【概況】
米中協議進展期待と米経済指標の持ち直しにより11月1日午前安値107.88円を底として反騰入りし、11月8日未明には109.48円へ上昇して8月26日以降の高値を更新したが、109.50円手前で上値が重くなり、トランプ大統領が7日の中国商務省による段階的関税撤廃での合意について「合意していない」と述べたことから先行き不透明感が再燃したとして15日未明安値108.24円まで下落した。
この間は13日のWSJ紙や14日の英フィナンシャルタイムズ紙が米中協議が暗礁に乗り上げている印象を強める報道が円高を助長したが、11月15日朝にクドロー米国家経済会議(NEC)委員長が中国との貿易協議が非常に建設的に進んでいるとし、ロス米商務長官も米中両国が電話協議を15日に行うとして進展姿勢を示したことが反発のきっかけとなって108円台中盤へ戻して先週を終えた。
【米中協議進展せず?】
週明け18日の日中は、週末に行われた中国の劉鶴副首相とムニューシン米財務長官及びライトハイザー米通商代表部(USTR)代表による電話協議の結果待ちとなっていたが、16日に中国新華社通信が建設的な協議だったと報じただけで続報がなく、様子見で108.75円を挟んだ揉み合いで推移していたが、16時過ぎに英国の総選挙情勢を巡ってジョンソン首相の与党が優勢と報じられたことをきっかけに英ポンドが急伸し、ブレクジット問題での楽観から金融市場全般がリスクオンに傾斜したためにクロス円全般で円安となり、ドル円も19時台には109.07円まで戻したが、ポンド急伸が落ち着くと今度は米中問題へとテーマが変わった。
米CNBCテレビが「米中貿易協議第1段階の合意への署名に中国は悲観的になっている」と報じたことで急落に転じて深夜には108.51円まで下げた。報道では中国政府筋の話として中国が発動済みの追加関税の撤回確約を署名の条件としているもののトランプ米大統領が撤回を渋っているとされた。週末の米中閣僚級電話協議についての前進的な続報がないのもこのためかと思われる。
その後、米商務省が中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に対して5月から実施している制裁に関し、スマートフォンの保守等の限定的な取引を暫定的に認める例外措置を延長すると発表したため再び安心感が広がり、ドル円は108.50円割れには至らずに下げ渋った。
米10年債利回りは一時1.80%を割り込んだが終盤戻して1.82%で終了し、NYダウは米中問題を意識しつつも楽観先行で前週末比31.33ドル高と続伸して2日連続で終値ベース及び立会中取引の史上最高値を更新した。株高が円高にブレーキを掛けたという側面もある。
引き続き、米中通商協議はまだ土壇場の駆け引きが続いている。これまでの報道では、双方ともに合意したい意向ではあるが、米国の要求が厳しく中国側も受け入れがたいと抵抗している様がうかがえる。12月15日の米国による対中国制裁関税第4弾発動予定までは合意か、合意含みの継続協議か、破談と関税発動か、まだ波乱含みということだろう。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円60分足
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月15日未明安値で直近のサイクルボトムを付けて強気サイクル入りした。12日夕高値を基準として今回のサイクルトップ形成期は15日から19日にかけての間と想定されたが、18日深夜の反落により既に18日夜高値でサイクルトップを付けたと思われる。新たな弱気サイクル入りによるボトム形成期は20日未明から22日未明にかけての間と想定されるので、18日夜高値を超えないうちはもう一段安ありと注意する。
ただし、上昇基調にあってはサイクルボトム形成が短縮されて高値更新から連続的に強気サイクル入りする可能性もあるので、109円に迫るところからは強気転換注意とし、18日夜高値超えからは新たな強気サイクル入りとして21日夜から25日夜にかけての間への上昇へ進む可能性を考える。
60分足の一目均衡表では、18日深夜の急落で遅行スパンが悪化した。先行スパン転落はギリギリで回避しているが、19日未明安値108.51円割れからは先行スパンからの転落も明瞭になるため下落継続感が強まりやすい。強気回復にはまず両スパンそろって好転することと、その上で18日夜高値を超える必要がある。
60分足の相対力指数は18日夜への上昇時に70ポイントを超えたがその後に30ポイント台へ反落した。50ポイント台までを戻り抵抗とし、30ポイント割れへもう一段安しやすい状況と思われるが、60ポイント超えからは上昇再開の可能性を優先する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月19日未明安値108.51円を下値支持線、108.80円を上値抵抗線とみておく。
(2)108.80円以下での推移中は一段安余地ありとし、108.51円割れからはまず15日未明安値108.24円試し、さらに11月1日安値107.88円試しへ向かう可能性があるとみる。米中協議関連等で悲観売りとなる場合は11月1日安値試し、あるいは底割れへ向かう可能性も警戒する。また107.75円以下での推移なら20日午前にかけても安値を試しやすいとみる。
(3)108.80円超えからは18日夜高値109.07円試しを想定する。109円手前では戻り売りにつかまりやすいとみて、その後の108.51円割れからは下げ再開とするが、リスクオン材料を伴って18日夜高値を超える反騰の場合は11月8日高値109.48円試しへ上値目途を引き上げる。また109.07円を超えた後も108.80円以上での推移なら20日午前も高値を試す余地ありとみる。
【当面の主な予定】
11/19(火)
衆院本会議で日米貿易協定承認案が採決
09:30 (豪) 豪準備銀行、金融政策会合議事要旨公表
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調済 (8月 266億ユーロ)
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調前 (8月 257億ユーロ)
19:00 (欧) 9月 建設支出 前月比 (8月 -0.5%)
19:00 (欧) 9月 建設支出 前年同月比 (8月 1.2%)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数・年率換算件数 (9月 125.6万件、予想 132.0万件)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数 前月比 (9月 -9.4%、予想 5.1%)
22:30 (米) 10月 建設許可件数・年率換算件数 (9月 138.7万件、予想 138.5万件)
22:30 (米) 10月 建設許可件数 前月比 (9月 -2.7%、予想 -0.4%)
11/20(水)
休場 ブラジル(黒人意識の日、株式休場、債券・為替通常取引)
08:50 (日) 10月 貿易統計・通関・季調前 (9月 -1230億円、予想 3010億円)
08:50 (日) 10月 貿易統計・通関・季調済 (9月 -972億円、予想 2612億円)
16:00 (独) 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 0.1%、予想 0.0%)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨10月29-30日開催分
オーダー/ポジション状況
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