ドル円、スーパーチューズデーでのバイデン氏勝利報道を受けて持ち直すも戻りは鈍い
海外時間の為替概況
4日(水)の外国為替市場でドル円は下落後に持ち直す展開。@米FRBによるサプライズ的な緊急利下げ(FF金利の誘導目標を従来の1.5%ー1.75%から1.0%ー1.25%へ引き下げることを全会一致で決定。超過準備の付利も0.5%引き下げ1.1%へ)や、A上記@を受けても尚米長期金利の低下に歯止めがかからなかったこと(更なる利下げを織り込む催促相場。米10年債利回りは心理的節目1.0%を割り込み一時0.934%へ急低下)などが重石となり、日本時間朝方にかけて、安値106.86まで下落しました。
しかし、B米民主党の大統領候補選(スーパーチューズデー)で中道派のバイデン氏(前副大統領)の勝利報道が相次ぐと、C米主要株価指数先物が上昇に転じ、欧州時間朝方には、一時107.68まで反発しました。もっとも、その後は、Dクロス円の下落(クロス円下落→ドル円連れ安)が重石となる中、本稿執筆時点(日本時間4時30分現在)では、107.42近辺まで押し戻される展開となっております。尚、この日発表された米経済指標(2月ADP雇用統計や、2月ISM非製造業景況指数)は市場予想を上回る結果となりましたが、市場の反応(ドル買いでの反応)は限られたものに留まりました。
昨日のユーロドル相場は急反落。@米FRBによる緊急利下げや、A米長期金利低下を受けたドル売りを背景に、欧州時間朝方にかけて、一時1.1186まで上昇しました。しかし、前日米国時間に記録した高値1.1212を前に伸び悩むと、その後は、B冴えない欧州経済指標(2月フランス・ドイツ・ユーロ圏のサービス業PMI)を受けたユーロ売りや、CECBによる追加緩和観測(来週のECB理事会で緊急利下げに踏み切るとの思惑)、D欧州委員会が「フランス及びイタリアのリセッションリスク」を指摘したこと、E良好な米経済指標を受けたドル買いなどが重石となり、米国時間には、一時1.1096まで反落しました。引けにかけて持ち直すも上値は重く、本稿執筆時点(日本時間4時30分現在)では、1.1132付近で推移しております。
ドル円のテクニカル分析
ドル円は、先週木曜日(2/20)に記録した約10ヶ月ぶり高値112.21をトップに反落に転じると、昨日(3/4)は一時106.86まで急落しました(約2週間で5円35銭の急落劇)。この間、一目均衡表雲転換線や基準線、一目均衡表雲上限及び雲下限、ボリンジャーミッドバンドや200日移動平均線を下抜けした他、強い売りシグナルを表す三役逆転及び、強い下落トレンド入りを示唆するバンドウォークも発生するなど、テクニカル的に見て「地合いの弱さ」を印象付けるチャート形状となっております。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違い(緊急利下げに踏み切る米国と、追加緩和手段に乏しい日本)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中貿易摩擦の再燃リスク、C朝鮮半島や中東を巡る地政学的リスク、D新型コロナウィルスの感染拡大リスク(米長期金利低下→ドル売りと、米株安→リスク回避の円買いの2つの波及経路)、E英合意なき離脱の再燃リスク、F米大統領選挙の先行き不透明感など、ドル売り・円買いを想起させる懸念材料は引き続き沢山残っている状況です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。世界的な金融緩和期待を背景に、都度持ち直す場面は見られるものの、新型コロナウィルスの感染拡大を受けた世界経済への悪影響は深刻であり、当面は上値の重い展開(一巡後に反落する地合い)が続くと予想されます(金融緩和の効果に対する不信感が根強く、財政出動の必要性が高まりつつある)。
本日発表される一連の米経済指標(新規失業保険申請件数や、製造業受注など)が冴えない結果となった場合や、新型コロナウィルスに絡むネガティブな報道がなされた場合などには、「米景気減速懸念→米利下げ観測再燃→米長期金利低下→ドル売り」の経路と、「世界的な株安→リスク回避の円買い」の双方の経路で、ドル円が一段と押し下げられるリスクも想定されます(更なる追加利下げを織り込む催促相場。追加緩和手段に乏しい日本は他国の通貨安の煽りを受けて通貨高となりやすい)。米株及び米債相場の動向や、米経済指標の結果、新型コロナウィルスを巡るヘッドラインを睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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