ドル円見通し  107円超えへ急反発するも一時的、米中貿易戦争激化懸念での円高基調は継続か(8/7)

両国関係改善への楽観論が相当程度に強まらない限りは制裁関税拡大による混乱懸念がさらに増してゆくこと、それを悲観した株安円高が進行しかねない状況も続きやすい

ドル円見通し  107円超えへ急反発するも一時的、米中貿易戦争激化懸念での円高基調は継続か(8/7)

【概況】

ドル円は8月1日午前高値109.31円から8月6日朝安値105.52円まで大幅下落してきたが、6日昼過ぎには107.08円まで急反発する場面があった。107円超えは一時的でその後は106.50円を挟んだ揉み合いに落ち着き、7日朝はややジリ安の推移となっている。
8月1日未明の米FOMC声明で0.25%の利下げが決定されたもののパウエル米連銀議長がその後の会見で「長期的な利下げ局面の始まりではない」と発言したために継続的な利下げ期待が後退したとしてドル円は8月1日午前高値で109.31円を付けて7月10日高値108.98円を超えた。しかしその直後にトランプ大統領が米連銀の小幅利下げを批判、さらに1日深夜には中国への制裁関税第4弾発動を宣言したことから情勢が一変して急落に転じた。

2日の米雇用統計も追加利下げ観測を緩める内容ではなかったことから週明けも続落、人民元相場が1ドル7元を超えて11年ぶりの元安ドル高水準になったこと、それに対して米国が中国を為替操作国と認定、中国が米国産農産物の輸入停止姿勢を示して両国の対立はさらにエスカレートしてきた。

6日午前のドル円反騰は早朝まで大幅続落していたダウ先物が8月1日からの大幅下落に対する修正的な買い戻しにより反騰したこと、中国人民銀行が基準値設定を1ドル7元以下に抑えたことで元安ドル高にブレーキがかかるのではないかとの期待が背景だったようだ。日経平均も序盤の大幅下落から400円以上戻したが、前日比では134.98円安でマイナス圏のまま終了し、上海総合株価指数も1.5%を超える下落のまま終了した。これらを見てドル円も急騰一巡後は106円台半ばまで押し返されたという印象だ。

8月6日のNYダウは311ドル高と上昇した。前日は767ドル安で1日の下げ幅としては年初来最大となったが、5日連続の下落で千ドル以上も下げたことに対する突っ込み警戒感からの買い戻しと思われる。6日の日足は陽線だが5日の大陰線の範囲にとどまっている。
米10年債利回りは5日に前週末比0.14%低下の1.71%へ低下して2016年10月以来2年10か月振りの低水準となったが、6日は1.70%へさらに低下している。株高の割には債券が売られずに利回りも戻せずに終わった印象だ。

【米中対立エスカレートと米連銀の追加利下げ観測は継続】

6日夜には米連銀や米政府高官の利下げ関連発言もいくつかあった。
6日夜に米セントルイス連銀のブラード総裁がWSJ紙のインタビューで利下げ効果を見定めるべきとして早期の追加引き下げに慎重な姿勢を示した。また米サンフランシスコ連銀のデイリー総裁も米中貿易摩擦による米経済への逆風が焦点だとした上で、あくまでも経済・金融情勢を見極めて追加利下げの是非を決めるべきとの姿勢を示した。両者ともやや慎重姿勢だが、米中対立の深刻化が解消されなければ英国の合意無きEU離脱問題も迫り、金融市場全般の不安感も拡大するため、米連銀が追加利下げへ進む口実も整うと思われる。

トランプ政権の利下げ要求も続いている。ナバロ米大統領補佐官(通商製造政策局長)はFOXニュースとのインタビューで、他国の金利水準に合わせるために年内に「少なくとも0.75〜1.00%の利下げを行う必要がある」と述べている。
米国は今のところ9月1日から中国への制裁関税第4弾を発動する予定だ。8月後半に両国関係改善への楽観論が相当程度に強まらない限りは制裁関税拡大による混乱懸念がさらに増してゆくこと、それを悲観した株安円高が進行しかねない状況も続きやすいと思われる。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

USD/JPY60分足/一目均衡表

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは8月1日の下落で7月30日夜安値を割り込んだため、8月2日朝時点からは1日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして8月3日夜から6日夜にかけての間への下落を想定してきた。6日朝時点ではまだ一段安余地ありとしたが、5日夕高値106.34円超えからはいったん強気サイクル入りとした。
6日午前の反騰で5日夕高値を超えたため、6日朝安値を直近のサイクルボトムとする。新たな底割れ回避のうちは7日の日中から8日にかけての間への上昇余地ありとするが、すでに6日昼過ぎ高値でサイクルトップを付けた可能性があるので、106.50円以下での推移中は下向きとし、106円割れからは弱気サイクル入りの可能性を優先する。6日朝安値割れからは新たな弱気サイクル入りにより次の安値形成期となる9日午前から13日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では6日昼への反騰で遅行スパンが好転したが、その後の反落により再び悪化しやすい位置にある。先行スパンへ潜り込んだが突破には至っていない。先行スパンを突破すれば上昇再開の可能性が高まるが、先行スパンから転落し、遅行スパンも悪化してくる場合は下げ再開を疑う。

60分足の相対力指数は6日昼への上昇で60ポイントを超えたが7日朝には50ポイントを割り込んできている。60ポイント超えへ戻せば上昇再開の可能性ありだが、40ポイント割れからは下げ再開を疑う。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。

(1)当初、106.00円を支持線、106.50円を抵抗線とする。
(2)106.50円以下での推移中は一段安警戒とし、106円割れからは6日朝安値105.52円試し、底割れからは2018年3月26日安値104.63円試しを想定する。104円台中盤では買い戻しも入りやすいとみるが、下落が加速する場合は104円割れもあり得ると注意する。
(3)106.50円超えからは上昇再開とみて6日昼過ぎ他姉107.08円試しとするが、107円台序盤では戻り売りにつかまりやすいとみる。

【当面の主な予定】

8/7(水)
11:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利  (現行 1.50%、予想 1.25%)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.3%、予想 -0.5%)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -3.7%、予想 -3.1%)
22:30 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、メディア向け朝食会を開催[シカゴ]
28:00 (米) 6月 消費者信用残高 前月比 (5月 170.9億ドル、予想 165.0億ドル)

8/8(木)
未 定 (中) 7月 貿易収支・米ドル (6月 509.8億ドル、予想 442.3億ドル)
08:50 (日) 6月 経常収支・季調前 (5月 1兆5948億円、予想 1兆1744億円)
08:50 (日) 6月 経常収支・季調済 (5月 1兆3057億円、予想 1兆7565億円)
08:50 (日) 6月 貿易収支・国際収支ベース (5月 -6509億円、予想 7080億円)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー・現状判断DI (6月 44.0、予想 43.3)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー・先行判断DI (6月 45.8、予想 45.2)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件、予想 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 169.9万人)
23:00 (米) 6月 卸売在庫 前月比 (5月 0.4%、予想 0.2%)

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