【概況】
3月25日安値109.72円から上昇期に入って4月13日には112円台をいったん回復し、4月17日に112.16円を付けて3月5日高値112.12円をわずかに超えて1月3日底以降の高値を更新したため、その段階では3月25日安値を中心とした逆三尊底形成からの一段高入りへ進む可能性が考えられたが、その後は112円を挟んだ横ばいにとどまって伸び悩んだため、高値更新からの一段高入りには「待った」がかかった状況となり、逆にダブルトップ形成からの弱気転換も警戒される姿となった。
4月25日朝に112.39円をつけて4月17日高値も超えたのだが、この時も朝の薄商いでの一時的急騰に終わって112円台を維持できなかったため、高値更新からの強気拡大とはならずに却って112円台到達での上値の重さが意識されるものとなった。26日の米1−3月期GDP、5月2日未明のFOMC声明発表、5月3日夜の米雇用統計と重要イベントが続く中で一時的にはドル高円安反応を見せながらも上値の重さが続いて先週末は111円台序盤まで下げた状況で終了した。
【米GDP、FOMC、雇用統計ではドル高円安へ進めず】
4月26日の米1−3月期GDP速報値は前期比年率プラス3.2%となり市場予想の2.0%及び前期の2.2%を大幅に超えた。一時的にはドル高反応だったが早々に失速し、ドル高材料への反応度の鈍さを示した。
5月2日未明に声明の出された米連銀FOMCでは政策金利を現状維持としたが、景気の現状を「底堅く拡大」として前回の「成長が減速した」との認識からやや上方修正した。またパウエル議長は会合後の記者会見で物価低迷は一時的要因によるものとし、「金利をどちらの方向にも調整する環境にない」として市場が期待する早期の利下げ可能性に否定的な姿勢を示した。前回FOMCからはややタカ派に傾斜した印象を与えて当初はドル高反応も見られたがドル買いに勢いがつかずに111.50円を挟んだ揉み合いにとどまった。
5月3日の米労働省4月雇用統計では失業率は3.6%と前月から0.2%低下して1969年12月の3.5%以来49年ぶりの低水準となった。非農業部門就業者数は季節調整済みで前月から26万3000人増となり3か月振りに20万人を上回った。これも発表直後は若干のドル高反応が見られたもののドル買い一巡後は失速した。
FOMC声明や雇用統計は市場がやや期待し過ぎていた早期の利下げ可能性を後退させたため、ユーロドルでは2日未明からドル高ユーロ安となったが、豪中銀やカナダ中銀等の利下げ可能性が強まる中ではドル円においてはドル高へ進めず、クロス円からの円高感が勝る反応となった。5月7日には豪中銀、8日にはNZ中銀の金融政策発表がある。
【トランプ大統領の一声で株安円高】
トランプ米大統領が5月5日のツイッターで、現行の2000億ドル規模の中国製品に対する関税を5月10日からは現在の10%から25%へ引き上げると表明した。また現時点では関税を課していない3250億ドル相当の中国製品についても近く25%の関税を発動する姿勢を示した。トランプ大統領は「中国との通商協議は継続しているが遅すぎる。中国側は再交渉しようとしている。ノーだ」とツイートした。
米中の閣僚級協議が繰り返される中で合意に近いとの楽観的な受け止め方が年末からの株高を助長してきたのが、この発言を受けた6日早朝からダウ先物が500ドルを超える急落となり、上海総合株か指数も5%を超える大幅下落となった。昨年10月から世界連鎖株安からV字反騰に入り、4月も騰勢を継続してナスダックとSP500は史上最高値を更新してきた。ワシントンと北京で米中閣僚級協議が繰り返されて徐々に合意に近づいてきたという印象が相場を支えてきたが、その楽観が一挙に崩れた印象だ。6日のNYダウは一時470ドルを超える下落で開始され、その後は米中協議がまだ継続中であり、悲観し過ぎるのは時期尚早として66.47ドル安まで下げ幅を削ったが、結局は前日比プラスには至らなかった。ダウの先物と通常取引の流れを見ながらドル円は6日午前に大幅続落したが、その後の株反発をみて買い戻されたものの111円台を回復できずに終わった。
【当面の中勢ポイント】
(1)4月17日、25日と高値を更新したところでは1月3日からの上昇基調継続期待が高まりかけたが、その後の失速により3月5日と4月21日の両高値をダブルトップとした下落感が強まり始めた。ドル全面高が4月17日や25日への上昇要因であり、欧州景況感悪化、NZ、豪、カナダ中銀の利下げ可能性等による長期金利低下がドル以外をさらに弱くし、ドルが相対的に押し上げられての上昇という印象だった。しかし5月6日の米中協議決裂懸念により株安が市場全般のリスクオフ心理を一挙に拡大させたために、ドルストレートでのドル高以上にクロス円での円全面高となっている。
(2)4月25日から5月6日への下落レベルは今のところ3月5日から3月25日への下落時並みであり、 3月25日安値109.72円を割り込まないうちは1月31日からの底上げパターンを維持して次の上昇へ進む可能性は残る。このため111.50円超えから続伸する場合は上昇再開感が強まる可能性があるが、その為にはリスクオフ心理が緩む状況が発生することが条件になるだろう。
(3)3月25日安値を割り込む場合は底上げパターンが崩れるため、3月5日と4月25日の両高値をダブルトップとした下落期入りの可能性が高まると思われる。その場合は概ね3か月前後の底打ち周期から見て6月後半への下落で107.50円前後を目指す可能性も出てくると思われる。
【60分足一目均衡表、サイクル分析と今週の目安】
概ね3日から5日周期の短期的な高値安値形成サイクルでは5月6日午前安値を直近のサイクルボトムとして反発したが伸び悩んでいる状況と思われる。前回のサイクルトップは5月2日高値と3日夜高値によるダブルトップであり、2日高値を基準とすれば7日から9日にかけての間がトップ形成期と思われるが、戻りは短命の可能性もあるので、111円台を回復できない内は110.50円割れから6日午前安値試しとし、底割れなら新たな弱気サイクル入りとして9日から13日にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では3日夜からの下落で先行スパンから転落している。111円超えへ進めば先行スパンを上抜いてくるので111.50円前後?の切り返しを想定するが、米中問題でリスクオンへと再転換しない内は111円台前半では戻り売りにつかまりやすいとみる。
110.50円割れからは下げ再開注意とし、6日安値割れからは3月25日安値109.72円試し、割り込む場合は109円台序盤へ向かうとみる。特に米中協議が決裂でトランプ大統領のいう関税発動の確率が高まれば108円台への下落も警戒する。
【当面の主な予定】
5/7(火)
10:30 (豪) 3月 貿易収支 (2月 48.01億豪ドル、予想 43.00億豪ドル)
10:30 (豪) 3月 小売売上高 前月比 (2月 0.8%、予想 0.2%)
13:30 (豪) 豪準備銀行(RBA) 政策金利発表 (現行 1.50%、予想 1.50%)
15:00 (独) 3月 製造業新規受注 前月比 (2月 -4.2%、予想 1.5%)
15:00 (独) 3月 製造業新規受注 前年同月比 (2月 -8.4%、予想 -5.4%)
20:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演(北京)
28:00 (米) 3月 消費者信用残高 前月比 (2月 151.9億ドル、予想 160.0億ドル)
5/8(水)
未 定 (中) 4月 貿易収支・米ドル建 (3月 326.4億ドル、予想 337.0億ドル)
未 定 (中) 4月 貿易収支・人民元建 (3月 2212.3億元)
08:50 (日) 4月 マネタリーベース 前年同月比 (3月 3.8%)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
11:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)策金利 (現行 1.75%、予想 1.50%)
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 0.7%、予想 -0.5%)
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -0.4%、予想 -2.7%)
5/9(木)
10:30 (中) 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 2.3%、予想 2.5%)
10:30 (中) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 0.4%、予想 0.4%)
14:00 (日) 4月 消費者態度指数 (3月 40.5、予想 40.3)
21:30 (米) パウエルFRB議長、イベントで開会の辞
21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 0.6%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 2.2%、予想 2.4%)
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前月比 (3月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前年同月比 (3月 2.4%、予想 2.5%)
21:30 (米) 3月 貿易収支 (2月 -494億ドル、予想 -512億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.0万件、予想 22.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 167.1万人)
22:45 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
23:00 (米) 3月 卸売在庫 前月比 (2月 0.2%)
23:00 (米) 3月 卸売売上高 前月比 (2月 0.3%)
26:15 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、昼食会で講演
5/10(金)
08:30 (日) 3月 全世帯消費支出 前年同月比(2月 1.7%、予想 1.6%)
10:30 (豪) 豪準備銀行(RBA) 四半期金融政策報告
15:00 (独) 3月 貿易収支(2月 179億ユーロ、予想 189億ユーロ)
15:00 (独) 3月 経常収支(2月 163億ユーロ、予想 260億ユーロ)
17:30 (英) 1-3月期 GDP速報値 前期比(前期 0.2%、予想 0.5%)
17:30 (英) 1-3月期 GDP速報値 前年同期比(前期 1.4%、予想 1.8%)
17:30 (英) 3月 貿易収支・物 (2月 -141.12億ポンド、予想 -137.50億ポンド)
17:30 (英) 3月 貿易収支・全体(2月 -48.60億ポンド、予想 -46.00億ポンド)
17:30 (英) 3月 鉱工業生産指数 前月比(2月 0.6%、予想 0.1%)
17:30 (英) 3月 鉱工業生産指数 前年同月比(2月 0.1%、予想 0.4%)
17:30 (英) 3月 製造業生産指数 前月比(2月 0.9%、予想 0.0%)
21:30 (米) 4月 消費者物価指数 前月比(3月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 消費者物価指数 前年同月比(3月 1.9%、予想 2.1%)
21:30 (米) 4月 消費者物価コア指数 前月比(3月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 消費者物価コア指数 前年同月比(3月 2.0%、予想 2.1%)
21:30 (米) ブレイナード米FRB理事、会議の冒頭の挨拶
22:08 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
23:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
27:00 (米) 4月 月次財政収支 (3月 -1470億ドル、予想 1650億ドル)
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:上村 和弘
2024.10.07
ドル円週間見通し 米雇用統計後のドル高で149円台に到達、9月16日からの上昇トレンド継続
米雇用統計が予想を上回る強さを見せたことで直前安値146.52円から148円台へ急伸し、5日未明には149円に到達した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.10.05
来週の為替相場見通し:『ドル円は約1カ月半ぶり高値を更新。心理的節目150.00が視野に』(10/5朝)
ドル円は石破ショック発生後に記録した安値141.65をボトムに切り返すと、週末にかけて一時148.80まで急伸しました(7円超の急騰劇)。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.10.04
東京市場のドルは145円台に入る場面も、米失業率に関心高まる展開に(24/10/4)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、米雇用統計発表を前に積極的な買いは手控えられて、ポジション調整的な売りが入り145円台に入る場面も見られた。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2019.05.07
米中貿易協議を注視、ドル円の目先はレンジ取引か(5/7夕)
7日の東京市場は、110円台後半で揉み合い。110円半ばで底堅さはうかがえるものの、上値も重く、結局レンジ取引に。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2019.05.07
ドル円、米中貿易摩擦の激化を嫌気して急落するもその後持ち直し(5/7朝)
週明けのドル円相場は、チャートポイントとして意識されていた、@111円ちょうど近辺、A4/10安値110.84、B一目均衡表雲上限110.81を全て割り込む
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。