107円台中後半での持ち合い続く、株高による円安効果とドル全般の下落で板挟み
〇ドル円107円台中後半での持ち合い継続、持ち合い放れのきっかけ待ち
〇27日の高値は107.94、26日高値をわずかに上回り弱気パターン形成は回避
〇復興期待の株高による円安、リスクオンの円以外の通貨に対するドル売りが交錯、ドル円は動き鈍る
〇感染爆発の第二波による感染者急増等が見られないうちは復興期待優先の流れ続くか
〇ベージュブックでは全米の景気の急激な悪化と企業の先行き回復ペースに悲観的な姿勢を確認
〇米中対立問題は引き続き懸念材料
〇ドル円107.75以上で推移中は上昇余地あり、108.07以上に続伸の場合持ち合い上放れ
〇107.50割れで弱気転換、107.34割れで新たな弱気サイクル入り
【概況】
ドル円は5月6日(7日未明)安値105.98円から5月19日夜高値108.07円まで上昇してきたが、その後は新たな高値更新へ進めずに107円台中後半での持ち合いを続けている。
5月7日未明安値の後は5月13日夜安値106.74円、5月15日夜安値106.85円、5月20日深夜安値107.43円と安値を切り上げてきたが、5月22日夕に107.29円まで下げて20日深夜安値を若干割り込んだために底上げパターンはいったん崩れた。しかし27日午前安値は107.34円にとどまって新たな安値更新を回避し、27日夜高値では107.94円を付けて26日午前高値をわずかに超えている。このため安値切り下がりの後の戻り高値も切り下げて一段安に入る弱気パターンの形成はひとまず回避され、107円台中後半での持ち合いにとどまり、持ち合い放れのきっかけを待つところとなっているようだ。
【復興期待の株高円安、リスクオンでのドル安円高が交錯】
NYダウの大幅連騰等による株高がリスクオン心理を助長してドル円にとってはクロス円全般での円安要因となりやすい状況だが、その一方でユーロや豪ドル、新興国通貨等が上昇してドルストレートでのドル安も見られる。株高もドルストレートでのドル安もアフターコロナの復興期待や金融財政政策出動への期待によるリスクオン心理だが、ドル円にとっては強弱材料の交錯となるために板挟みで動きが鈍くなっている印象だ。
NYダウは連休明けの5月26日に前日比529.95ドル高と上昇したが、27日も553.16ドル高と続伸して2日間で千ドルを超える大幅上昇となっている。4月末への上昇でコロナショックによる3月暴落に対する半値戻しを超えてきていたが、27日への大幅続伸で25000ドルの心理的な節目も超えてきた。米ナスダック総合株価指数は既に3月暴落をほぼ解消するところまで戻している。
米首都ワシントンのバウザー市長は5月27日、「新規感染者が14日間連続で減少」するという連邦の基準を満たしたために同市の経済活動規制について5月29日に緩和すると表明した。
世界の感染者数は連日のように10万人前後の規模で拡大しており27日時点では578万人を超え、死者も35.6万人を超えている。米国の感染者も174万人を超えて前日から2万人以上の増加であり、死者も10万人を超えている。確かに米国の感染者増加数は4月24日の3万8958人から減少傾向にあるとはいえ、依然として高水準には違いないので市場はやや楽観的過ぎるのではないかとの懸念も抱くところだが、感染爆発の第二波による感染者急増等が見られないうちは復興期待優先の流れが続くのだろうと思われる。
欧州委員会が7500億ドルユーロ(約89兆円)規模を市場から借り入れてEUの中期予算(2021〜27年)に充てて感染被害の大きなイタリアやスペイン等を支援するとしたことが欧州復興期待となりユーロが急伸した。また5月8日に対ドルでの史上最安値を更新したブラジルレアルは6連騰で戻している。コロナショックによる新興国通貨売りがひとまず収まって上昇していることがユーロ高と共にドル安要因となっている。
【ベージュブック】
米連邦準備制度理事会(FRB)が5月27日に発表した全米12地区の連銀景況報告(ベージュブック)では、景気はほぼ全国で急激に悪化したとされ、企業は先行きの回復ペースには悲観的とみていることが示された。NY連銀は5月初めに景気持ち直しの散発的な兆候があったとしたが、クリーブランド連銀は「企業は最悪期は過ぎたとみているが強い回復は予想していない」として不況長期化への懸念を示した。この報告は5月18日までの情報に基づいてカンザスシティー連銀がまとめたもので、6月9日と10日の次回FOMCでの討議資料とされる。米連銀は4月末に実質的なゼロ金利と無制限の量的金融緩和政策を示したが、当面はこの緩和政策を維持するものと思われる。
米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は27日のインタビューに答えて、「我々は景気悪化の底に近いところにいる。年後半にはかなり大幅な改善を見込んでいる」とやや楽観的な見方を示した。最近の株高も年後半の復興を期待したものと思われるが、今後の経済指標動向によってはそうした楽観が崩される可能性もあると注意したい。
【米中対立問題】
中国の全国人民代表大会(全人代)は5月28日に香港への国家安全法の導入方針を採択して閉幕する予定だ。米国はこの法案に対する批判を強めており、昨年11月に成立した「香港人権・民主主義法」により米国務長官は香港の「高度な自治」が機能しているかどうかを検証して議会に報告することになっていたが、ポンペオ長官は27日に「自由で繁栄した香港が中国の模範になると期待したが、中国が香港に権威主義モデルを押し付けていることが明白になった」と述べて中国を批判した。
ニューヨーク・タイムズ紙は、全人代で国家安全法が採択されれば、トランプ政権は香港に対して中国本土と同率の関税を課すなどの対抗措置を発表する可能性があると報じている。
米下院は5月27日に中国政府による新疆ウイグル自治区のウイグル族弾圧に関わった中国当局者に制裁を科すよう大統領に求める「ウイグル人権法案」を可決した。既に上院を通過しておりトランプ氏が署名すれば成立するが、大統領は署名する意向だ。
香港及びウイグル問題により、米国は中国に対して関係者の資産凍結やビザ取り消しなどの制裁に動く可能性がある。また中国企業への取引制限や中国及び香港への投資制限等へ踏み込む可能性も懸念される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月20日深夜と5月22日夕刻の両安値をダブルボトムとして強気サイクル入りしているとしていたが、5月26日午前高値からの反落により27日午前時点では26日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は27日夕から29日夕にかけての間とし、26日午前高値超えからは新たな強気サイクル入りとした。
27日午前の下落では新たな安値更新を回避して27日夜には26日午前高値をわずかに超えたため、27日午前安値を直近のサイクルボトムとした新たな強気サイクル入りとする。トップ形成期は29日午前から6月2日午前にかけての間と想定するが、5月19日以降は持ち合いレンジでの往来のため、戻りは短命となる可能性もあると注意し、27日午前安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして6月1日から3日にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では5月27日夜の上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンも上抜いてきた。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、両スパンそろって好転するところからは下落再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は26日夜安値から27日午前への下落時に指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて反発しているので50ポイント前後を支持線として70ポイント超えを目指すのではないかとみる。ただし45ポイント割れへ急落する場合は下げ再開を疑い30ポイント前後への下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.50円を下値支持線、5月19日夜高値108.07円を上値抵抗線とする。
(2)107.75円以上での推移中は上昇余地ありとみる。108円に乗せても維持できないなら持ち合い相場の継続として失速しやすくなると注意するが、19日夜高値を超えて続伸の場合は持ち合い上放れとして108円台中盤への上昇を想定する。108.50円以上は反落注意とするが、108円を超えた後も107.70円以上での推移なら29日にかけても上昇継続の可能性ありと考える。
(3)107.50円割れからは弱気転換注意とし、27日午前安値割れからは新たな弱気サイクル入りとみて107円前後への下落を想定する。また107.29円割れからは持ち合い下放れに入るために下げが加速しやすいと注意し、週末から週明けにかけて106円台中後半を目指す可能性もあると考える。
注:ポイント要約は編集部
【当面の主な予定】
5/28(木)
10:30 (豪) 1-3月期 民間設備投資 前期比 (前期 -2.8%、予想 -2.6%)
18:00 (欧) 5月 経済信頼感 (4月 67.0、予想 70.3)
18:00 (欧) 5月 消費者信頼感・確定値 (速報 -18.8)
21:00 (独) 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 0.4%、予想 -0.1%)
21:00 (独) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 0.9%、予想 0.6%)
21:30 (米) 1-3月期 GDP改定値 前期比年率 (速報 -4.8%、予想 -4.8%)
21:30 (米) 1-3月期 GDP個人消費改定値 前期比年率 (速報 -7.6%、予想 -7.5%)
21:30 (米) 1-3月期 コアPCE改定値 前期比年率 (速報 1.8%、予想 1.8%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注 前月比 (3月 -14.4%、予想 -19.0%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (3月 -0.2%、予想 -14.0%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 243.8万件、予想 210.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 2507.3万人、予想 2575.0万人)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前月比 (3月 -20.8%、予想 -15.0%)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前年同月比 (3月 -14.5%、予想 -28.1%)
24:00 ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、バーチャル討論会に参加
5/29(金)
08:30 (日) 5月 東京都消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (4月 -0.1%、予想 -0.2%)
08:30 (日) 4月 失業率 (3月 2.5%、予想 2.7%)
08:30 (日) 4月 有効求人倍率 (3月 1.39、予想 1.32)
08:50 (日) 4月 小売業販売額 前年同月比 (3月 -4.6%、予想 -11.2%)
08:50 (日) 4月 百貨店・スーパー販売額・既存店 前年同月比 (3月 -10.1%、予想 -23.6%)
08:50 (日) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -3.7%、予想 -5.3%)
08:50 (日) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -5.2%、予想 -10.6%)
14:00 (日) 5月 消費者態度指数・一般世帯 (4月 21.6、予想 21.6)
14:00 (日) 4月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (3月 -7.6%、予想 -12.1%)
15:00 (独) 4月 小売売上高指数 前月比 (3月 -5.6%、予想 -10.5%)
15:00 (独) 4月 小売売上高指数 前年同月比 (3月 -2.8%、予想 -14.3%)
15:45 (仏) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 -5.8%、予想 -5.8%)
16:00 (ト) 1-3月期 GDP 前年比 (前期 6.0%、予想 5.0%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 0.4%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 0.9%、予想 0.8%)
21:30 (加) 1-3月期 GDP 前期比年率 (前期 0.3%、予想 -10.0%)
21:30 (米) 4月 個人所得 前月比 (3月 -2.0%、予想 -6.5%)
21:30 (米) 4月 個人消費・PCE 前月比 (3月 -7.5%、予想 -13.0%)
21:30 (米) 4月 PCEデフレーター 前年同月比 (3月 1.3%、予想 0.5%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前月比 (3月 -0.1%、予想 -0.3%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (3月 1.7%、予想 1.1%)
22:45 (米) 5月 シカゴ購買部協会景況指数 (4月 35.4、予想 40.0)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報 (速報 73.7、予想 74.0)
24:00 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、ヴァーチャル討論会に
オーダー/ポジション状況
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