ドル円見通し 米国の対中関税全面化、市場は受け止めきれるか?(週報5月第2週)

3月25日安値を割り込んで1月3日からの底上げパターンが崩れた。

ドル円見通し 米国の対中関税全面化、市場は受け止めきれるか?(週報5月第2週)

ドル円見通し 米国の対中関税全面化、市場は受け止めきれるか?

【概況】

5月9日からの米中閣僚級通商協議前、5月5日にトランプ米大統領は中国への制裁関税を追加発動すると宣言、7日には米政府が正式に関税拡大を公示した。日本時間10日朝から米中閣僚級協議の初日が始まったが具体的進展はなく、日本時間5月10日午後1時、米国は中国に対する関税拡大適用を公示通りに開始した。
日本時間11日早朝の2日目の協議も合意には至らず、トランプ米大統領は中国からの輸入品すべてに制裁関税を課すとし、その手続き詳細を13日に公表するとしている。大統領は中国との協議を続ける意向を示したが、関税を撤廃するかどうかは「今後の交渉次第」とした。
ワシントンでの閣僚級協議では中国側は合意文書案の大幅修正を要求し、米国側が突っぱねて制裁強化に踏み切った。しかし米中双方ともに協議は決裂したとしていない。中国共産党機関紙人民日報系の環球時報編集長は劉副首相が「協議は非常に順調だった。今後は北京で会合を再開することで合意した」と話したとツイートした。しかしムニューシン米財務長官が「現時点で中国との協議の予定はない」と述べている。

【3月5日と4月24日のダブル天井?】

1月3日からの上昇は3月5日高値112.12円でいったんピークを付けて3月25日安値109.72円まで下げた。その間の下落幅は2.40円だったが、その後の切り返しで4月24日高値112.39円へ上昇して3月5日高値をわずかに上抜いた。しかし高値更新からさらに一段高入りへと加速できずに失速し、連休明けの下落により5月9日夜安値で109.47円を付けて3月25日安値を割り込んだ。
4月24日へ高値を更新したにもかかわらず二段目の上昇起点となった3月25日を割り込んだことをどうみるか?

第一には3月5日高値と4月24日高値をわずかに高値更新しただけのダブル天井とし、両高値の谷間にある3月25日安値を割り込んだことでダブル天井完成とし、1月3日からの上昇が一巡して下落期に入った可能性が考えられる。1月31日から3月25日へと底上げしてきた下値支持線を割り込み、3月25日安値も割り込んだことでのチャートの弱気転換という印象は大きい。3月5日高値と4月24日高値との間では日足の相対力指数のピークが切り下がる弱気逆行現象もみられる。
1月3日の日足及び週足が長大下ヒゲとなってのV字反騰だったが、週足の下落と下ヒゲからの反騰具合は2015年6月5日天井後の8月24日安値週の長大下ヒゲからの反騰と前後状況が類似していることを指摘してきたが、GW明けの下落により、2015年の年末から下落再開し始めた時に類似している印象もある。

【レンジ拡張型逆三角持ち合い?】

3月25日の安値を割り込んで底上げ型は崩れたが、その前には年初からの高値を更新しているため、仮に5月9日深夜安値ないしは週明け早々の安値から反騰して111円台を回復してくる場合は見方が変わる可能性がある。高値を切り上げる一方で安値も切り下げるが、そこからまた高値を切り上げにかかるようなレンジ拡張型の往来相場を形成する可能性も残る。
3月5日高値から4月24日高値への切り上げ幅は0.27円、3月25日から5月9日への安値切り下げ幅は0.25円である。上下にレンジをはみ出す値幅が近い場合、直前の下げ幅の半値を超える上昇からはもう一度高値切り上げへ進む可能性が出てくる。5月9日深夜安値までの時点では、直前の下げ幅に対する半値戻しラインは110.93円であり、111円超えから続伸に入れば4月24日高値を試しにかかる確率も高まると思われる。
しかし、5月13日早々に安値更新し、3月25日安値からの切り下がり幅が0.50円を超え、さらに拡大し始めるならレンジ拡張型の往来相場での反騰入りという可能性はかなり後退すると思う。

市場は基本的には楽観的な態度をとりやすく、一時的に悲観してもすぐに楽観を取り戻すことも多々ある。今回の対中関税全面化に対する市場反応も、まずは週明け序盤の反応、そして欧州、米国市場に入ってからの流れで見定める必要があるので、本稿執筆時点ではまだ決めつけられないので強弱両論の可能性を書いた。しかし、底上げパターンが崩れたことの意味合いが強いのではないかと考える。

【底上げパターン崩れの前例】

3月25日安値を割り込んで1月3日からの底上げパターンが崩れた。3月26日底から10月への上昇途中では5月29日へ3.27円の下落、8月21日へ3.38円の下落、10月26日へ3.17円の下落等、直前高値から3円を超える下落を何度も入れては切り返してきたが、それはあくまでも手前の底から次の底へと底上げを維持してきたからだ。
直前上昇の起点となった安値を割り込んだため、今回は3円程度の調整安ということでは済まされずにさらに下落基調を継続する可能性を警戒しておく必要がある。その際に前例とすべき最近の事例は、昨年12月に10月26日安値を割り込んだ後、昨年1月に1昨年11月27日安値を割り込んだところと思われる。
昨年12月からの下落は今年1月3日への大暴落へ発展し、昨年1月からの下落は昨年3月26日まで続き、いずれも104円台まで下げている。上記のように5月10日終了時点では、レンジ拡張型での揺れ返し上昇へと切り返す可能性も残っているが、週明けに一段安して行く場合は昨年5月以降のように3円前後の下げを押し目底として上昇できず、大幅下落型へと発展する可能性を優先してゆくことになるのだろうと思われる。

【当面のポイント】

(1)5月9日深夜と10日深夜に109.47円を付けて60分足レベルではダブル底、日足レベルでは毛抜き底型が見られる。5月8日夜の戻り高値110.26円超えからはダブル底完成として110.50円から111.00円手前への上昇へ進む可能性がある。仮に111円超えへ進むなら、前述のレンジ拡張型往来相場での上昇局面入りへ発展する可能性が出てくると思われる。
(2)ダブル底ラインを割り込む場合はレンジ拡張型往来相場での上昇局面入りではなく、3月5日と4月24日のダブル天井による下落本格化の可能性を優先する。その際はまず109.00円試し、109円割れからは1月31日安値108.50円試し、108.50円も割り込む場合は1月3日の日足終値107.50円試しへと段階的に下値目途が切り下がってゆくと思われる。
週明け序盤のダウ先物や日経平均、上海総合株価指数等を見定めつつ、いずれへ進むのかを判断してゆく必要がある。

ドル円見通し 米国の対中関税全面化、市場は受け止めきれるか?

※ 米中貿易協議については、トランプ大統領が強硬姿勢を示しつつも成果を得るためにいずれ妥協しつつ合意に向かうのではないかとの楽観論も根強かった。しかし、米朝首脳会談の決裂、イラン核合意からの離脱、中国への関税拡大全面化は、合意に至らなくても強硬姿勢を示し続けることこそが政治的な支持基盤を固めるものとして政権にとって自己目的化されているのではないかと思う。中国もここで屈辱的に折れることは中国内の権力闘争上も難しい。(了)<12日19:50>

【当面の主な予定】

5/13(月)
休場 香港
08:50 (日) 4月 外貨準備高 (3月 1兆2918億ドル)
14:00 (日) 3月 景気先行指数(CI)・速報値 (2月 97.1、予想 96.3)
22:05 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、イベントでの開会挨拶
22:10 (米) クラリダFRB副議長、講演

5/14(火)
08:50 (日) 3月 国際収支・経常収支(季調前) (2月 2兆6768億円、予想 3兆72億円)
08:50 (日) 3月 国際収支・経常収支(季調済) (2月 1兆9576億円、予想 1兆7109億円)
08:50 (日) 3月 国際収支・貿易収支 (2月 4892億円、予想 8389億円)
10:30 (豪) 4月 NAB企業景況感指数 (3月 7)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー調査-現状判断DI (3月 44.8、予想 45.8)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 1.0%、予想 1.0%)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 2.0%、予想 2.0%)
16:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、チューリッヒで講演

17:30 (英) 4月 失業保険申請件数 (3月 2.83万件)
17:30 (英) 3月 失業率・ILO方式 (2月 3.9%、予想 3.9%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 -0.2%、予想 -0.3%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -0.3%、予想 -0.8%)
18:00 (独) 5月 ZEW景況感期待指数 (4月 3.1、予想 5.0)
21:30 (米) 4月 輸入物価指数 前月比 (3月 0.6%、予想 0.7%)
21:30 (米) 4月 輸出物価指数 前月比 (3月 0.7%、予想 0.5%)
25:45 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、講演

5/15(水)
08:50 (日) 4月 マネーストックM2 前年同月比 (3月 2.4%、予想 2.3%)
09:30 (豪) 5月 ウエストパック消費者信頼感指数 (4月 100.7)
11:00 (中) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 8.7%、予想 8.6%)
11:00 (中) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 8.5%、予想 6.5%)
15:00 (独) 1-3月期GDP速報値 前期比 (前期 0.0%、予想 0.4%)
15:00 (独) 1-3月期GDP速報値 前年同期比 (前期 0.6%、予想 0.7%)
15:00 (独) 1-3月期GDP速報値・季調前 前年同期比 (前期 0.9%、予想 0.7%)

18:00 (欧) 1-3月期GDP改定値 前期比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 1-3月期GDP改定値 前年同期比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
21:30 (米) 4月 小売売上高 前月比 (3月 1.6%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 小売売上高・除自動車 前月比 (3月 1.2%、予想 0.7%)
21:30 (米) 5月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (4月 10.1、予想 8.0)
22:15 (米) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -0.1%、予想 0.0%)
22:15 (米) 4月 設備稼働率 (3月 78.8%、予想 78.8%)
23:00 (米) 5月 NAHB住宅市場指数 (4月 63、予想 64)
23:00 (米) 3月 企業在庫 前月比 (2月 0.3%、予想 0.0%)
25:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演

5/16(木)
08:50 (日) 4月 国内企業物価指数 前月比 (3月 0.3%、予想 0.2%)
08:50 (日) 4月 国内企業物価指数 前年同月比 (3月 1.3%、予想 1.1%)
10:30 (豪) 4月 新規雇用者数 (3月 2.57万人、予想 1.50万人)
10:30 (豪) 4月 失業率 (3月 5.0%、予想 5.0%)
18:00 (欧) 3月 貿易収支・季調済 (2月 195億ユーロ、予想 190億ユーロ)
18:00 (欧) 3月 貿易収支・季調前 (2月 179億ユーロ)
21:30 (米) 4月 住宅着工件数・年率換算件数 (3月 113.9万件、予想 120.9万件)
21:30 (米) 4月 建設許可件数・年率換算件数 (3月 126.9万件、予想 128.7万件)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.8万件、予想 22.1万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.4万人、予想 168.0万人)
21:30 (米) 5月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (4月 8.5、予想 9.0)
25:05 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 8.25%、予想 8.25%)

5/17(金)
07:45 (NZ) 1-3月期生産者物価指数 前期比 (前期 0.8%)
13:30 (日) 3月 第三次産業活動指数 前月比 (2月 -0.6%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 3月 建設支出 前月比 (2月 3.0%)
18:00 (欧) 3月 建設支出 前年同月比 (2月 5.2%)
18:00 (欧) 4月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
18:00 (欧) 4月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.7%、予想 1.7%)
23:00 (米) 4月 景気先行指指数 前月比 (3月 0.4%、予想 0.2%)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (4月 97.2、予想 97.5)
24:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、会合参加

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

2019年の為替相場を予想

FXが初めての方向け特集

円通貨ペア 為替チャート・相場予想

米ドル(USD)

米ドル(USD)相場の焦点
  • ・米景気の先行き見通しと金融政策 ◎
    ・米中貿易戦争をはじめとする米保護主義の拡大懸念◎
    ・トランプ政権の「ロシアゲート」の広がり ◎↓
    ・ドル高の人為的是正の有無 ◎↓
    ・アメリカ第一主義、保護貿易政策への転換の経済への影響波及
    ・減税、インフラ投資等の実効性
米ドル/円 通貨ペア 詳細分析

ユーロ(EUR)

ユーロ(EUR)相場の焦点
  • ・英国EU離脱の今後の展開と影響 ○ 
ユーロ/円 通貨ペア 詳細分析

豪ドル(AUD)

豪ドル(AUD)相場の焦点
  • ・米中貿易摩擦による中国の景気減速懸念◎↓
    ・金融緩和打ち止め観測 ○↑
    ・国内ファンダメンタルズの相対的な安定 ○↑
豪ドル/円 通貨ペア 詳細分析

NZドル(NZD)

NZドル(NZD)相場の焦点
  • ・新政権下の中銀の政策スタンス変化の有無 △↓
    ・米中貿易摩擦による中国の景気減速懸念◎↓
    ・国内の住宅価格の高騰とピークアウト ○↓
NZドル/円 通貨ペア 詳細分析

トルコリラ(TRY)

トルコリラ(TRY)相場の焦点
  • ・エルドアン大統領の経済政策、中銀支配への不安◎↓
    ・政情不安、経済政策への不信による海外資金の流出 ○↓
    ・米国との関係悪化一段落◎↑
トルコリラ/円 通貨ペア 詳細分析

南アフリカランド(ZAR)

南アフリカランド(ZAR)相場の焦点
  • ・米中貿易摩擦で中国景気失速懸念◎↓
    ・ムーディーズによるソブリン格付け引き下げ懸念◎↓
    ・資源価格の下げ止まり ○↑
    ・金価格反発  △↑
南アフリカランド/円 通貨ペア 詳細分析

ライブ株価指数

政策金利表

ページトップへ戻る