ドル円見通し 日米安保条約破棄?報道が一段安のトリガーに(6/26)

0.5%の利下げ期待が強まっていた市場を失望させたためにドル高反応となり26日未明へのドル円反発のきっかけとなった。

ドル円見通し 日米安保条約破棄?報道が一段安のトリガーに(6/26)

【概況】

6月4日安値107.82円から6月19日までは1円弱の値幅に留まる持ち合いだったが、6月20日未明の米連銀FOMCによる年内利下げ姿勢をきっかけに持ち合いを下放れた。6月21日安値107.04円で107円割れをひとまず回避して21日深夜高値107.79円まで戻したもの勢い付かず、週明け24日は107.23円から107.53円までの膠着状態で、戻り高値は切り下がり気味だった。既に21日深夜高値を起点とした新たな下落期に入りやすい状況にあったが、ブルームバーグ通信による「トランプ大統領が日米安保条約破棄に言及」との報道から107円割れへ崩れた。深夜には107.40円まで戻す場面もあったが21日深夜高値から24日夜高値への高値切り下がりの範囲にとどまっている。

米ブルームバーグ通信は6月24日に「トランプ大統領が最近、日米安全保障条約を破棄することに言及した」と報じた。側近との私的な会話の中での事とされ、トランプ政権内での正式な議論ではないとしたが、トランプ大統領のこれまでの発言と行動を見ればフェイクではないのではないかとの懸念を市場にもたらした。
米連銀による早期利下げの可能性、米国とイランの対立・軍事的緊張感を背景に円高が進んできたわけだが、さらに107円割れへ一段安するために背中を押された印象だ。現実問題として日米安保条約が破棄されることは無いだろうが、トランプ大統領による「ペルシャ湾のタンカー運航は自国で守るべきだ」と発言する中でのリーク報道のため、中東情勢全般を踏まえてクロス円全般には心理的な円高要因となったようだ。

【米連銀の利下げ姿勢とイラン情勢が引き続き重石】

トランプ米大統領は6月24日にイランの最高指導者ハメネイ師等に対して米国の金融システムを通じた取引禁止などの制裁を科す大統領令に署名し、これに対してイランは外交による解決の道が閉ざされたと反発した。トランプ米大統領は25日にも「イランが米国の何かに攻撃を仕掛ければ強力かつ圧倒的な力に直面することになる」「圧倒的とは、地域によっては消滅を意味する」とツイートしている。

セントルイス連銀のブラード総裁がインタビューに答えて「次回会合で0.5%の利下げに動くことは大幅過ぎるだろう」と述べたことが伝わると、0.5%の利下げ期待が強まっていた市場を失望させたためにドル高反応となり26日未明へのドル円反発のきっかけとなった。その後のパウエル議長講演では「成長持続へ適切な行動を取る」と強調されたため早期に利下げ期待が持ち直した。ただトランプ大統領による批判が続いていることに対しては、「政治圧力に屈して政策を行ったことによる悪影響を見てきた」と述べてトランプ大統領の批判姿勢をけん制しているため、ブラード総裁発言とともに早期の大幅利下げ期待はややトーンダウンした印象もある。

6月25日深夜に発表された米経済指標は弱く、米連銀の利下げ判断に寄与する材料と受け止められた。米商務省が発表した5月の新築戸建て住宅販売件数は季節調整済み年率換算で前月比7.8%減の62万6000戸となり、2か月連続のマイナスで市場予想の68万戸を下回った。前年同月比は3.7%減で販売価格中央値も前月比8.1%低下した。米調査会社コンファレンス・ボードが発表した6月の消費者景気信頼感指数は121.5となり前月の131.3から低下して市場予想の131.1を下回り、2017年9月以来の低水準だった。

【米中首脳会談も迫る】

トランプ大統領は中国の習近平国家主席と6月29日に首脳会談を持つ。米中首脳会談は昨年12月以来となる。これに先立ってライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とムニューシン米財務長官は中国の劉鶴副首相と6月24日に電話協議を行った模様。
トランプ大統領は大阪で習主席の他、安倍首相、ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領など少なくとも8カ国の首脳と会談する。時間的にも今回の米中首脳会談に大きな成果を期待することはできないが、協議継続による関税拡大の休戦が実現すれば、市場もやや安堵するかもしれない。しかし協議の先行き成果への期待が乏しいものになれば米国が中国製品すべてに対する制裁関税拡大へ進み、市場も悲観に陥ることとなりかねない。ポンペオ米国務長官が「トランプ大統領がG20サミットで香港の大規模デモへの対応を議題にする見通し」と述べたことも気掛かりだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月14日夕安値から5日目となる21日昼安値で直近のサイクルボトムを付けていったん戻したが、24日朝時点ではすでに21日深夜高値でサイクルトップを付けて新たな弱気サイクル入りしている可能性があるとした。24日は小レンジの膠着状態にとどまったために25日朝時点では弱気サイクル入りとして次の安値形成期となる26日の日中から28日にかけての間への下落を想定した。また21日深夜高値までの戻り幅の倍返しならV計算値106.35円、6月17日から21日への下げ幅と同値幅のN計算値106.05円が107円割れからの一段安における下値目処となりやすいとした。
25日昼過ぎの安値からはやや戻したが、21日深夜高値には届かずに107円台序盤にとどまっているためまだ一段安余地ありとみる。107.50円超えないしは直前安値から0.50円以上の反発となる場合は強気転換注意とするが、強気転換には21日深夜高値を上抜く必要がある。

60分足の一目均衡表では25日の一段安により遅行スパンが悪化し、先行スパンからの転落状態も続いている。26日未明への反発により遅行スパンは好転しやすい位置にあり、先行スパンも上抜きやすいところにある。このため両スパン好転の場合は29日深夜高値試しとし、高値更新からは遅行スパン好転中の高値試しへ進むとみるが、両スパンそろって好転できないか、一時的に好転しても再び悪化するところからは下げ再開として遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は25日の一段安で20ポイントまで下げてから戻しているが、21日から25日への安値更新に対する指数のボトムアップは見られないため、40ポイント割れからは下げ再開を警戒する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.00円を下値支持線、6月26日未明高値107.40円を上値抵抗線とみておく。
(2)107円割れからは下げ再開とみて25日安値106.75円試しとし、安値更新からは106円台序盤への下落を想定する。106.20円以下は反発注意とするが、107円を下回っての推移中は27日の日中も安値を試す可能性が継続するとみる。
(3)107.40円超えからは6月21日深夜高値107.73円試しとする。21日深夜高値を上抜けないうちはその後の107.20円割れから下げ再開、一段安入りとみるが、107.73円を超える場合は強気サイクル入りとして108円台序盤を目指す上昇と想定する。また、107.50円以上での推移なら27日の日中も高値試しを続けやすくなるとみる。

【当面の主な予定】

6/26(水)
米民主党の大統領選候補者討論会(フロリダ州マイアミ、27日まで)
11:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利 (現行 1.50%、予想 1.50%)
15:00 (独) 7月 GFK消費者信頼感 (6月 10.1、予想 10.0)
18:15 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、議会証言
21:30 (米) 5月 耐久財受注 前月比 (4月 -2.1%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 5月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (4月 0.0%、予想 0.1%)

6/27(木)
08:50 (日) 5月 小売業販売額 前年同月比 (4月 0.5%、予想 1.2%)
10:00 (NZ) 6月 NBNZ企業信頼感 (5月 -32.0)
10:30 (日) 若田部昌澄日銀副総裁が金融経済懇談会に出席・会見
18:00 (欧) 6月 経済信頼感 (5月 105.1、予想 104.7)
18:00 (欧) 6月 消費者信頼感 確定値 (速報 −7.2、予想 7.2) 

21:00 (独) 6月 消費者物価指数速報値 前月比 (5月 0.2%、予想 0.2%)
21:00 (独) 6月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (5月 1.4%、予想 1.4%)
21:30 (米) 1-3月期GDP確定値 前期比年率 (前回 3.1%、予想 3.2%)
21:30 (米) 1-3月期GDP個人消費確定値 前期比 (前回 1.3%、予想 1.3%)
21:30 (米) 1-3月期コアPCE確定値 前期比 (前回 1.0%、予想 1.0%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.6万件、予想 21.9万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 166.2万人)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前月比 (4月 -1.5%、予想 1.0%)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前年同月比 (4月 0.4%)
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 8.25%、予想 8.25%)

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