超えをトライする局面があっても不思議はない。しかし、今年1月につけた年初来安値127.22円から前回高値137.91円までは2ヵ月弱で約10円の上昇を経たのちピークアウトしていることに対し、今回は3月24日安値129.65円を起点に先週高値138.74円までと期間、価格とも非常に近いところを達成したところがやや気掛かりではある。
「年内の米利下げ観測」はさすがに後退した感があるものの、次回会合の金融政策といった期間を狭めた見通しについては逆に市場筋でも見解が分かれている。したがって次回6月13-14日のFOMCをにらみつつ、今週もまずは発表される米経済指標や通貨当局者の発言には要注意。一喜一憂する展開が見込まれている。
一方、それとは別に注意すべきは米債務上限問題。一時期楽観論一色と思しき状況になったものの、先週末に掛けて再び雲行きが怪しくなった感を否めず、逆に調整的なドル売りを支援していた。G7サミットも終わり、米国に戻ったバイデン大統領主導のもと合意に向けた動きとなるのか注目だ。
テクニカルに見た場合、ドル/円は今月頭あたりに一度上抜けたが結果失敗に終わった200日線超えを、今回はようやく成功させた感がある。ちなみに、そんな200日線は今週初め段階で137.10-15円に位置、その後非常に緩やかなじり高をたどるもようだ。200日線に下値を支えられ140円方向に向かうことが出来るのか否かにまずは注目だ。失敗に終われば21日線も位置する135円台が再び視界内に。
材料的に見た場合、中長期的には発表されたG7声明に「中国の懸念を無視し、台湾など内政問題に干渉している」として反発の姿勢を見せた「中国情勢」。ロシアが要衝とされるバフムトを「掌握した」と発表している「ロシア・ウクライナ情勢」、「北朝鮮情勢」−−などに注目。
そうしたなか今週は、1-3月期のGDP改定値や4月のPCEデフレーターなどの米経済指標の発表が相次ぐ。また5月に実施されたFOMC議事要旨も公開される見通しだ。そのほか米国を中心に通貨当局者の講演などが連日相次ぎ実施されるだけに、週間を通して要人発言にも注意が必要か。
そんな今週のドル/円予想レンジは、135.50-139.50円。ドル高・円安については、先週示現した新たな年初来高値138.74円が最初の抵抗。超えればフィボナッチポイントにもあたる139円半ばが意識されかねない。
対してドル安・円高方向は、先週末安値の137.43円をめぐる攻防にまずは注目。下回ると200日線を目指す。仮に後者をしっかり下回るとドル大幅続落も否定できなくなりそうだ。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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