ドル円見通し 米中対立深刻化による金融市場全般の動揺=円高圧力続く(8/8)

7日深夜には105.49円まで下げてこの間の安値を更新している。

ドル円見通し 米中対立深刻化による金融市場全般の動揺=円高圧力続く(8/8)

【概況】

米国による対中国制裁関税第4弾発動宣言からドル円は急落に転じた。8月1日午前高値109.31円から8月6日朝安値105.52円までの下げ幅は3.79円。8月6日朝安値から午後高値107.08円まで1.56円幅の反騰も入ったが107円台は維持できずに失速し、7日深夜には105.49円まで下げてこの間の安値を更新している。

米トランプ大統領による中国への制裁関税第4弾発動宣言から金融市場全般が動揺している。その後も米国が中国を為替操作国に指定したことや中国側が米国産農産物の輸入停止姿勢を示したこと、人民元の急落が先行き不透明感を助長しており、景気後退懸念、米連銀による追加利下げ観測と安全資産選好へ動いている。それによりドル円は6月25日安値を割り込んで、4月24日高値からの下落波動は8月1日高値で戻りを一巡させて二段下げ型に発展した。106円割れの水準は1月3日の104.82円及び2018年3月26日安値104.63円以来の低水準であり、106円割れからの反発も8月6日昼過ぎへの一時的な物にとどまっている。上値が重いため、104円台中後半までで下支えきれるのかどうかも疑わしくなっており、100円の大台を試す可能性も取り沙汰され始めている。

【NZ中銀も大胆な利下げ、世界的緩和姿勢拡大】

株式市場の動揺も続いている。NYダウは7月31日から8月5日にかけて5日間続落し、5日には前日比767ドル安と年初来最大の下落幅となった。6日は前日比311ドル高と反騰したが、7日は一時589ドル安の反落となって7月16日の史上最高値以降の安値を更新した。終盤に反発し22.45ドル安で終了したが先行き不安を背景とした波乱状況が続いている。
米10年債利回りは前日比0.03%上昇の1.73%で終了したが、一時は1.595%をつけて2016年10月以来の低水準となった。安全資産として米長期債とともにゴールドが買われており、8月7日には1500ドル台に乗せて2013年4月以来の高値水準となっている。

世界的な金融緩和の波もドル円他クロス円全般における円高要因だ。8月7日にはNZ中銀が市場予想の0.25%を上回る0.50%の利下げを決定したがインドやタイも利下げした。豪中銀は6日に金利を据え置いたがマイナス金利へ向かう可能性も示唆されている。またECBもマイナス金利の深堀姿勢を示している。米連銀の金融政策が引き締めから緩和へ転換し始めたことと、米中対立の悪影響への予防的金融政策判断が世界的な金融緩和への回帰を招いている。
トランプ米大統領は8月1日未明のFOMCによる0.25%利下げ直後に利下げ幅が小幅過ぎると米連銀を批判し、その後も連銀批判を続けており、7日には「大幅で速やかな利下げを行うべきだ」「FRBは尊大すぎて金融引き締めを急激かつ大幅に進めすぎた過ちを認めない」と述べている。
シカゴ連銀のエバンズ総裁は7日にインタビューに答えて「逆風が強まった」「さまざまなことが逆風をさらにもたらしており追加金融緩和が妥当だろう」と述べている。6日にはセントルイス連銀のブラード総裁等が早期追加緩和への慎重姿勢を示していたが、市場は早期の追加利下げ及び段階的な利下げ継続を催促している。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは8月1日午前高値をサイクルトップとして下落してきたが、6日午前の反騰で強気転換目安とした5日夕高値を超えたために7日朝時点では6日朝安値を直近のサイクルボトムとした。また新たな底割れ回避のうちは7日の日中から8日にかけての間への上昇余地ありとしたが、すでに6日昼過ぎ高値でサイクルトップを付けた可能性があるので106.50円以下での推移中は下向きとし、106円割れからは弱気サイクル入りの可能性を優先するとした。
7日深夜の下落で6日朝安値を割り込んだため、6日昼高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。7日深夜安値の後はやや戻しているのでダブルボトムを付ける可能性もあるが6日昼高値を上抜けないうちは一段安余地ありとし、7日深夜安値割れからは次の底形成期となる9日午前から13日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では6日昼への反騰で遅行スパンが好転したが先行スパン突破には至らず、7日の反落で遅行スパンは再び悪化した。8日未明の小反発でも両スパン揃っての悪化が続いているため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。両スパンそろって好転するところからは強気転換注意とするが、6日昼高値を上抜けないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後の悪化から下げ再開へ進みやすいとみる。

60分足の相対力指数は7日夜の下落で30ポイント割れまで低下してから戻している。6日朝安値形成時から指数のボトムは切り上がっているが、6日昼高値時から指数のピークも切り下がっているので安値圏での往来中として40ポイント割れから下げ再開とみる。強気転換には65ポイントを超える上昇が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月7日深夜安値105.49円を下値支持線、106.50円を抵抗線とする。
(2)106.50円以下での推移中は一段安警戒とし、106円割れからは下げ再開の可能性を優先して7日深夜安値試しとし、安値更新からは2018年3月26日安値104.63円試しを想定する。104円台中盤では買い戻しも入りやすいとみるが、下落が加速する場合は104円割れもあり得ると注意する。
(3)106.50円超えからは上昇再開の可能性ありとして6日昼過ぎ高値107.08円試しとする。高値更新に至らずに106円を割り込むところからは下げ再開とするが、6日昼高値超えの場合はダブル底形成からの上昇として107.50円前後への反騰入りと考える。

【当面の主な予定】

8/8(木)
未 定 (中) 7月 貿易収支・米ドル (6月 509.8億ドル、予想 400.0億ドル)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー・現状判断DI (6月 44.0、予想 43.6)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー・先行判断DI (6月 45.8、予想 45.4)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件、予想 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 169.9万人)
23:00 (米) 6月 卸売在庫 前月比 (5月 0.4%、予想 0.2%)
23:00 (米) 6月 卸売売上高 前月比 (5月 0.1%、予想 0.2%)

8/9(金)
休場 シンガポール、南アフリカ
08:30 (豪) ロウ豪中銀総裁、議会証言
08:50 (日) 7月 マネーストックM2 前年同月比 (6月 2.3%、予想 2.3%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP速報値 前期比 (前期 0.6%、予想 0.1%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP速報値 年率換算 (前期 2.2%、予想 0.6%)
10:30 (中) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 2.7%、予想 2.7%)
10:30 (中) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 0.0%、予想 0.0%)
10:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、四半期金融政策報告
15:00 (独) 6月 貿易収支 (5月 206億ユーロ、予想 198億ユーロ)
15:00 (独) 6月 経常収支 (5月 165億ユーロ、予想 214億ユーロ)

17:30 (英) 6月 月次GDP 前月比 (5月 0.3%、予想 0.1%)
17:30 (英) 4-6月期 GDP速報値 前期比 (前期 0.5%、予想 0.0%)
17:30 (英) 4-6月期 GDP速報値 前年同期比 (前期 1.8%、予想 1.4%)
17:30 (英) 6月 鉱工業生産指数 前月比 (5月 1.4%、予想 -0.2%)
17:30 (英) 6月 鉱工業生産指数 前年同月比 (5月 0.9%、予想 -0.3%)
17:30 (英) 6月 製造業生産指数 前月比 (5月 1.4%、予想 -0.2%)
17:30 (英) 6月 商品貿易収支 (5月 -115.24億ポンド、予想 -118.00億ポンド)
17:30 (英) 6月 貿易収支 (5月 -23.24億ポンド、予想 -26.00億ポンド)

21:30 (米) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 1.7%、予想 1.7%)
21:30 (米) 7月 生産者物価コア指数 前月比 (6月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 生産者物価コア指数 前年同月比 (6月 2.3%、予想 2.4%)

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