ドル円週報 ドル下値リスク軽減、逆に上値トライもあるか(9月第1週)

先週のドル/円は、なかなかの大相場。週間を通しての価格変動は2円を超え、今年3番目の大変動を記録していた。

ドル円週報 ドル下値リスク軽減、逆に上値トライもあるか(9月第1週)

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円は、なかなかの大相場。週間を通しての価格変動は2円を超え、今年3番目の大変動を記録していた。


前週末の土曜日、韓国が「日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄」を正式決定した翌日に北朝鮮が日米韓を挑発するかのように、再び「弾道ミサイル2発を発射」。また、フランスでG7首脳会談が開催されるなか、別途実施された日米首脳会談において「貿易問題が大筋合意した」ことが明らかになるなか、週明けの為替市場は寄り付いた。

早朝、時間外取引でドル/円はいきなりの105円割れ。正式な寄り付きも104.90円レベルと104円で取引が始まったのちも下げ止まらず、そのまま週間安値である104.40円台まで下落。ドルは年初来安値104.10円に迫る展開となった。
しかし、その後はドルが急速に買い進まれると、105円台どころか106円台も回復し、週末には106.68円の週間高値を記録。週末NYも、そのままドルは高値圏をキープし、106.25-30円で取引を終え、越週している。なお、そのほか週初に「トルコリラが対円などで一時的に急落」、「NZドルが対ドルで4年ぶり安値を更新」−−など為替市場全般でトピックの多い一週間だった。

一方、週間を通した材料は、「日米貿易協議」と「米中貿易問題」について。
前者については、予定が順延した日米貿易交渉閣僚級協議で「大きな進展があった」(茂木再生相)とされるなか、そののちフランスで日米首脳会談が実施され「日米貿易交渉が大枠で合意」、9月の署名を目指す意向が示され、ポジティブサプライズに。また、それに続けてトランプ米大統領が「日本の自動車への関税、現時点で検討していない」と発言、麻生財務相による「日米首脳会談で為替の話はでていない」とのコメントも、市場の懸念を後退させていた。
対して後者は、トランプ氏が「発動済み対中関税を30%に引き上げる」と正式発表したことが当初は嫌気されたものの、中国の劉副首相が「貿易戦争のエスカレートに断固反対」と発言したことに続き、トランプ氏による「中国から通商協議の再開望むとの連絡があった」とのコメントが関係改善期待を誘っていたようだ。

そのほか単発モノとしては、事前に報じられていたものの、実施された仏G7サミットにおいて本当に「首脳宣言」の発表が見送られたことが、改めて思惑を呼ぶ形に。また、トランプ氏が引き続き「米金融当局、あまりにも長期に判断を誤り続けた」などと発言、FRBにプレッシャーをかけたことが話題となっていたほか、当初の日韓対立の様相がやや改変され、「米韓対立懸念」となりつつあることも、マーケットで新たな波乱要因として意識されている。

<< 今週の見通し >>

先週、週明け早々にドルは104円台まで急落。結局、年初来安値104.10円にはとどかない104.46円で下げ止まったものの、当初はいったいどこまで下がるのだろう、と「フラッシュクラッシュ」の再燃も一部で懸念されていた。ただ、その後のドル急反発で下値リスクはだいぶ軽減された感があり、現状の相場観はニュートラルもしくは若干のドル強気に。やや米中関係の改善期待へバイアスが掛かり過ぎている気もするが、2週連続のドル高値106.70円前後や107円を超えれば、さらなるドルの戻りが期待できそうだ。

材料的に見た場合、「北朝鮮情勢」や「イラン情勢」のほか「米貿易問題」、「米金融政策」などが依然として注視されている。それらすべてが要注意で、たとえば「米貿易問題」については日米が一応の決着をみたことで小休止となったものの、今度は米欧によるバチバチとした対立が表面化してきた。また、先でも指摘した「米韓対立懸念」が新たに浮上してきたほか、「米中問題」がこれまでの貿易を中心とした、ある種単純な構図から「香港」や「台湾」、「南シナ海」問題などを含めた複雑な図式になりつつあることも気掛かりだ。

テクニカルに見た場合、先週初めに104円台へと突入したようなドルの下値リスクは払拭されたものの、ドルの頭も重い。実際、2週続けて106.70円前後でドルは上げ止まっている。今週も、まずは同レベルをめぐる攻防に注目だ。
ただ、107円前後が強い抵抗と目されるだけでなく、8月高値109.32円を起点とした下げ幅のフィボナッチを参考にすると、半値戻しは106.85-90円、61.8%戻しは107.45-50円となる。イケイケドンドンでドル高が進展する展開は見込みにくいかもしれない。

一方、材料的に見た場合、8月のISM製造業景況指数や同雇用統計といった重要な米経済指標が週間を通して発表される予定となっている。名実ともに9月入りし、次回FOMCの動静が注目されているだけに、指標内容をめぐって一喜一憂する展開も否定出来ないだろう。また、米地区連銀総裁による講演など発言機会が多いことも、若干気掛かりだ。
そのほか、引き続き「米中関係」に関するニュースには要注意。貿易協議の行方などもさることながら、11-12日に香港で予定されている一帯一路サミットをめぐる動きなどにも注意を払いたい。

そんな今週のドル/円予想レンジは、105.00-107.50円。ドル高・円安については、2週にわたってドルの戻りを阻んだ106.70円レベルの攻防にまずは注目。上抜ければ107円や107円半ばなどがターゲットに。
対するドル安・円高方向は、105.60円レベルが短期的なサポートとして寄与している感を否めない。ただ、割り込んでも底堅そうで、104円台は若干遠いイメージか。

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