【概況】
8月23日夜の中国による米国への報復関税発表、それに対する米国の対抗措置表明を嫌気して8月23日夜高値106.73円から26日朝安値104.45円まで急落、今年1月3日安値及び2018年3月26日安値を割り込んだが、米中協議再開期待からリバウンドに入り、8月30日未明には106.68円まで切り返したが23日夜高値には一歩届かずに先週を終えた。
9月1日、米中双方は予定通りに関税拡大を開始、ドル円は週明け朝に105.90円までいったん下げたものの早々に106円台を回復した。関税拡大開始については織り込み済みとした動きだったが、米中双方の協議進展と合意形成への期待を抱かせる動きは新たに見られず、米国市場が休場だったこともあって動意の薄い状況だった。
【米中の次の一手待ちだが、利下げ問題も並行】
市場は米中通商問題における閣僚級協議再開と進展を期待しているものの、今のところは9月上旬とされる協議日程等についての前向きな続報はない。
中国は10月に第19期中央委員会第4回総会(4中総会)を北京で開くため、そこで米国への対抗姿勢を打ち出す可能性もある。9月2日の中国共産党機関紙・人民日報は「米国の一部の人々は貿易摩擦を激化させ、国際貿易の秩序を破壊している」として米国を批判、中国外務省も「双方が協議継続のために必要な条件を作り出すことが重要」として米国の歩み寄りを求めている。
ドル円は米中対立の深刻化、米連銀の利下げ継続感や世界的な金融緩和拡大を背景に4月24日の戻り天井を起点に下落してきた。
2018年3月26日と今年1月3日以来となる105円割れに対してはひとまず切り返したが、米国が対中制裁関税第4弾発動を宣言して急落開始となった8月1日高値109.31円からの下落に対する半値戻し106.88円手前までの戻りにとどまっている。
8月23日夜から26日朝安値までの正味半日の急落分を丸4日かけてその大半を解消したが、高値更新へ進むきっかけを得られずに戻りも行き詰まっているところといえる。このため、未だ「知ったらしまい」では済まず、米中協議が進展しないことへの苛立ち等から下げ再開へと向かいやすい心理状況も抱えているといえる。また米中問題がしばらく膠着状態を続けたとしても、米連銀の追加利下げ姿勢が強まれば長期債利回り低下による円高圧力もかかり、米連銀の利下げ姿勢への各国による追従感が強まればクロス円全般の円高感がドル円への圧力となってくる懸念もある。
【ユーロの1.10ドル割れ】
8月30日にユーロドルが1ユーロ1.10ドルを割り込んだ。年初来及び2018年2月天井以降の安値更新である。2017年1月底1.0341ドルに対してはまだ距離はあるが、米連銀が利下げに踏み込んでいるにもかかわらずポンドも対ドルでの下落傾向、豪ドル、NZドル等も下落しており、メジャー通貨の加重平均であるドル指数も今年2月底からの上昇基調を継続して8月30日にはこの間の高値を更新している。
8月30日深夜のユーロドル急落はトランプ大統領が「ユーロはドルに対して狂ったように下落している。彼らの輸出と製造業が有利になる。そして米連銀は何もしていない」「今やドルは史上最も強い」「米連銀はすべきことが分かっていない」等とツイートしたことがきっかけとされた。トランプ大統領とすれば自身の発言でかえってドル高が進んだことに苛立っていることだろう。
リーマンショック発生後、世界は米連銀の大規模利下げと量的金融緩和政策発動をきっかけとしてそれに追従した。米連銀が金融緩和を終了させて利上げに踏み切ると、自国通貨貿易のために各国も引き締め・同調的な利上げに踏み切らざるを得なかった。投資マネーが流出すれば各国経済に打撃となることが懸念されたためだ。しかし米連銀が利下げに転じ始めたため、自国通貨が割高で放置されれば輸出への悪影響が出るとして追従利下げがブームとなりつつある。また米中貿易戦争の拡大が世界景気を停滞させ始めたため、ECBもマイナス金利の深堀りや量的緩和拡大を志向し始めるている。
各国の長期金利低下と米中対立深刻化はリスク回避的な株安円高要因となる。その一方で各国の追従利下げがドル円以外でのドル高を放置することとなる。ドル高は米国の輸出に悪影響であり、株高へのブレーキとなる。トランプ政権は米中戦争を抱えつつ、これ以上のドル高を阻止するために米連銀への大規模緩和要求をさらに強めざるを得ないと思われる。それはユーロ安やドル指数の上昇が継続しても、クロス円における円の全面高、ドル円での円高を一段と進めることになるのではないかと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円60分足
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月26日朝安値をサイクルボトムとして上昇してきた。8月23日夜高値から4日目の8月30日未明高値から下落し、26日朝安値から5日目の9月2日朝安値から若干戻している状況のため、現状は9月2日朝安値で直近のサイクルボトムを付けたところと思われる。このため9月2日朝安値を割り込まないうちは次の高値形成期となる9月4日未明から6日未明にかけての間への上昇余地があると思われるが、9月2日朝安値を割り込むところからは新たな弱気サイクル入りとして次のボトム形成期となる5日朝から9日朝にかけての間への下落へ進むことが考えられる。
60分足の一目均衡表では30日未明高値の後はやや右肩下がりの持ち合いで遅行スパンは悪化しつつある。先行スパンに対しては2日夜の上昇局面で突破できずに終わっている。106.50円超えへ戻せば揃って好転してくるため遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、2日朝安値割れからは新たな弱気サイクル入りとなるため遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は50ポイントを挟んだ持ち合いの範囲。60ポイント超えから上昇再開とし、40ポイント割れからは下げ再開を疑う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月2日朝安値105.90円を下値支持線、2日夜高値106.40円を上値抵抗線とする。
(2)105.90円割れ回避のうちは106.40円超えから上昇再開とみて30日未明高値106.68円、23日高値106.73円、さらに8月13日深夜高値106.95円等を順次試す可能性ありとみるが、新たな材料なければ107円超えは時期尚早とみる。
(3)105.90円割れからは30日未明高値からの下落が二段目に入るのでまず105.50円前後試しを想定する。105.50円台では買い戻しも入りやすいとみるが、売り材料がついて105.50円をスルーで下げる場合は105.00円試しまで下値目途を引き下げる。
【当面の主な予定】
9/3(火)
10:30 (豪) 4-6月期 経常収支 (前期 -29億豪ドル、予想 14億豪ドル)
10:30 (豪) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.4%、予想 0.2%)
13:30 (豪) 豪中銀 政策金利発表 (現行 1.00%、予想 1.00%)
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 -0.6%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 0.7%、予想 0.2%)
18:30 (南) 4-6月期 GDP 前期比年率 (前期 -3.2%、予想 2.4%)
18:30 (南) 4-6月期 GDP 前年同期比 (前期 0.0%、予想 0.8%)
22:45 (米) 8月 製造業PMI改定値 (速報 49.9、予想 50.0)
23:00 (米) 8月 ISM製造業景況指数 (7月 51.2、予想 51.1)
23:00 (米) 7月 建設支出 前月比 (6月 -1.3%、予想 0.3%)
9/4(水)
米議会諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」公聴会
06:00 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、講演
09:50 (日) 黒田東彦日銀総裁、発言
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前期比 (前期 0.4%、予想 0.6%)
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前年同期比 (前期 1.8%、予想 1.5%)
10:45 (中) 8月 財新サービス業PMI (7月 51.6、予想 51.8)
16:55 (独) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 54.4、予想 54.4)
17:00 (欧) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 53.4、予想 53.4)
17:30 (英) 8月 サービス業PMI (7月 51.4、予想 51.5)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前月比 (6月 1.1%)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 2.6%)
21:30 (米) 7月 貿易収支 (6月 -552億ドル、予想 -553億ドル)
22:25 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
23:00 (加) カナダ中銀、政策金利発表 (現行 1.75%、予想 1.75%)
25:30 (米) ボウマンFRB理事、ブラード・セントルイス連銀総裁、挨拶
26:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
28:15 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
30:30 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、挨拶
オーダー/ポジション状況
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ドル円、良好な中国経済指標を受けて一時上昇するも戻りは鈍い。米中交渉難航報道が重石に(9/3朝)
2日の外国為替市場でドル円は下落後に反発。
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