<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円は、ドル安・円高。一時109円半ばまで値を下げ、2月4日以来のドル安値を記録する局面も観測されている。
前週末に、「北朝鮮が飛翔体を9発発射」とのニュースや、「開票作業がすべて終了した英統一地方選で与党の大敗が明らかになった」という報道などが観測されるなか、週明けの為替市場はオープンした。前週末のNYを111.10円前後で終了したドル/円は、上方向にギャップを空ける110.55-60円で寄り付いている。
その後しばらくは110.30-111.00円といったレンジ取引で底堅く推移するも、一度割り込むと、そのまま110円割れ。週間安値である109円半ばまで一気に値を下げた。その後、週末にかけては109.50-110.20円程度の低位揉み合いをたどるなか、NYは109.90-95円で取引を終え、越週している。
一方、週間を通して注目された材料は、「北朝鮮情勢」と「米中貿易問題」について。
前者については、先でも指摘したように、4日に「北朝鮮が飛翔体を9発発射」したことをキッカケに、日米や米露、米韓などの首脳が相次ぎ電話会談実施。ただ、トランプ米大統領は「北委員長は約束を破らない」などと発言し、不問に処す考えを明らかにしていた。ところが9日に北朝鮮が再び「飛翔体を発射」したことで様相は混とん。トランプ氏も「北朝鮮の飛翔体発射は『極めて深刻』」と不快感を示したことで、市場では警戒感を強めた参加者が少なくなかったもよう。
対して後者は、週明けにトランプ氏が「中国製品の関税を10%から25%へ引き上げる」考えを示した反面、米紙WSJは「中国が予定している米中貿易協議中止を検討」と報じ、貿易戦争激化懸念が嫌気されていた。結局、9-10日に貿易協議はなんとか開催されたものの、具体的な進展が聞かれなかっただけでなく、米国サイドから「中国製品への追加関税引き上げ」が実際に実施され、それを受けて中国サイドも対抗措置を示唆するなど、両者の溝は最後まで埋まらなかった印象だ。
<< 今週の見通し >>
4月以降の111円を下限としたレンジを割り込んできたことに続き、先週は3月安値109.70円を一時下回るなど、いよいよ底割れしてきた感も否めない。まだ予断は許さないが、最新のシカゴIMM投機ポジションを持ち出すまでもなく、市場の円ショートは依然として積み上がっている。今年1月のような、「フラッシュ・クラッシュ(瞬間的暴落)」を警戒する声は少数派だが、リスクは円高方向にバイアスが掛かると予想する向きは決して少なくないようだ。
材料的に見た場合、4日に続き9日にも事実上の「ミサイル」を発射した北朝鮮情勢がまずは気掛かり。トランプ氏は4日だけでなく9日についても、怒りの矛先をおさめ取り敢えず「不問」の姿勢をとっているものの、何がキッカケで「スイッチ」が入るのかわからない人物だけにリスク要因として注意を払いたい。一方、それとは別に引き続き「米貿易問題」への警戒感が強いようだ。先でも指摘したように9-10日に実施された「米中貿易協議」では大きな進展がなかったばかりか、交渉の長期化が改めて示された格好にある。こうした状況について、株式を中心とした金融市場がどう判断するのか、それによって為替市場の動きも決定づけられることになるかもしれない。
テクニカルに見た場合、これまで動静が注目されていた移動平均の200日線(111円半ば)は遠くに離れ、足もとは一目均衡表の先行帯の雲の下限(週間を通して今週は110.30円レベルで推移)の攻防が注視されている。ドルが戻り高をたどった場合、同レベルが抵抗として寄与することになりそうだ。
対するドルのサポートは、先週記録したドル安値の109.47円、あるいは年初来安値104.10円を起点とした上げ幅のフィボナッチ38.2%戻しの109.20-25円などとなる。
一方、材料的に見た場合、4月の小売売上高や5月のNY連銀製造業景況指数、同ミシガン大消費者信頼感指数といった重要な米経済指標が相次ぎ発表される予定となっている。また週明けのグラリダFRB副議長による講演を皮切りに、米通貨当局者のなども相次ぐ見込みだ。
そのほか、「ポンペオ米国務長官による訪露」など、政治的な要因も少なくなく、週間を通した注意を払いたい。
そんな今週のドル/円予想レンジは、108.70-110.90円。ドル高・円安については、日足・一目の雲の下限が位置する110.30円をめぐる攻防にまずは注視。抜けると同上限が位置する111円前後が意識されそうだ。
対するドル安・円高方向は、先週安値の109.47円、あるいはフィボナッチサポートの109.20-25円などが最初のターゲット。それらを下回ると108円台突入も否定できなくなるだろう。
オーダー/ポジション状況
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