ドル円見通し リスクオン続いて107円台回復したが米雇用統計でブレーキ(週報9月第2週)

9月6日に発表された米国の8月雇用統計では、非農業部門就業者数が前月13.0万人増となり市場予想の15.8万人増を下回った。

ドル円見通し リスクオン続いて107円台回復したが米雇用統計でブレーキ(週報9月第2週)

ドル円見通し リスクオン続いて107円台回復したが米雇用統計でブレーキ

【概況 8月1日からの流れ】

(1) 8月1日未明に米FOMCが0.25%の利下げを決定した直後にトランプ大統領が対中国制裁関税第4弾の発動を宣言したことで、米連銀の利下げを織り込み済として上昇してきたドル円は直前高値109.31円から8月2日に108円割れ、さらに107円割れと急落し、8月12日には105.04円まで続落した。
(2) 8月13日に米国が制裁関税第4弾の発動についてはクリスマス商戦への影響を踏まえて一部の実施を12月へ延期するとしたことで8月13日深夜には106.95円まで戻したが107円には届かなかった。
(3) 8月23日の日中までは106円台後半での膠着状態が続いていたが、8月23日夜に中国が米国の第4弾への対抗関税拡大を宣言、その直後にトランプ大統領が対抗して既に実施済の第1弾から第3弾までの制裁関税の税率拡大を宣言したことで8月23日夜高値106.73円から8月26日朝安値104.45円まで急落し、今年1月3日安値と昨年3月26日安値を割り込んだ。

(4) 8月26日にG7に参加中だったトランプ大統領が米中が電話協議していると言及したことから戻しに入り、8月30日未明には106.68円を付けて8月23日高値に迫ったものの、丸4日間の戻しでは急落分の完全解消には至らなかった。
(5) 9月1日、日曜日に米中双方は宣言通りに関税拡大措置を発動したため、週明けの9月2日には105.90円へ下落、さらに9月3日夜には105.74円まで安値を切り下げたために、8月26日からのリバウンドが一巡して再び安値試しへ向かい始める流れとなりかけた。

(6) 9月4日から流れはまた円安へ変わる。午前中の豪4−6月期GDPが予想と一致して景気への懸念が後退、財新の8月サービス業景況指数が予想を上回ったことで市場に楽観が戻り始め、香港の争乱原因だった逃亡犯条例改正案の廃案が表明されたこと、英議会が合意無きEU離脱阻止法案を可決したことも続いて市場全般にリスクオン心理が拡大し、ドル円は5日昼に106.75円まで上昇して8月23日暴落直前高値106.73円をクリア、米中閣僚級協議が10月上旬に開催との報道も続いたために5日深夜には107.22円まで続伸した。
(7) 9月6日は夜の米雇用統計を控えてい107円を挟んだ小動きで推移していたが、雇用統計が予想より悪かったことで106.62円まで下げたが、その後はやや戻して週を終えた。

ドル円が4月後半から大幅下落してきたのは米中対立の深刻化と株安、米連銀の利下げ観測及び世界的な利下げ追従の動きによるものだった。このリスクオフ心理が最大となっていたのが8月23日から26日朝にかけての急落時だったが、徐々にこのリスクオフ心理が改善してきたことで8月23日高値を超えるところまで戻した状況にある。

【米雇用統計、パウエル議長講演、トランプ大統領ツイート】

9月6日には中国が預金準備率を引き上げ、米雇用統計は予想を下回り、パウエル議長が追加利下げを示唆、トランプ大統領はパウエル議長を批判ツイートと市場も振り回された。
9月4日からは市場全般がややリスクオン優先の動きとなり、ドル円も戻してきているが、9月12日には金融緩和拡大が予想されるECB理事会、9月17-18日の米FOMCも迫ってくる。米中協議も9月中は事務レベルの下交渉、10月上旬に閣僚級協議開催を目指すとしているが、まだ日程が決まったわけではない。このため一本調子でリスクオンを背景としてドル円が上昇基調を継続してゆけるかどうかは疑問符が付く。

9月6日に発表された米国の8月雇用統計では、非農業部門就業者数が前月13.0万人増となり市場予想の15.8万人増を下回った。7月分は速報の16.4万人増から15.9万人増へ下方修正された。失業率は3.7%で前月と変わらず予想と一致した。平均時給は前年同月比で3.2%増で予想の3.1%を上回った。
就業者数については政府の国勢調査による2.5万人も含まれており民間の雇用の伸びが鈍い印象を強めている。米中貿易戦争の影響も背景とした経済成長の停滞感を示しており、9月17−18日の米連銀FOMCでの追加利下げを正当化するものと受け止められ、ドル売り円買い要因となった。
雇用統計の発表前には中国人民銀行が金融機関に対する預金準備率を9月16日付けで0.5%引き下げると発表している。国内消費者物価がやや高めの推移にあるため政策金利の引き下げは見送られており、企業支援のための金融機関による貸し出しを支援する意味合いと思われるが、米中貿易戦争の影響も徐々に深刻化していることの裏返しと思われる。

米雇用統計発表後、米連銀のパウエル議長はスイスで講演し、「景気拡大の持続へ適切に行動する」と述べて追加利下げ姿勢を示した。「貿易をめぐる不透明感が企業の投資を抑制している」とし、英国のEU離脱問題や香港の大規模デモなどの地政学的リスクにも言及したが、「米景気の見通しは引き続き良好でインフレ率も2%の目標に向かっている」と、米国の成長率を2.0%から2.5%と予想して「リセッションに陥るとは考えていない」と述べた。
議長講演の内容には特にサプライズはない。前回のFOMCにおける利下げについてはFOMC後の会見で予防的で調整的なものであり、利下げサイクルに入ったということではないと強調したが、その直後に米国が対中制裁関税第4弾の発動を宣言するなど米政権に振り回されている。

トランプ大統領は6日にも「FRBは利下げするべきだ。彼らは利上げを行うのが早過ぎたし利下げを行うのが遅過ぎた。そして量的引き締めも役に立たなかった」とツイートしている。中国関連では「中国は景気刺激策を成立させた。彼らが米国に支払っている全ての関税、何十億というドルのせいで刺激策が必要なんだ。その間にもFRBは傍観しており何もしていない」とも述べている。

【逆三尊】

ドル円を2時間足、4時間足で見ると、8月26日安値を頭、8月12日夜安値を左肩、9月3日深夜安値を右肩とし、107円をネックラインとした逆三尊型の形成が見られる。9月5日深夜高値で8月6日に中間反騰した時の高値も越えているため、ネックラインを突破して逆三尊が完成している印象なのだが、9月5日深夜高値からはいったん107円割れへ下げているため、逆三尊完成にはもう一度9月5日深夜高値を超えて続伸してゆく必要がある。
9月5日深夜高値を超えて続伸する場合、逆三尊完成とみれば、逆三尊構成中の高安レンジの2倍として109.71円が上値計算値となり、9月1日高値109.31円を超える可能性も出てくる。リスクオン心理がさらに強まり株高と同調した円安が進む場合はまず108円、さらに8月1日高値への揺れ返し上昇へ進む可能性も考えられる。

ただし、逆三尊型が形成されても、それが「大底の逆三尊」なのか、下げ途中の二段戻しを示す「中段の逆三尊」に過ぎないのかは、まだ確定しない。二段戻しに過ぎなければ、8月26日から8月30日への一段目の上昇並みとしての上値計算値は107.97円であり、108円に届かない程度のうちは二段戻しが一巡した後に下げ再開に転じる可能性が残るということだ。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

概ね10か月から1年周期のサイクルでは、4月24日高値を戻り天井とした下落期にあり、1月3日底を基準として11月から2020年1月にかけての間へ下落継続しやすい状況にある。
1年サイクルを複数で構成する3か月前後の底打ちサイクルは、短い場合は2か月程度で底打ちするケースがあるが、6月25日底から2か月目となる8月26日安値で底を付けて戻しに入った可能性もある。107.50円超えからはこのサイクルの上昇期として8月1日高値に迫る可能性が出てくるが、106円割れからは下げ再開の可能性が高まり、8月26日底割れからは新たな弱気サイクル入りとして11月から1月にかけての間への下落期となると考えられる。
逆三尊型形成の状況と3か月サイクルの状況を踏まえて当面のポイントを示す。

(1)当初、9月6日深夜安値106.62円を下値支持線、9月5日深夜高値107.22円を上値抵抗線とする。
(2)9月5日高値を超えないうちは6日深夜安値割れからの一段安余地ありとし、106.00円から9月3日深夜安値105.74円前後を試す可能性ありとみる。概ね3日から5日周期の短期的なサイクルでは6日夜から10日夜にかけての間が目先の底形成期と思われるので、9日に下落する場合は10日以降の反騰に注意する。
106円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、リスクオフ材料を伴って急落商状の場合は週後半に105円台前半へ向かう可能性も出てくると注意する。
(3)107円超えを強気転換注意、5日深夜高値超えからは107円台後半を目指す上昇を想定する。リスクオンにより株高円安が同調して進む場合は108円試しを想定する。また。概ね3日から5日周期の短期的なサイクルでは5日深夜高値超えの場合は10日夜から12日夜にかけての間へ上昇継続しやすくなるとみる。(了)<8日9:30執筆>

【当面の主な予定】

9/9(月)
北朝鮮建国記念日
07:45 (NZ) 4-6月期 製造業売上高 前期比 (前期 1.0%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.4%、予想 0.3%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP改定値 年率換算 (速報 1.8%、予想 1.3%)
08:50 (日) 7月 経常収支・季調前 (6月 1兆2112億円、予想 2兆832億円)
08:50 (日) 7月 経常収支・季調済 (6月 1兆9419億円、予想 1兆7006億円)
08:50 (日) 7月 国際収支ベース貿易収支 (6月 7593億円、予想 -240億円)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー・現状判断DI (7月 41.2、予想 41.3)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー・先行判断DI (7月 44.3、予想 43.6)
15:00 (独) 7月 貿易収支 (6月 168億ユーロ、予想 174億ユーロ)
15:00 (独) 7月 経常収支 (6月 206億ユーロ、予想 164億ユーロ)

17:30 (英) 7月 月次GDP 前月比 (6月 0.0%、予想 0.1%)
17:30 (英) 7月 鉱工業生産指数 前月比 (6月 -0.1%、予想 -0.1%)
17:30 (英) 7月 鉱工業生産指数 前年同月比 (6月 -0.6%、予想 -1.1%)
17:30 (英) 7月 製造業生産指数 前月比 (6月 -0.2%、予想 -0.1%)
17:30 (英) 7月 商品貿易収支 (6月 -70.09億ポンド、予想 -96.00億ポンド)
17:30 (英) 7月 貿易収支 (6月 17.79億ポンド、予想 -15.00億ポンド)
28:00 (米) 7月 消費者信用残高 前月比 (6月 146.0億ドル、予想 160.0億ドル)

9/10(火)
08:50 (日) 8月 マネーストックM2 前年同月比 (7月 2.4%、予想 2.4%)
10:30 (中) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 2.8%、予想 2.6%)
10:30 (中) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 -0.3%、予想 -0.9%)
10:30 (豪) 8月 NAB企業景況感指数 (7月 2)
17:30 (英) 8月 失業保険申請件数 (7月 2.80万件)
17:30 (英) 8月 失業率 (7月 3.2%)
17:30 (英) 7月 失業率・ILO方式 (6月 3.9%、予想 3.9%)

9/11(水)
08:50 (日) 7-9月期 大企業全産業業況判断指数(BSI) (前期 -3.7)
08:50 (日) 7-9月期 大企業製造業業況判断指数(BSI) (前期 -10.4)
09:30 (豪) 9月 ウエストパック消費者信頼感指数 (8月 100.0)
21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前月比 (7月 0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 1.7%、予想 1.8%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前月比 (7月 -0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前年同月比 (7月 2.1%、予想 2.2%)
23:00 (米) 7月 卸売在庫 前月比 (6月 0.0%、予想 0.2%)
23:00 (米) 7月 卸売売上高 前月比 (6月 -0.3%)

9/12(木)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前月比 (7月 0.0%、予想 -0.2%)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前年同月比 (7月 -0.6%、予想 -0.8%)
08:50 (日) 7月 機械受注 前月比 (6月 13.9%、予想 -9.0%)
08:50 (日) 7月 機械受注 前年同月比 (6月 12.5%、予想 -4.1%)
13:30 (日) 7月 第三次産業活動指数 前月比 (6月 -0.1%、予想 -0.3%)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 -0.2%、予想 -0.2%)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.4%、予想 1.4%)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -1.6%、予想 -0.1%)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -2.6%、予想 -1.4%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 19.75%、予想 17.00%)
20:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)

21:30 (欧) ドラギECB総裁、定例記者会見
21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前月比 (7月 0.3%、予想 0.1%)
21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 1.8%、予想 1.8%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前月比 (7月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 2.2%、予想 2.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.7万件、予想 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 166.2万人)
27:00 (米) 8月 月次財政収支 (7月 -1197億ドル、予想 -1610億ドル)

9/13(金)
休場 中国(中秋節)
香港デモ、対政府5大要求回答期限
13:30 (日) 7月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 1.3%)
13:30 (日) 7月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 0.7%)
13:30 (日) 7月 設備稼働率 前月比 (6月 -2.6%)
18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調済 (6月 179億ユーロ、予想 175億ユーロ)
18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調前 (6月 206億ユーロ)
21:30 (米) 8月 輸入物価指数 前月比 (7月 0.2%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 8月 輸出物価指数 前月比 (7月 0.2%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 8月 小売売上高 前月比 (7月 0.7%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 小売売上高・除自動車 前月比 (7月 1.0%、予想 0.1%)
23:00 (米) 9月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (8月 89.8、予想 90.5)
23:00 (米) 7月 企業在庫 前月比 (6月 0.0%、予想 0.3%)

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