ドル円、ハト派寄りの議会証言を経て急反落。
海外時間の為替概況
10日の海外市場でドル円は急落。パウエルFRB議長が下院金融サービス委員会での議会証言において、「世界的な貿易摩擦のリスクや世界経済の減速懸念に対処するため、必要に応じて対処する」と述べたことや、6月の力強い米雇用統計の結果を踏まえて見通しを変えたか?との質問に対して「変えていない」と回答したことが材料視された格好。市場では「利下げ」への地ならしと受け止められ、「米大幅利下げ観測の再燃→米長期金利低下→ドル売り」の経路で、ドル安・円高圧力が強まりました。
また、その後発表されたFOMC議事要旨(6月開催分)にて、「多くの当局者が利下げの根拠が強まったと認識している」との内容が伝わったことも材料視され、NY時間終盤にかけては、一時108.35まで下げ幅を広げる場面も見られました。もっとも、一目均衡表転換線(108.26)を前に下げ渋ると、セントルイス連銀ブラード総裁による「現時点で50bpの利下げは行き過ぎ、緩やかな利下げが適切」との発言が支援材料となり、引けにかけてドル円は再び反発。結局、108.50近辺まで戻してのクローズとなっております。
一方、ユーロドル相場は急伸。パウエルFRB議長による「利下げ」への地ならしを受けて、「米長期金利低下→ドル売り」の流れが強まったことが背景。NY時間午後にかけて日通し高値1.1263まで急伸した後、1.1250近辺まで小反落してのクローズとなっております。尚、欧州委員会は昨日、ユーロ圏の2020年GDP見通しを1.4%(前回1.5%)に下方修正しましたが、相場への反応は限定的となりました。
ドル円のテクニカル分析
パウエルFRB議長によるハト派的な見解を受け、ドル円は、直近高値圏(109円手前)から急反落する展開となりました。しかし、主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、21日移動平均線、ボリンジャー・ミッドバンド、一目均衡表基準線など)を割り込むには至っておらず、「中立」→「下落」へのトレンド転換が発生したと考えるのは時期尚早でしょう。パウエルFRB議長は「利下げ」への地ならしを行いましたが、7月FOMCでの50bpの大幅利下げを示唆しているとは言い切れず、引き続き、米経済指標の結果を睨みながらの神経質な値動きが続くと予想されます。こうした意味で、本日・日本時間21:30に発表される米6月消費者物価指数の結果に注目が集まりそうです。
冴えない物価の伸びが示された場合、「大幅利下げ観測の高進→米長期金利低下→ドル売り」の流れが強まる可能性もあり、米長期金利の低下→ドル売りの波及に注意が必要でしょう。主要テクニカルポイントの下抜けに成功すれば、世界的な貿易戦争リスクや、世界経済を巡る先行き不透明感、英国情勢の不安定化、イタリア財政悪化問題、米独関係悪化懸念、イランを巡る地政学的リスク、日本とその他各国との金融政策格差の縮小(欧米をはじめ主要中銀がハト派化に方針転換する一方、副作用を警戒して日銀は次の一手に踏み込めない状況)といったファンダメンタルズ的な弱さも相まって、ドル円が再び下落トレンド入りするシナリオも想定されます。本日のアジア時間は、米経済指標待ちで方向感を見出しづらい時間帯が続きそうです。(予想レンジ:108.00ー109.00)
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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