ドル円見通し 7月10日の議長議会証言前高値及び109円を超えずにいったん調整(7/31)

7月30日午前高値で108.94円をつけて7月10日高値108.98円にあと一歩と迫ったがその後が続かずに30日夜には108.44円まで下げた。

ドル円見通し 7月10日の議長議会証言前高値及び109円を超えずにいったん調整(7/31)

【概況】

7月30日午前高値で108.94円をつけて7月10日高値108.98円にあと一歩と迫ったがその後が続かずに30日夜には108.44円まで下げた。7月10日の米パウエル連銀議長による下院議会証言での利下げ積極姿勢をきっかけとしてドル円は7月10日高値から下落し、7月18日のNY連銀総裁によるゼロ金利政策への言及もあって19日朝に107.19円の安値をつけた。

しかしNY連銀総裁発言は政策論についての言及でありFOMCでの大幅利下げを示唆するものではないとされて19日から反騰入りし、25日の米耐久財受注好調から一段高、さらに26日の米4-6月期GDP速報も予想程は悪くなかったとして高値を切り上げて108.94円に到達するという流れであった。ここで新たな押し上げ材料が出てくれば109円乗せ、7月10日高値突破という可能性もあったかもしれないが、FOMCを目前に控えた29日、30日のトランプ大統領による大幅利下げ要請発言等も踏まえていったんは調整安に入ってFOMCを迎えるという状況に入っているようだ。

30日は欧米の主要株価指数がほぼ全面安となる中で株安によるリスクオフでの円高圧力も見られた。
米商務省が発表した6月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比1.4%上昇で前月から横ばいとなり、米連銀が目標としている2%を8カ月連続で下回った。個人消費支出は前月比0.3%増で予想と一致したが前月の0.5%増を下回った。個人所得は前月比0.4%増で予想と一致した。これらに対する市場反応は限定的だった。

米コンファレンス・ボードが発表した7月の消費者景気信頼感指数は135.7で前月の124.9から上昇し、市場予想の125.0を上回った。これは若干ドル高要因となった。

【明朝、FOMC声明発表でサプライズはあるか?】

7月29日にトランプ米大統領は「小幅な利下げは不十分だ」「FRBの利上げは時期が早過ぎで引き上げ過ぎた」と述べ、さらに保有資産圧縮による量的金融緩和の収拾策も「大きな過ちの一つだ」と批判したが、30日も「大幅利下げを望んでいる」と述べて前日に続いて小幅な利下げではなく大幅な利下げを要求した。

米連銀は政権から独立しているとはいえ、繰り返される利下げ要求は金融政策決定にも影響を及ぼす可能性もあるだろう。市場は0.25%の利下げを見込んでいるが、0.5%利下げならドル円にとっては弱気サプライズとなり、0.25%の利下げでも年内追加利下げや量的緩和再開へ向けた姿勢が強く示される場合は7月19日からの戻り一巡による下落期入りとなる可能性も考えられる。逆に利下げ見送りなら強気サプライズで109円突破から更に一段高へ進みかねず、利下げしてもその後は当分静観する姿勢が強調される場合もドル高円安基調をもう一歩継続しやすくなると思われる。

米連銀は、昨年末時点では10月から12月の株暴落を見ても利上げ姿勢を継続していた。それが利上げ棚上げ、利下げへの姿勢転換と様変わりしてきた。トランプ大統領の度重なる批判、利下げ要求も相当程度は影響を与えているのだろうと思われるが、株高が行き過ぎてヘタを打つと株暴落の引き金を自ら弾きかねないという不安感が、利上げサイクル入りを早まったこととする認識に変えているのだろうと思われる。

閣僚級の米中通商協議が30日から上海で再開された。2日間の日程であり3ヶ月ぶりの対面協議だか、今後の方向性がみえるかどうか注目される。トランプ米大統領は30日に、中国が来年秋の米大統領選でトランプ 氏が敗れることを期待して貿易協議を引き延ばそうとしていると批判し、「 私が(大統領選に)勝てば現在交渉中の内容よりもはるかに厳しいものになるか、もしくは合意なしとなるかだ」と述べている。

これは米中協議の早期妥結を中国側の大幅譲歩の元で勝ち取りたいという姿勢である一方、長期戦も視野に入れていることを示すものと思われる。大統領にとっては選挙で戦果を大きくアピールできる内容でなければ簡単には妥協しないのだろう。またその点を米連銀も認識しているのだろう。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

USD/JPY60分足一目均衡表

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月24日深夜安値を直近のサイクルボトムとし、24日高値を上抜いたところから強気サイクルに入った。今回の高値形成期は29日から31日にかけての間と想定されたが、30日午前高値からの反落で108.50円を割り込むところまで下げたため、30日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りと考える。

ボトム形成期は31日の日中から8月1日未明にかけての間と想定されるが、8月1日未明のFOMC後に下落してゆく場合はボトム形成の延長入りか、連続的な弱気サイクル入りにより週末、週明けまで安値試しを続ける可能性も考えられる。逆にFOMCから反騰入りして7月30日高値を超えれば新たな強気サイクル入りとして次の高値形成期となる8月2日午前から6日午前にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では30日夜の下落で遅行スパンが悪化、31日早朝には先行スパンからも転落している。このため遅行スパン悪化中(遅行スパンが実線を下回る)は安値試し優先とする。強気転換は両スパン揃って好転するところからとし、30日高値超えからは遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は7月26日未明高値から30日午前高値への高値切り上げに対して指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られる。このため50ポイント以下での推移中は下向きとし、FOMC反応次第では20ポイント台前半への下降もあり得ると注意する。上昇再開は60ポイント超えから続伸するところからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。

(1)当初、7月30日夜安値108.44円を下値支持線、30日深夜高値108.70円を上値抵抗線とみる。

(2)108.70円以下での推移中は108.44円割れからの一段安警戒とし、その場合は108.25円から108.00円にかけてのゾーンを試すとみる。FOMCから下落反応の場合は107.75円前後まで下値目処を引き下げる。また108.50円以下での推移が続く内は1日の日中も安値を試しやすいとみる。

(3)108.70円超えからは上昇再開の可能性ありとして30日高値108.94円試しを想定する。高値更新からは新たな強気サイクル入りとなるため109円台前半試しへ上値目処を引き上げるが、そのためにFOMCから強気反応する必要があると思う。また30日高値をいったん超えた後も108.70円以上での推移なら1日の日中も高値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

7/31(水)
10:00 (中) 7月 製造業PMI (6月 49.4、予想 49.6)
10:00 (NZ) 7月 NBNZ企業信頼感 (6月 -38.1)
10:30 (豪) 4-6月期 消費者物価 前期比 (前期 0.0%、予想 0.5%)
10:30 (豪) 4-6月期 消費者物価 前年同期比 (前期 1.3%、予想 1.5%)
14:00 (日) 6月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (前期 -8.7%、予想 -3.4%)
15:00 (独) 6月 小売売上高指数 前月比 (5月 -0.6%、予想 0.5%)
15:00 (独) 6月 小売売上高指数 前年同月比 (5月 4.0%、予想 0.0%)
16:55 (独) 7月 失業者数 前月比 (6月 -0.1万人、予想 0.2万人)
16:55 (独) 7月 失業率 (6月 5.0%、予想 5.0%)

18:00 (欧) 6月 失業率 (6月 7.5%、予想 7.5%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP速報値 前期比 (前期 0.4%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP速報値 前年同期比 (前期 1.2%、予想 1.0%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (6月 1.3%、予想 1.1%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (6月 1.1%、予想 1.0%)
21:15 (米) 7月 ADP 非農業部門民間就業者数 前月比 (6月 10.2万人、予想 15.0万人)
21:30 (米) 4-6月期 四半期雇用コスト指数 前期比 (前期 0.7%、予想 0.7%)
22:45 (米) 7月 シカゴ購買部協会景況指数 (6月 49.7、予想 50.6)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC) 政策金利発表 (現行 2.25-2.50%、予想 2.00-2.25%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

8/1(木)
休場 スイス
10:30 (豪) 4-6月期 輸入物価指数 前期比 (前期 -0.5%)
10:45 (中) 7月 財新製造業PMI (6月 49.4)
16:55 (独) 7月 製造業PMI改定値 (速報 43.1)
17:00 (欧) 7月 製造業PMI改定値 (速報 46.4)
17:30 (英) 7月 製造業PMI (6月 48.0、予想 48.0)
20:00 (英) イングランド銀行(BOE)金利発表 (現行 0.75%、予想 0.75%)
20:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 4350億ポンド、予想 4350億ポンド)
20:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨、四半期物価報告
20:30 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、発言
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.6万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 167.6万人)
22:45 (米) 7月 製造業PMI改定値 (速報 50.0)
23:00 (米) 7月 ISM製造業景況指数 (6月 51.7、予想 52.0)
23:00 (米) 6月 建設支出 前月比 (5月 -0.8%、予想 0.5%)

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