ドル円一時112円台へ急伸も上値は重い。反落リスクに要警戒
今週のレビュー(2/17−2/21)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初109.78で寄り付いた後、@新型コロナウィルスの感染拡大を受けたグローバルなリスク回避ムード(企業の業績悪化懸念→アジア株全面安→円買い)や、A本邦・第4四半期実質GDP速報値(結果▲6.3%、予想▲3.7%)の急低下が重石となり、翌2/18に、安値109.66まで下げ幅を広げました。
しかし、B中国の景気刺激策を(中国人民銀行による1年物LPRの引き下げ)を好感する形で下げ渋ると、C新型コロナウィルスの感染者数の増加ペースが鈍化したことや、
D米経済指標が軒並み力強い結果を示したこと(米・2月ニューヨーク連銀製造業景況指数<結果12.9、予想5.0、※昨年5月以来の高水準>、米・1月住宅着工件数<結果156.7万件、予想142.5万件>、米・1月生産者物価指数<結果2.1%、予想1.6%>、米・1月生産者物価コア指数<結果1.7%、予想1.3%>、米・1月建設許可件数<結果155.1万件、予想145.0万件>、米・2月フィラデルフィア連銀製造業景況指数<結果36.7、予想12.0、※約3年ぶり高水準>、米・1月景気先行指数<結果0.8%、予想0.4%、※約2年半ぶりの高水準>)、E年初来高値110.30を上抜けたことに伴うショート勢のロスカット(ショートカバー)、F2019年5月3日と2019年5月6日の間に作られていた窓埋めに伴う更なるショートカバーが引き金となり、2/20には一時112.21(昨年4月以来、約10ヶ月ぶり高値)まで急伸しました。
もっとも、週末にかけては、G米・2月製造業PMI(結果50.8、予想51.5、※昨年8月以来の最低水準)や、H米・2月サービス業PMI(結果49.4、予想53.0)が市場予想を下回ったことで、H米株安・米長期金利低下(米10年債利回りは昨年9/3以来となる1.45%へ急低下。米30年債利回りは一時1.89%を記録するなど過去最低を更新)の流れが加速し、本稿執筆時点(日本時間5時00分現在)では111.59近辺まで押し戻される展開となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0832で寄り付いた後、@欧米貿易摩擦の激化懸念や、Aドイツを巡る政局不透明感、BECBによる追加緩和観測、Cドイツ・2月ZEW景況感調査(結果8.7、予想21.5)の冴えない結果、D米経済指標の良好な結果が重石となり、週後半(2/20)にかけて、約2年10ヶ月ぶり安値1.0778まで急落しました。しかし、Eドイツ・1月生産者物価指数(結果0.8%、予想0.2%)の伸び率増加や、Fユーロ圏・2月消費者信頼感指数(結果▲6.6%、予想▲8.2%)の良好な結果、G米・2月PMIの冴えない結果、H米長期金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となると、週末にかけて、週間高値1.0863まで反発しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間5時00分現在)では1.0856近辺で推移しております。
来週の見通し(2/24−2/28)
<ドル円相場>
ドル円は、2/3に記録した安値108.32をボトムに反発に転じると、今週後半(2/20)にかけて、約10ヶ月ぶり高値112.21まで急伸しました。この間、200日移動平均線やボリンジャーミッドバンド、一目均衡表雲下限や一目均衡表雲上限、一目均衡表基準線や一目均衡表転換線を突破した他、強い買いシグナルを表す三役好転及び、強い上昇トレンド入りを示唆するバンドウォークの発生、昨年5月に作られた窓埋め成功など、テクニカル的に見て「地合いの強さ」を意識させるチャート形状となっております(但し、昨年4/24に記録した直近高値112.41にあと一歩届かなかった他、節目112円台も維持できず反落に転じるなど、週末にかけてはやや上値の重さが意識される場面も見られました)。
一方、ファンダメンタルズ的に見ると、@日米金融政策の方向性の違いや、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感(米・2月PMI総合が49.6を記録するなど2013年10月以来の最低水準)、B米中貿易摩擦の再燃リスク、C朝鮮半島や中東を巡る地政学的リスク、D新型コロナウィルスの感染拡大リスク、E英合意なき離脱の再燃リスク、F米大統領選挙の先行き不透明感など、ドル売り・円買いを想起させる懸念材料は引き続き沢山残っている状況です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的に「底堅さ」を見せつつも、ファンダメンタルズ的な弱さが「続伸を阻む」シナリオが想定されます。来週発表される一連の米経済指標(コンファレンスボード消費者信頼感指数や、GDP改定値、耐久財受注、新築住宅販売件数、PCEデフレータ、シカゴ購買部協会景況指数など)が冴えない結果となれば、「米景気減速懸念→米利下げ観測再燃→米長期金利低下→ドル売り」の経路で、ドル円が再度押し下げられるシナリオも想定されます(※既に米10年債利回りは約5ヶ月半ぶり低水準、米30年債利回りは史上最低水準)。
新型コロナウィルスに絡むヘッドライン(サプライチェーンへの打撃→世界経済の減速懸念→リスク回避の株安・円買い)や、米経済指標の結果、米当局者発言(来週も米当局者講演が複数予定)、米国債償還・利払いに伴う本邦機関投資家の円転リスク、財務省が2/27に公表する対外及び対内証券投資売買契約等の状況(今般の急騰劇がドル円ショートのロスカットに起因しているのか、本邦機関投資家による対外証券投資の活発化が原因なのかを見極める)を睨みながらも、当方ではドル円の反落をメインシナリオとして予想いたします(昨年4/24高値112.41をバックにした戻り売りが強まる展開。今般の急騰劇は一部で囁かれる「日本売り」などでは無く、リスク回避のドル買いに端を発した俄か円ロングのロスカットが主因と整理。この為、一巡後の反落リスクに要警戒)。
来週の予想レンジ(USDJPY):110.25ー112.75
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、昨年末(12/31)に記録した約4ヶ月半ぶり高値1.1240をトップに反落に転じると、2/20には、約2年10ヶ月ぶり安値1.0778まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、200日移動平均線や90日移動平均線、一目均衡表雲上限および下限を下抜けした他、強い売りシグナルを表す三役逆転も成立するなど、テクニカル的にみて、「地合いの弱さ」を意識させるチャート形状となっております(週末にかけて反発するも一目均衡表転換線の突破には至らず)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米中貿易摩擦が欧米貿易摩擦に波及するリスク(欧米貿易摩擦の激化懸念)や、Aユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感、Bイタリアを巡る財政悪化懸念および政局不透明感、C冴えない欧州ファンダメンタルズを背景としたECBによる追加緩和観測(早期正常化期待の大幅後退)、D英国情勢の先行き不安(英合意なき離脱リスクの再燃や、英米通商協議の難航リスク)、E新型コロナウィルスの感染拡大を受けたリスク回避ムード(ドル買い・円買い・スイス買い)の継続、Fドイツにおける政局不透明感の高まりなど、ユーロドルの上値を抑制する材料が複数存在する状況です。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。欧州経済指標(ドイツ2月ifo景況指数や、1月小売売上高、2月消費者物価指数)の結果や、新型コロナウィルスに絡むヘッドライン、ドイツの政局動向(2/23のハンブルグ市の州議会選挙)を睨みながらも、ユーロドル相場の軟調推移をメインシナリオとして予想いたします(但し、月末ECBフィキシングに向けた一時的なドル売り・ユーロ買いには要警戒)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0750−1.0950
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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