ドル円見通し 再びドル安の流れに入ったか、3月以降の下降チャンネルからは抜け出せず(週報11月第3週)

週後半はユーロやポンドが戻す中でドル円は失速となりドル安感がやや復調するような動きとなった。

ドル円見通し 再びドル安の流れに入ったか、3月以降の下降チャンネルからは抜け出せず(週報11月第3週)

再びドル安の流れに入ったか、3月以降の下降チャンネルからは抜け出せず

〇ドル円ワクチン開発期待で9日105.64まで、11日105.67まで上昇するも週後半失速104円台半ばで越週
〇米10年債利回りは10日に0.97%まで上昇するも、13日は0.90%丁度で終了、利回り上昇にもブレーキ
〇11/9の急騰続かず下降トレンドの範囲内か
〇104.42を割り込まないか105円を回復するようであれば反発の可能性105.67越えで一段高へ
〇そのためにはファイザー社ワクチンの承認報道、早期供給の目途等が現実化が必要
〇104.42を割り込んで続落に入り、104も割れる場合、103.17を割り込む流れ想定

【概況】

ドル円は11月9日の米ファイザー社によるワクチン治験の有効性と早期承認申請報道からのNYダウ急騰と同調して9日深夜には105.64円まで急騰したが、その後は伸びきれずに11日深夜に105.67円までわずかに高値を切り上げたものの週後半の失速で105円を割り込み104円台中盤まで下落して週を終えた。
ファイザー社のワクチン関連報道からはNYダウが一時1600ドル高を超える急伸となり3万ドルに迫って史上最高値を更新したが、その後は高値更新へ進めずに上値を削る展開となり、為替市場もワクチンの早期供給期待と株高というリスクオン心理を強める一方で欧米における足元の感染爆発の深刻さが日々増す中では方向感が定まらない状況となり、11日にかけてはユーロやポンドが下落、ドル円は高値圏を維持しつつも106円に迫る動きへ向かえず、週後半はユーロやポンドが戻す中でドル円は失速となりドル安感がやや復調するような動きとなった。

【米長期債利回りの上昇感緩む】

株高でリスクオン全開となり、安全資産への逃避買い意欲が後退すれば債券売りから米長期債利回りが上昇してドル円は株高同調のリスクオン心理と共に日米金利差面からドル高円安へ進みやすくなる。米10年債利回りは8月4日の0.51%から11月10日には0.97%まで上昇してきたが、その後は0.90%を割り込み、13日は0.90%丁度で終了している。
バイデン政権誕生からの財政出動拡大による国債大量発行なら債券需給も緩むとして米10年債利回りが上昇基調にあったともいえるが、米上院は共和党が握ったことで政治的につまり早急な経済政策の民主党政策優先化もさほど進まないとすれば、債券需給緩和を心配するのは時期尚早として利回り上昇にもブレーキがかかっている印象もある。
米10年債利回りの上昇が1.0%を超えるような状況に進まないなら金利面でのドル高円安感にこだわることもないと市場も考え始め、ドル円も全般的なドル安傾向に乗る動きへと進みやすくなるのではないか。また欧米の感染爆発を踏まえればリスク回避的な意味合いでの円買いがもう少し進んでも不思議ないと市場も考えて始めているのではないかと思う。

【11月9日の急騰続かず、下降チャンネルの範囲内】

ドル円は11月6日夜安値で103.17円まで下落して週明けの9日朝も103円台序盤からのスタートで底割れ及び103円割れへの余裕が乏しくなっていたが、103円割れを回避して突っ込み警戒感から買い戻し優勢で持ち直しに入ったところでファイザー社関連報道から急騰に入った。9日は夜にかけてユーロや豪ドル等も上昇してドルストレートでのドル安とクロス円の円安が並走し、ドル円においては株高同調でのドル高円安が勝る形で急伸商状となった。米長期債利回り上昇も押し上げ要因となった。しかし、13日には105円を割り込み、14日早朝も104.56円まで下げてほぼ安値引けで週を終えた。
11月6日安値から11日深夜高値までの上昇幅は2.50円高であり、半値押しは104.42円であり、週末終了時点では半値押しにあと一歩と迫る状況となった。半値押しを割り込むようだと11月6日安値からの反騰の勢いも削がれるところだ。

3月のコロナショックによる暴落から3月24日の戻り天井までV字反騰したが、その後は戻り高値切り下がりで右肩下がりの下降チャンネルを形成してきた。3月24日高値と6月5日の戻り高値を結ぶ抵抗線に対して、それ以降の戻り高値は届かずに切り下がりを続けて安値も更新してきた。この抵抗線は106円前後に来ていたが、11月11日高値では届かなかった。
3月24日高値と6月5日高値を結ぶ抵抗線の下には、7月1日高値、8月28日高値、10月8日高値をほぼ1直線で結ぶ上値抵抗線もあり、11月11日高値はこの抵抗線に丁度ぶつかって失速となっている。

ドル円は7月31日に104.18円まで下げたところでは104円割れ回避により8月13日高値107.04円まで2.86円の上昇となったがその後に一段安となった。9月21日には104円をわずかに割り込んだところから10月8日高値まで2.11円の上昇だったがその後に一段安となった。今回は103円割れをぎりぎりで回避して2.50円の上昇幅だったが、8月13日や10月8日への戻りと同様に2円を超える反発を入れても3円を超える反騰には発展せずに失速するという下落パターンを繰り返しつつあるのではないかと思われる。

【年末へ向けての重要な岐路、当面のポイント】

(1)11月6日からの上昇に対する半値押し104.42円を割り込まないか、一時的に割り込んでも105円台回復まで持ち直すなら、11月11日高値からの下落を押し目底形成として、11月6日安値からの上昇基調を継続して11日高値を超えるところから二段上げ型へと発展し、3月24日の戻り天井以降の抵抗線が来ている106円超えへ向かう可能性はあるだろう。そのためには11月9日に米国株が急騰して米長期債利回りが上昇、ドル円が株高同調で急伸した時のような反応構造が再現する必要があると思う。仮に11月11日高値超えなら106円超え、さらに107円を目指す可能性も出てくるが、そのためにはファイザー社ワクチンの承認報道、早期供給の目途等が現実化して足元の感染爆発懸念を凌駕する必要があると思う。

注:ポイント要約は編集部

再びドル安の流れに入ったか、3月以降の下降チャンネルからは抜け出せず

(2)104.42円を割り込んで続落に入り、104円も割り込む場合は戻り一巡からの下げ再開とみて11月6日安値を割り込んでゆく流れを想定する。底割れの場合は年末年始にかけて、5月7日安値と7月31日安値を結ぶ下降チャンネルの下値支持線が来る101円台を目指す流れを想定する。ファイザー社ワクチンの承認が遅れる場合や有効性への疑義、ワクチンを待っていられないほどの感染爆発による米国内でのロックダウンの多発、政権委譲が遅々として進まないケースではリスク回避的な円高が一挙に進む可能性もあると思われる。(了)<15日20:30執筆>

【当面の主な予定】

11/16(月)
休場、メキシコ
08:50 (日) 7-9月期 GDP速報値 前期比 (4-6月 -7.9%、予想 4.4%)
08:50 (日) 7-9月期 GDP速報値 年率換算 (4-6月 -28.1%、予想 18.9%)
09:01 (英) 11月 ライトムーブ住宅価格 前月比 (10月 1.1%)
11:00 (中) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 3.3%、予想 5.0%)
11:00 (中) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 6.9%、予想 6.7%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 4.0%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 -9.0%)
13:30 (日) 9月 設備稼働率 前月比 (8月 2.9%)
17:15 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
18:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
22:00 (欧) ラガルドECB総裁、講演
22:30 (米) 11月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (10月 10.5、予想 13.9)
22:30 (欧) メルシュECB理事、講演
26:30 (英) ハスケル英中銀委員、講演
27:45 (米) デイリーSF連銀総裁、SF連銀主催会合
28:00 (米) クラリダFRB副議長、オンライン討論会

11/17(火)
フェイスブックCEO、ツイッターCEO、上院司法委員会で証言
OPECプラス、共同閣僚監視委員会
モリソン豪首相来日、日豪首脳会談
09:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、金融政策会合議事要旨公表
22:30 (米) 10月 小売売上高 前月比 (9月 1.9%、予想 0.5%)
22:30 (米) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 1.5%、予想 0.6%)
22:30 (米) 10月 輸入物価指数 前月比 (9月 0.3%、予想 0.0%)
22:30 (米) 10月 輸出物価指数 前月比 (9月 0.6%、予想 0.2%)

23:15 (米) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -0.6%、予想 1.0%)
23:15 (米) 10月 設備稼働率 (9月 71.5%、予想 72.3%)
24:00 (米) 9月 企業在庫 前月比 (8月 0.3%、予想 0.5%)
24:00 (米) 11月 NAHB住宅市場指数 (10月 85、予想 85)
26:00 (米) ラムスデン英中銀副総裁、講演
27:00 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、講演
29:00 (米) アトランタ、サンフランシスコ、ミネアポリス、ボストン連銀総裁、4連銀主催オンライン会議
30:00 (米) 9月 対米証券投資 (8月 863億ドル)
30:00 (米) 9月 対米証券投資・短期債除く (8月 278億ドル)

11/18(水)
06:45 (NZ) 7-9月期 生産者物価指数 前期比 (4-6月 -0.3%)
07:00 (豪) ロウ豪中銀総裁、バネル討論会
08:30 (豪) 10月 ウエストパック景気先行指数 前月比 (9月 0.2%)
09:30 (豪) 7-9月期賃金コスト指数 前期比 (4-6月 0.2%)
08:50 (日) 10月 貿易統計・通関・季調前 (9月 6750億円)
08:50 (日) 10月 貿易統計・通関・季調済 (9月 4758億円)
16:00 (英) 10月 消費者物価指数 前月比 (9月 0.4%、予想 -0.1%)
16:00 (英) 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 0.5%、予想 0.5%)
16:00 (英) 10月 消費者物価コア指数 前年同月比 (9月 1.3%、予想 1.3%)
16:00 (英) 10月 小売物価指数 前月比 (9月 0.3%、予想 -0.1% )
16:00 (英) 10月 小売物価指数 前年同月比 (9月 1.1%、予想 1.2%)
16:00 (英) 10月 生産者物価コア指数 前年同月比 (9月 0.3%、予想 0.4%)

19:00 (欧) 10月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 -0.3%、予想 -0.3%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
19:30 (英) ホールデン英中銀委員、講演
22:30 (米) 10月 住宅着工件数・年率換算件数 (9月 141.5万件、予想 145.5万件)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数 前月比 (9月 1.9%、予想 2.8%)
22:30 (米) 10月 建設許可件数・年率換算件数 (9月 155.3万件、予想 156.3万件)
22:30 (米) 10月 建設許可件数 前月比 (9月 5.2%、予想 1.2%)
24:00 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、講演
26:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、ウェブセミナー
27:20 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演

11/19(木)
EU首脳会議
未 定 (南) 南アフリカ準備銀行、政策金利 (現行 3.50%、予想 3.50%)
08:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、オンラインパネル討論会
09:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウェブセミナー参加
09:30 (豪) 10月 新規雇用者数 (9月 -2.95万人、予想 3.00万人)
09:30 (豪) 10月 失業率 (9月 6.9%、予想 7.1%)
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調済 (8月 199億ユーロ)
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調前 (8月 218億ユーロ)

11/20(金)
G20財務相会議(オンライン)、APEC首脳会議(オンライン)
08:30 (日) 10月 全国消費者物価指数 前年同月比 (9月 0.0%、予想 -0.4%)
08:30 (日) 10月 全国消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (9月 -0.3%、予想 -0.7%)
08:30 (日) 10月 全国消費者物価指数・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (9月 0.0%、予想 -0.3%)
09:01 (英) 11月 GFK消費者信頼感 (10月 -31、予想 -34)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前月比 (9月 1.5%、予想 -0.3%)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 4.7%、予想 4.1%)
16:00 (英) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 1.6%、予想 -0.1%)5.9%)
16:00 (独) 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 0.4%、予想 -0.1%)
22:30 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演
24:00 (欧) 11月 消費者信頼感速報 (10月 -15.5、予想 -18.0)
27:30 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、講演

G20首脳会議(11/22まで、オンライン)

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