【概況】
8月1日高値109.31円から8月12日安値105.04円まで下落した後は13日深夜に106.95円まで戻したものの107円に届かず、16日からは106円台での推移に止まっている。8月19日と20日に106.69円の同値を付けてから21日午前に106.16円まで下げたが106円割れには至らず、その後は凡そ40銭幅でほぼ横ばいとなっている。
22日未明のFOMC議事録要旨公開では決め手に欠いたために動けず、23日の米経済指標も大きなサプライズは無く、23日夜に行われるジャクソンホール会合でのパウエル米連銀議長講演待ちの状況に入っている。講演直前までは多少の揺さぶり的な動きもあるかもしれないが、新たな突発的な材料が出てこなければこのまま膠着状態を続け、講演内容に対する反応で上下いずれかへ大きく動く、ということになるのだろう。持ち合いが長引いたため、膠着状態による相場のストレスも相当溜まってきているので、動き出せばストレス解放としてかなり大きな動きになるのではないかと思われる。
8月22日の株式市場も様子見で、NYダウは前日比49.51ドル高だったがナスダック総合指数は28.82ポイント安とまちまち。米10年債利回りは前日比0.03%上昇の1.62%としたが、歴史的低水準にとどまった状況でやや戻している程度。
8月22日夜の米経済指標はまちまち。米労働省が発表した週間新規失業保険申請は季節調整済で20万9000件となり前週比1万2000件減少、市場予想の21万6000件を下回った。英マークイットが発表した8月の米製造業PMIは49.9となり2009年9月以来10年ぶりに50を下回る悪さだったが、米コンファレンス・ボードが発表した7月の景気先行指数は112.2となり前月比0.5%上昇、 市場予想の0.2%上昇を上回った。
米連銀当局者関連では、カンザスシティー連銀のジョージ総裁が通信社インタビューに対して「経済の見通しが一段と悪化しない限り金融緩和するときではない」と述べて追加利下げに否定的な姿勢を強調した。同総裁はFOMCの投票権を持ち、前回会合ではボストン連銀のローゼングレン総裁とともに利下げに反対した。
米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁(投票権無し)もTVインタビューに答えて「概ね中立金利の水準にいるのでもう少しそこにとどまり、事態がどう推移するのか見極めるべきだ」と述べて追加利下げに否定的な姿勢を示した。市場はこれら発言には特に反応していない。
【パウエル議長のスタンスは前回会合から変化したか】
1月末のFOMCで米連銀は当面の追加利上げを棚上げ、保有資産縮小計画早期切り上げを示唆した。
3月のFOMCでは年内利上げ回数予想の中央値をゼロに引き下げ、保有資産の縮小を9月に停止するとした。
4月のFOMCは現状維持だった。
6月のFOMCでは、メンバーの利上げ1回予想が1名、現状維持が8名、利下げ1回予想が1名、利下げ2回予想が7名だった。
7月末の前回FOMCでは0.25%利下げが決定されたが、中間的な調整と位置づけ、利下げサイクル入りを否定した。
次回のFOMCは9月17日から18日に開催される。
8月22日未明に公開された前回FOMC議事録要旨では、0.5%の利下げを主張したメンバーが2人いたことが注目されたが、全般的にはあくまでも調整的な利下げという姿勢だった。これについては当日の議長会見でも説明された通りであり、特段のサプライズはなく、23日の議長講演への期待も失望も盛り上がらなかったため市場の反応は限定的だった。
問題は前回会合後の情勢変化だ。FOMC直後に米国は中国制裁関税第4弾発動を宣言し、為替操作国に認定して米中対立は深刻化した。現時点では9月の協議再開についてはまだ日程も決まっていない。さらに各国の追従利下げにより世界的な金融緩和が進み始めた。米トランプ大統領による執拗な大幅利下げ要求は続き、中国や欧州の経済指標悪化が顕著となってきた。米連銀が先行き不透明感に対する予防的な利下げとした前回判断の背景と比較して、予防すべき状況の悪化は顕著と言える。このため市場は米連銀が追加利下げをせざるを得なくなっているとみている。
23日夜のパウエル議長講演で利下げ姿勢がはっきりとみられれば、市場は利下げ継続期待をさらに拡大させてドル安円高へ進みやすくなり、各国が追従して追加利下げへ進みやすくなればクロス円全般での円高感も強まると思われる。逆に現状維持で様子見の姿勢が強調されればドル円も巻き返し的上昇へ進みやすくなる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月12日夜安値から3日目となる8月15日安値でサイクルボトムをつけてジリ高推移してきたが、19日夜と20日午前に106.69円の同値をつけてからやや失速したため、21日朝時点では19日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期を20日夜から22日にかけての間としたが、21日早朝安値106.16円から戻して19日高値に迫ったために22日朝時点では21日早朝安値を直近のサイクルボトムとした新たな強気サイクル入りとして22日夜から26日夜にかけての間への上昇を想定した。ただし21日早朝安値割れからは底割れによる弱気サイクル入りとして24日早朝から28日朝にかけての間への下落を想定するとした。22日から23日朝まではほぼ横ばいのため、引き続き21日早朝安値割れ回避の内は上昇しやすく、21日早朝安値割れからは弱気サイクル入りによる一段安開始と考えるが、その決着は議長講演反応からと思われる。
60分足の一目均衡表では106円台での持合いが続いているため、遅行スパン及び先行スパンが実線と小レンジで交錯しているために方向感に欠ける。議長講演から107円超えへ進む一段高入りからは遅行スパン好転中の高値試し優先とし、議長講演から弱気反応となって21日早朝安値を割り込むところからは遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は持ち合いのため50ポイントを挟んで指数も持ち合い的な動きに止まっている。議長講演から強気反応なら70ポイント超えへ、弱気反応なら30ポイント割れへと反応してゆくと思う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月21日早朝安値106.16円を下値支持線、8月19日夜高値106.69円を上値抵抗線とする。
(2)106.16円以上での推移中は一段高余地ありとし、19日夜高値超えの場合は107円前後試しを想定する。議長講演前では107円前後で戻り売りにつかまりやすいとみるが、議長講演から強気反応の場合は108円を目指す上昇を想定する。また107円以上での推移なら週明けも続伸する可能性がある。
(3)106.16円割れからは下げ再開とみるが、議長講演前段階では106円割れは買い戻されやすいとみる。議長講演から下落の場合は105円試しへ向かうと予想。また106円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(4)8月5日以降は106円を中心に前後およそ1円幅の持ち合いで3週目に入っているが、議長講演から持ち合い上放れの場合は持ち合い幅2円を加算して109円に迫る上昇の流れを想定し、下放れの場合は2円を減算して103円前後を目指す下落の流れを想定する。
【当面の主な予定】
8/23(金)
22:00 (メ) 4-6月期 GDP確定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.0%)
22:00 (メ) 4-6月期 GDP確定値 前年同期比 (速報 -0.7%、予想 -0.8%)
23:00 (米) 7月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (6月 64.6万件、予想 64.9万件)
23:00 (米) 7月 新築住宅販売件数 前月比 (6月 7.0%、予想 -0.2%)
23:00 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、ジャクソンホール講演
オーダー/ポジション状況
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