ドル円見通し、ISMショック再び(19/12/3)

12月2日夜に発表され場米ISM製造業景況指数が予想を下回ったことから株安ドル安が加速してドル円は12月3日未明に108.91円まで急落した。

ドル円見通し、ISMショック再び(19/12/3)

【概況】

12月2日夜に発表された米ISM製造業景況指数が予想を下回ったことから株安ドル安が加速してドル円は12月3日未明に108.91円まで急落した。
11月27日に米中協議進展期待と米GDP速報や耐久財受注が予想を上回ったことでリスク選好優勢となって株高ドル高が進んだ為にドル円も109円台を回復し、トランプ米大統領が28日早朝に「香港人権・民主主義法案」に署名して同法案が成立したことでリスク回避感から一旦される場面もあったが中国側の対抗策が具体的に示されなかったことで悲観するのは時期尚早として持ち直し、29日夜には109.66円円まで続伸した。感謝祭明けのNYダウが29日の終盤に失速したことでドル円も小反落して先週を終えていたが、11月30日に発表された中国の製造業PMIが良好だったこと、12月2日午前発表の財新製造業PMIも予想を上回ったことで再び高値試しとなって昼前には109.72円まで高値を切り上げた。

しかしその後は伸びず、中国が米国への対抗措置を発表したことや、米トランプ政権がブラジルとアルゼンチンに対する鉄鋼アルミ関税の再導入を決定したことで通商摩擦への懸念が再び強まって押され気味の展開となり、24時発表の米ISM製造業景況指数が悪化したことから株安ドル安が進行したためにドル円も急落商状となった。特に11月28日安値109.32円を割り込んだところからは売りの連鎖反応となったようだ。

【米中対立、保護主義拡大】

トランプ米大統領は11月28日午前に香港の反政府デモを支援する「香港人権・民主主義法案」に署名して同法が成立した。成立直後に中国側は内政干渉だとして猛烈な批判を行い、対抗措置をとるとしていたが、先週末までは具体的な続報がない状況だった。12月2日に中国外務省は米軍の艦艇や航空機の香港での整備を認めないという対抗措置を発表した。米中通商協議への影響も懸念されるところだが、対抗策が通商関連ではなかったことで発表当初の市場反応は鈍かった。
共産党機関紙・人民日報系の環球時報も12月2日に消息筋の話として、関税撤回が米中通商協議の第1段階合意への最優先事項であるとし、米国が12月15日に予定される対中制裁関税第4弾が発動されれば通商協議は頓挫するとした一方、トランプ大統領が中国による米農産品購入拡大の数値目標や産業補助金など中国の構造改革問題の棚上げを決断すれば合意はすぐにも可能だとも語っていると報じた。

米中双方にとっては香港問題では対立してもあくまでも最重要テーマは通商協議であり、中国が合意従っていることを示唆しているわけだが、トランプ大統領による「米国有利な条件での合意」はハードルが高い。
トランプ大統領は12月2日にブラジルとアルゼンチンに対する鉄鋼・アルミニウムへの追加関税を再導入するとツイートした。両国に対しては量的規制としていたが通貨安による競争阻害として関税導入へ切り替えるということだ。ブラジルのレアルも史上最安値を更新する中、通貨安にはトランプ大統領も過敏になっているということを示しつつ、ブラジルへの対応は中国への強硬姿勢をちらつかせるものでもあると思われる。
米中協議がどうなるのか、まだまだ紆余曲折は続くが、ドル円としては米中協議の不透明感を背景に昨年12月に株暴落と同調して大幅下落した経緯もあり、年末も近いことでリスク回避系の材料に反応しやすい市場心理になりつつあると思われる。

【ISMショック】

12月2日夜に発表された米サプライ管理協会(ISM)の11月製造業景況指数は48.1となり10月の48.3から低下して市場予想の49.2も下回った。景気の拡大・縮小の節目である50ポイントを4カ月連続で割り込んだ。この発表から株安ドル安円高が加速してNYダウは前日比268.37ドル安の大幅下落となり、ユーロも対ドルで急伸した。
ISM製造業景況指数は8月1日に発表された7月の指数が51.2で市場予想を下回り6月の51.7から悪化したことをきっかけとして6月以降のドル円上昇にブレーキがかかった経緯がある。その時は8月1日未明のFOMCが小幅利下げを決定したもののトランプ大統領が利下げ幅は小さいとして米連銀を批判し、対中強硬姿勢も示したことでドル円は8月26日安値へ大幅下落してゆくきっかけの日となった。

10月1日のISM製造業景況指数発表時も予想を大幅に下回る47.8へ低下したことでドル円は直前の108.46円から10月3日安値106.50円まで下落。
11月1日の発表は米雇用統計とも重なったが10月の数字が9月よりもさらに悪化したことがドル円の下落要因となり10月31日高値109.28円から11月1日安値108.72円まで下落するきっかけとなった。
今回もISM製造業景況指数の発表がドル安円高のトリガーとなっているため、市場もISM発表毎、月末月初に下落しやすいリズムにつかまっているのではないかと不安感が増しているかもしれない。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円60分足

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月15日未明と21日午前の両安値をダブルボトムとして上昇してきたが、11月26日午前高値から一旦109円を割り込んでからの切り返しで高値を更新したため、11月27日朝時点では11月26日午前高値を直近のサイクルトップ、26日夜安値を同サイクルボトムとした新たな強気サイクル入りとして11月29日午前から12月3日午前にかけての間への上昇を想定した。12月2日朝時点ではまだ上昇余地ありとしたものの、11月28日午前安値割れからは弱気サイクル入りとした。

11月29日夜へ高値を切り上げてから一旦失速し、12月2日午前に高値を更新した後での急落のため、11月30日未明安値を直近のサイクルボトムとして底割れからの弱気サイクル入りとなっている可能性もある。このため、12月3日夜までに109.25円以上へ反発する場合は11月26日夜安値から5日目となる12月3日の安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りと仮定して12月5日午前から9日午前にかけての間への上昇を想定する。12月3日夜以降へ一段安する場合、30日未明安値を割り込んだことによる弱気サイクル入りと仮定して12月5日未明から9日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では12月2日深夜の急落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、遅行スパン好転からはいったん戻りを試しにかかるとみて先行スパン下限を目指す可能性ありとみる。ただし遅行スパンが好転した後に再び悪化するところからは下げ再開を疑う。

60分足の相対力指数は28日早朝高値から12月2日午前高値への高値切り上げに対して指数のピークが切り下がる弱気逆行が続いてからの急落となった。3日未明に20ポイント割れまで下げているので目先は突っ込み警戒だが、いったん小反発した後の安値更新に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られない内はまだ一段安余地が残るとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月3日未明安値108.91円を下値支持線、109.25円を上値抵抗線とする。
(2)109.25円以下での推移中は一段安警戒とし、3日未明安値割れからは108.50円前後試しを想定する。108.50円以下は反騰注意とするが109円割れでの推移が続く場合は4日の日中も安値試しを続けやすいとみる。
(3)109.25円超えからはいったん強気サイクル入りとして109.50円手前を試す上昇を想定する。ただし12月2日高値を超えない内は急落に対する反動高に止まってさらに一段安する可能性があると注意し、109.25円を超えた後に2日以降の安値を更新するところからは下げ再開とみる。

【当面の主な予定】

12/3(火)
09:30 (豪) 7-9月期 経常収支 (前期 59億豪ドル、予想 63億豪ドル)
12:30 (豪) 豪準備銀行、政策金利 (現行 0.75%、予想 0.75%)
18:30 (南) 7-9月期 GDP 前期比年率 (前期 3.1%、予想 0.1%)
18:30 (南) 7-9月期 GDP 前年同期比 (前期 0.9%、予想 0.4%)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 0.1%、予想 0.0%)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 -1.2%、予想-1.9%)


12/4(水)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前期比 (前期 0.5%、予想 0.5%)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前年同期比 (前期 1.4%、予想 1.6%)
10:45 (中) 11月 財新サービス業PMI (10月 51.1、予想 51.2)

17:50 (仏) 11月 サービス業PMI改定値 (速報 52.9。予想 52.9)
17:55 (独) 11月 サービス業PMI改定値 (速報 51.3、予想 51.3)
18:00 (欧) 11月 サービス業PMI改定値 (速報 51.5、予想 51.5)
18:30 (英) 11月 サービス業PMI改定値 (速報 48.6、予想 48.6)
22:15 (米) 11月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (10月 12.5万人、予想 14.0万人)
23:45 (米) 11月 サービス業PMI改定値 (速報 51.6、予想 51.6)
24:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 1.75%、予想 1.75%)
24:00 (米) 11月 ISM非製造業景況指数 (10月 54.7、予想 54.5)
24:00 (米) クオールズFRB副議長、下院金融サービス委員会で証言

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