【概況】
9月4日の香港逃亡犯条例改正案の撤回、ブレクジットを巡る合意無き離脱阻止の動きから金融市場全般がリスクオンへ傾斜、さらに9月5日には米中閣僚級協議再開が報じられたことでリスクオンの流れが加速してドル円は107円台を回復してきた。
米中双方が制裁と報復の関税拡大を宣言した8月23日から8月26日へ急落したのだが、急落前の23日高値106.73円を9月5日にクリアして5日深夜には107.22円を付けた。6日夜の米雇用統計で非農業部門就業者増加数が予想を下回ったことで106.62円まで小反落したが、106円台後半では押し目買いされて持ち直し、9日夜、10日午前と戻り高値を切り上げ、11日未明には107.58円を付けている。
8月1日にトランプ大統領が対中国制裁関税第4弾の発動を宣言する前の高値が109.31円で、米中対立の深刻化と先行き不透明感、それと合わせての米連銀追加利下げ及び世界的な追従緩和の流れから8月26日に104円台まで崩れて今年1月3日と昨年3月26日安値を割り込んだのだが、協議再開への期待感により8月1日からの急落に対する揺れ返しの流れとなっている。
【リスクオン続く】
9月4日からの金融市場全般におけるリスクオン型の展開は継続している。
トランプ米大統領は10日、安全保障担当のボルトン大統領補佐官を解任した。北朝鮮やイラン・アフガン情勢をめぐって大統領との見解相違が伝えられていたが、軍事外交面での強硬派だったボルトン氏解任により特にイラン情勢における有事リスク拡大懸念は後退と市場は受け止めた。これもリスクオンに寄与している。
中国国家外為管理局は9月10日に適格外国機関投資家(QFII)と人民元適格外国機関投資家(RQFII)に対する投資枠撤廃を発表した。海外投資家の参入が進みやすくなるため中国による市場開放感が拡大するものとしてこれも市場の楽観ムードに寄与している。
米中協議関連では10月上旬とされている日程確定にまで進んでいないが、事務方協議は続いているようで、10日は香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポスト電子版が「中国が米農産品の購入を増やすことに同意する見通し」と報じている。ただ、前回もトランプ大統領が「中国は農産物を大量に買う約束をはやしていない」と激怒した経緯もある。中国側は長期持久戦覚悟とも伝えられているので、まだまだ紆余曲折があると思うが、今のところは市場は楽観的なスタンスを継続している。
株式市場は楽観的で、NYダウは73.92ドル高と5日続伸。株高で安全資産の債券売りが進み長期金利の指標である米10年債利回りは一時4週ぶりの高値となる1.702%へ上昇している。欧米の長期債利回りが持ち直していることと株高はドル円には押し上げ要因となっている。
【逆三尊からの高値試し、欧米日の金融政策、米中動向】
チャート的には8月26日安値を頭、8月12日安値と9月3日夜安値を両肩とした逆三尊型が形成され、そのネックラインである107円を超えて続伸に入ったことで逆三尊が完成した。8月26日から8月30日までの上昇と同レベルでの二段上げなら上値目途は107.97円で概ね108円前後が抵抗となりやすい水準と思われるが、108円を超えてくる場合は逆三尊間の値幅の二倍値で109.71円まで上値目途が切り上がり9月1日高値109.31円超えを試す可能性も出てくる。
どこまで伸びるのか、9月12日のECB理事会、9月17−18日の米連銀FOMC、9月18−19日の日銀金融政策決定会合等を見定めながらということになるのだろうが、その間に米中協議の合意へ向けた進展期待が強まるなら欧米日の金融政策に大きく左右されずにリスクオン継続として株高とともにドル円も高値を試し続けてゆく可能性も考えられえる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円60分足
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月3日深夜安値から3日目となる9月6日夜安値からの上昇で9月5日深夜高値を超えたため、10日朝時点では9月6日夜安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクルに入ったとした。9月5日深夜高値を基準として今回の高値形成期は10日夜から12日深夜にかけての間と想定されるので既にサイクルトップを付けての反落注意期にあるが、107円台を維持するうちは上昇余地ありとして11日夜から12日朝にかけては高値を試しやすい時間帯とみる。107円割れから続落に入る場合は弱気サイクル入りと仮定して11日夜から13日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、9日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜き、その後も両スパンそろっての好転を維持しているため、遅行スパン好転中は高値試し優先とする。26本基準線割れ、遅行スパン悪化と続くばあいは弱気転換注意、先行スパン転落も加わるところからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は10日午前高値から11日未明への高値更新に対しては指数のピークが切り下がり気味のため弱気逆行が発生する可能性があると注意する。50ポイント以上での推移中は上昇余地ありだが、50ポイント割れからは下げ再開を疑う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.25円から107.00円を下値支持帯、107.75円を上値抵抗線とみておく。
(2)107.25円以上での推移中は上昇余地ありとし、107.75円超えからは108円試しを想定する。また107.25円以上での推移なら12日午前も高値を試しやすいとみる。
(3)107.25円割れを弱気転換注意とし、107円割れからは先行スパン転落となるため下げ再開と仮定して9月6日夜安値106.62円試しを想定する。また107円以下での推移が続く場合は12日の日中も安値試しへ進みやすいとみる。
【当面の主な予定】
9/11(水)
09:30 (豪) 9月 ウエストパック消費者信頼感指数 (8月 100.0)
21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前月比 (7月 0.2%、予想 0.0%)
21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 1.7%、予想 1.7%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前月比 (7月 -0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前年同月比 (7月 2.1%、予想 2.2%)
23:00 (米) 7月 卸売在庫 前月比 (6月 0.0%、予想 0.2%)
23:00 (米) 7月 卸売売上高 前月比 (6月 -0.3%、予想 0.2%)
9/12(木)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前月比 (7月 0.0%、予想 -0.2%)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前年同月比 (7月 -0.6%、予想 -0.8%)
08:50 (日) 7月 機械受注 前月比 (6月 13.9%、予想 -9.0%)
08:50 (日) 7月 機械受注 前年同月比 (6月 12.5%、予想 -4.1%)
13:30 (日) 7月 第三次産業活動指数 前月比 (6月 -0.1%、予想 -0.3%)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 -0.2%、予想 -0.2%)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.4%、予想 1.4%)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -1.6%、予想 -0.1%)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -2.6%、予想 -1.4%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 19.75%、予想 17.00%)
20:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ドラギECB総裁、定例記者会見
21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前月比 (7月 0.3%、予想 0.1%)
21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 1.8%、予想 1.8%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前月比 (7月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 2.2%、予想 2.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.7万件、予想 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 166.2万人)
27:00 (米) 8月 月次財政収支 (7月 -1197億ドル、予想 -1610億ドル)
オーダー/ポジション状況
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