ドル円見通し 104円台の下値支持帯から転落(20/3/10)

101円台でひとまず下げ渋ったことで10日朝は103円を超えるところまで戻しているが、暴落ショックは簡単にはぬぐえないだろう。

ドル円見通し 104円台の下値支持帯から転落(20/3/10)

ドル円見通し 104円台の下値支持帯から転落

【概況】

週明け早朝に原油相場が先週末比30%安を超える暴落となり、ダウ先物が同千ドル安を超える大幅続落となる中でドル円は104円を割り込み、午前の続落で101.56円まで急落した。その後は102.50円を挟んだ横ばいとなっていたが、9日夜には101.23円まで安値を切り下げている。101円台でひとまず下げ渋ったことで10日朝は103円を超えるところまで戻しているが、暴落ショックは簡単にはぬぐえないだろう。

NYダウは先週末比2013.76ドル安と暴落した。S&P500株価指数の下落率が基準値(7%)に達したために現行の取引ルールとなった2013年以降では初めて取引の一時中断措置(サーキット・ブレーカー)が発動されて15分間売買が停止した。ダウ等の1日の下げ幅は過去最大となった。
株安と先行きの金融緩和拡大観測から米10年債利回りは一時0.3%台に低下、前週末比0.22 %低下の0.55%となった。世界連鎖株安と経済活動の停滞によるリセッション懸念を払しょくするために米連銀は3月3日夜に緊急利下げを行ったが、リーマンショック時以来の緊急利下げだったことと既に低水準にある現状からの利下げ余地も限られるために市場はかえって不安感を増す結果となり、株安に歯止めがかからなくなった。

株安円高のトリガーとしてはNY原油の暴落もある。3月9日のNY原油は10.15ドル安(24.6%安)の31.13ドルで終了、一時は33%安の27.34ドルまで下げて2016年2月以来の安値となった。感染拡大による経済活動停滞と石油需要低下懸念が高まる中で先週末のOPECとロシア等産油国の協調減産協議が決裂したためだが、石油関連株安から株式市場全般へ悲観売りが伝播した。また原油暴落により商品市場全般が売られており投資家のポートフォリオ全体の損失拡大が手仕舞い売りの連鎖を招いているようだ。
イタリアでの新型コロナウイルス感染者が9172人、死者463人となり、フランスが感染者7161人、死者30人、スペインが感染者1231人、死者30人、ドイツも感染者1224人、死者2人と欧州全域へ拡大してきている。また米国も感染者は624人、死者26人へと拡大しており、今後は欧州の拡大並となる懸念も強まってきている。

【リーマンショック時との比較、2016年6月底を割り込む場合の超円高への懸念】

1987年10月のブラックマンデーでは1987年8月高値2446.65ドルから10月20日安値1616.21ドルまで34%の下落、10月19日のクライマックス的な下落は前日比23.3%安だった。現状は2月12日高値29568.57ドルから3月9日安値23706.07ドルまで凡そ20%の下落であるが、仮にブラックマンデー並の下落とすれば下値目処は19515ドルであと4000ドル以上の下げ余地という計算になる。

2008年のリーマンショックでは2007年10月天井から2009年3月底まで1年半近い下落となる中で2008年3月のベアスターンズ破綻及び10月のリーマンブラザーズ破綻が下げを加速し、トータルの下落率は54%安、直前天井14198.10ドルから大底6489.95ドルまで半値以下に下げている。今回の新型コロナショックがどの程度になるのかはまだ見極められないが、既に2018年12月への19.5%安した時の下落率を上回ってきているため、さらに続落の場合は比較対象がリーマンショックということになるのだろうと思われる。

リーマンショックの際、ドル円は2007年6月22日天井124.15円から3月17日安値95.75円まで下落後、8月15日高値110.64円までいったん戻したが2009年1月21日に87.11円まで一段安した。2009年4月6日高値101.42円までもう一度戻してから長期下落に入り、2011年10月31日安値75.57円まで下落している。
101円台まで下落した現状は、リーマンショック時と比較すれば3月にベアスターンズが破綻して95.75円まで下げる手前の段階という印象だが、2016年12月からの長期的な三角持合いの下値支持帯であった104円台中盤から転落したため、チャート上の下値目処は2016年6月24日の英国国民投票ショック時の安値99.04円、その下は2011年10月底75.57円まで見当たらなくなる。

リーマンショックはBRICs高度成長をエンジンとした世界的な金融資産バブルとその崩壊であり、心理的パニックによる投機マネーの逆流だったため、その対処は異次元の金融緩和であり、リーマンが破綻し他の大手企業を国が救済する中で最悪を出し切って市場心理は好転した。しかし今回は感染爆発であり、問題の中心値は中国本土から欧州全域へ移り、米国での感染拡大もこれから爆発してゆく可能性も考えられる。感染終息へ向けたワクチン・治療法の確立により不安解消となり、経済活動の停滞が一巡すればその後は復興需要期待で金融市場は復調するのだろうが、解決が見えない内はどこまで情勢が悪化するのか見えない。また金融バブル崩壊への対処に止まらないため、米連銀の利下げ再開や各国の追従した金融緩和では歯止めがかけられないと思われる。

ドル円の月足を見れば、2011年及び1995年への超円高時代を除けば1999年11月の101.22円、2005年1月の101.66円、2016年6月の99.04円等100円前後が重要な下値支持帯となってきた。この支持帯から転落したのが1995年と2011年への下落期である。今回も2016年6月底を割り込む場合はそうした超円高の到来も警戒すべきかもしれない。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月2日朝安値を前回のサイクルボトムとし、底割れにより新たな弱気サイクルに入っていた。3月10日午前に103円まで戻しているため、3月9日午前と夜の安値でダブルボトムをつけたと思われる。このため新たな底割れ回避の内は10日の日中から12日にかけての間への上昇余地があるが、世界連鎖株安とリスク回避の円高が一服しないことには本格的な反騰入りへの期待は乏しいため、102円割れからは下げ再開を警戒し、9日夜安値を割り込むところからは新たな弱気サイクル入りとして12日夜から16日にかけての間への下落が想定される。

60分足の一目均衡表では、10日朝の反発で遅行スパンは好転しやすくなっているが、先行スパンからの転落は継続している。遅行スパンが好転する場合は戻り高値を試すところとみるが、好転しても再び悪化するところからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンを突破するような上昇が見られない内は戻りは短命に終わる可能性が高いのではないかと思う。

60分足の相対力指数は9日午前から9日夜への下落場面では指数のボトムが切り上がる強気逆行となっているので40ポイント以上での推移中は戻りを試しやすいとみるが、40ポイント割れからは下げ再開を疑う。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、102.00円を下値支持線、103.25円を上値抵抗線とみておく。
(2)102円を上回る内は上昇余地ありとし、103.25円超えからは103.75円前後への上昇を想定するが、103.50円以上は反落注意とし、その後の102.50円割れからは下げ再開を疑う。
(3)102円割れからは下げ再開と仮定して9日夜安値101.23円試しを想定する。底割れからは100円試し、瞬間的には99円試しへ向かう可能性もあると思われるが、99円台ではいったん買い戻しも入りやすいと注意する。ただし、100円割れを実現し、その後の戻りも鈍い場合や戻せずに続落の場合は先行きで95円前後あるいはそれ以下へ向かう可能性も出てくるところと警戒する。

【当面の主な発表予定】

3/10(火)
10:30 (中) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 5.4%、予想 5.2%)
10:30 (中) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 0.1%、予想 -0.3%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP確定値 前期比 (改定値 0.1%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP確定値 前年同期比 (改定値 0.9%、予想 0.9%)

3/11(水)
16:00 (ト) 1月 経常収支 (12月 -28.0億ドル)
18:30 (英) 1月 月次GDP 前月比 (12月 0.3%、予想 0.2%)
18:30 (英) 1月 鉱工業生産指数 前月比 (12月 0.1%、予想 0.3%)
18:30 (英) 1月 鉱工業生産指数 前年同月比 (12月 -1.8%、予想 -2.6%)
18:30 (英) 1月 製造業生産指数 前月比 (12月 0.3%、予想 0.2%)
18:30 (英) 1月 貿易収支・物品 (12月 8.45億ポンド、予想 -70.00億ポンド)
18:30 (英) 1月 貿易収支・全体 (12月 77.15億ポンド、予想 -3.56億ポンド)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 0.1%、予想 0.0%)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 2.5%、予想 2.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前月比 (1月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (1月 2.3%、予想 2.3%)
27:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 -326億ドル、予想 -2345億ドル)

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