ドル円見通し 持ち合いで12営業日を経過、議事録、議長講演待機中(8/21)

パウエル米連銀議長の講演を聞かないことには市場も次の方向性を先取りして走れない膠着状況にある。

ドル円見通し 持ち合いで12営業日を経過、議事録、議長講演待機中(8/21)

【概況】

8月1日高値109.31円から8月12日安値105.04円まで下落した後は13日深夜に106.95円まで戻したものの107円に届かず、16日からは106円台での推移に止まっている。8月5日からの12日間で見れば106円を中心に前後凡そ1円幅での持合いであり、8月15日夜からのジリ高でも19日夜高値と20日午前高値が106.69円の同値止まりで、その後はジリ安に転じている。
8月22日未明にFOMC議事録公開、23日夜にジャクソンホール会合でのパウエル米連銀議長講演が控えており、特に議長講演での金融政策姿勢如何により上下へ大きく動くであろうことを踏まえれば、現状は重要イベント前の様子見で動き難いところだ。

8月20日の株式市場では8月15日から3連騰してきたNYダウが反落、上海総合株価指数も小反落、欧州株はイタリアの首相辞任騒動でほぼ全面安となった。米10年債利回りは8月15日から下げ渋っていたが20日は前日比0.05%低下の1.56%。総じて週末から上昇していたものは下げ、下落していたものは買い戻されてポジション調整的な動きとなった印象だ。
イタリアのコンテ首相は20日、連立政権を組む「同盟」から内閣不信任案が提出されたことを受けて辞任、連立政権は1年2ヶ月で崩壊した。今秋には総選挙が実施される見通しで政局不安が続く。またEUはジョンソン英首相が求めるEU離脱協定案の再交渉に応じない姿勢を示したため「合意無き離脱」への懸念が強まった。ただこれらは想定されていたもので市場にサプライズ感はなく、為替市場では英ポンドやユーロは対ドルでいったん下落してから反騰している。

【持ち合い放れ待ち】

パウエル米連銀議長の講演を聞かないことには市場も次の方向性を先取りして走れない膠着状況にある。まず22日未明のFOMC議事録公開があるが、7月末のFOMCでは利下げを決定したもののあくまでもこれまで利上げしてきた流れに対する調整的な利下げであり、米連銀が利下げサイクルに入ったわけではないとされた。その前の6月会合では利上げ支持が1名、現状維持が8名、1回利下げが1名、2回利下げが7名とFOMCメンバーのスタンスが割れていた。米中対立の深刻化や株安、世界的な景気減速感の強まり、トランプ大統領による執拗な米連銀批判と利下げ要求が7月にひとまず利下げをする決断を下させたと言える。

22日未明のFOMC議事録ではあくまでも調整的な利下げという姿勢が再確認される内容と思われるが、追加利下げへの前向き姿勢が見えればドル安円高に、追加利下げへ消極的な姿勢ならドル高円安へ動きやすいだろう。しかしその後の状況変化もあるので、議事録だけでは方向性を決められない。

前回FOMC直後にトランプ大統領は利下げが小幅過ぎるとして継続的な利下げを要求、対中国制裁関税第4弾の発動に踏み切り先行き不安を煽った。最近では量的緩和再開も要求しており批判はエスカレートしている。NYダウも8月5日に767ドル安、14日に800ドル安と1日の下げ幅としては年初来最大の下落を二度演じた。

米連銀の10年振り利下げに触発されて世界的な緩和傾向も拡大した。7月には南ア、韓国、インドネシア、トルコ、8月にはタイ、インド、ニュージーランド、フィリピン、メキシコも利下げした。9月にはECBの利下げも予想されており、7月以降に利下げした各国の追加利下げ姿勢も強まっている。こうした状況を踏まえれば、パウエル議長講演で議事録以上により積極的な利下げ姿勢が示される可能性があり、その場合はドル安円高が加速する可能性があり、市場の期待を裏切るような消極的な姿勢ならドル高円安へいったん急旋回する可能性もある。
議長講演までは106円前後1円幅のレンジ内に留まると仮定し、議長講演から上放れならレンジ幅の倍返しで109円を目指し、下放れならレンジもう一つ分の下げとして103円前後を目指す流れへ進む可能性も考えられる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円60分足

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月12日夜安値から3日目となる8月15日安値でサイクルボトムをつけてジリ高推移してきたが、19日夜と20日午前に106.69円の同値をつけてからやや失速したため、19日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りと仮定する。ボトム形成期は20日夜から22日夜にかけての間と想定されるので、議事録公開前後から下落反応なら22日夜にかけての下落継続とし、公開前後から反騰入りなら新たな強気サイクル入りとする。ただしいずれの場合も23日夜の議長講演で流れが変わる可能性があると注意する。

60分足の一目均衡表では20日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落している。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、両スパン揃って好転するところからは強気サイクル入りの可能性を踏まえて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は19日夜と20日午前の同値高値形成時に指数のピークが切り下がる弱気逆行となって30ポイント台序盤へ低下したが、21日午前は50ポイント近辺まで戻している。50ポイント台を維持し始める場合は上昇再開感が強まるが、超えても維持できない場合及び40ポイント割れするところからは下げ再開とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。

(1)当初、8月21日早朝安値106.16円を下値支持線、106.55円を上値抵抗線とみる。
(2)106.55円以下での推移中は一段安警戒とし、106.16円割れからは105.50円前後への下落を想定する。106.50円以下は反騰注意だが、106円を下回っての推移中は22日の日中も安値を試しやすいとみる。
(3)106.55円超えを弱気転換注意とし、19日高値106.69円超えからは新たな強気サイクル入りとして107.00円前後試しを想定する。議事録公開を強気して107円を超える場合は107.50円まで上値目処を引き上げる。議長講演も控えているので107円以上は反落警戒圏とみるが、106.70円以上での推移なら22日の日中も高値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

8/21(水)
日米貿易交渉の閣僚協議(22日まで、ワシントン)
23:00 (米) 7月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (6月 527万件、予想 539万件)
23:00 (米) 7月 中古住宅販売件数 前月比 (6月 -1.7%、予想 2.5%)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

8/22(木)
カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(24日まで、ジャクソンホール)
インドネシア中銀、政策金利発表
13:30 (日) 6月 全産業活動指数 前月比 (5月 0.3%、予想 -0.8%)
16:30 (独) 8月 製造業PMI (7月 43.2、予想 43.0)
16:30 (独) 8月 サービス業PMI (7月 54.5、予想 54.0)

17:00 (欧) 8月 製造業PMI (7月 46.5、予想 46.2)
17:00 (欧) 8月 サービス業PMI (7月 53.2、予想 53.0)
20:30 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.0万件、予想 21.8万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 172.6万人)
22:45 (米) 8月 製造業PMI (7月 50.4、予想 50.5)
22:45 (米) 8月 サービス業PMI (7月 53.0、予想 52.8)
22:45 (米) 8月 総合PMI (7月 52.6)
23:00 (米) 7月 景気先行指数 前月比 (6月 -0.3%、予想 0.2%)
23:00 (欧) 8月 消費者信頼感 (7月 -6.6、予想 -7.0)

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