ドル円見通し 110円到達で一服大統領演説待ち
1月19日未明高値109.88円から23日深夜高値109.99円、25日深夜高値109.94円と110円乗せに失敗し、31日未明のFOMCによる利上げ棚上げ姿勢から崩れて31日夜には108.50円まで下げた。その段階では110円未達成のまま円高ドル安へと基調転換してゆく可能性が高まったが、2月1日夜の米雇用統計で就業者数増加幅が予想を大幅に超えたことでドルが巻き返し、株高継続も手伝ってドル円は反騰に転じた。4日夜には110.15円まで上昇して110円到達を実現し、1月3日暴落以降の戻り高値を更新したが、110円乗せを新たな一段高加速のきっかけに出来ずに5日の日中、6日午前は110円弱での横ばいに止まっている。
5日もNYダウは172.15ドル高と続伸し、ポンドやユーロが下落してドル指数は週末からの上昇を継続したためにドル円にはプラスだったが、英国のサービス業PMIの低下、ユーロ圏の小売統計の悪化、米ISMサービス業景況指数の低下等は景気全般の冷え込みを懸念させてドル円の上値を抑えた印象だ。
米サプライ管理協会ISMが発表した1月の米非製造業景況指数は56.7となり前月の58.0から低下し市場予想の57.2を下回ったが、市場の反応は限定的だった。
2月5日夜(日本時間6日午前)にトランプ米大統領による一般教書演説がある。米政府閉鎖問題と国境の壁予算問題、米中通商協議の状況、今期の経済政策等が焦点であり、内容次第では株式市場も為替市場も大きく動く可能性があるので注視したい。
【株高による円安と米利上げ棚上げによる円高】
株高継続による債券売りが米10年債利回りを上昇させたことで雇用統計後はドルが反発した。しかし米連銀の追加利上げ棚上げ及び保有資産圧縮計画の早期切り上げ見込みはドル安要因であり、5日夜からは米10年債利回りも再び低下している。
米ダラス連銀のカプラン総裁(FOMC投票権無)は5日発表の論文で「金融政策は重大な岐路にある」、米連銀は政策判断を「今後数カ月、忍耐強く待つ余裕がある」と述べ、中国や欧州経済の減速と米企業の収益低下、金利上昇に伴う米住宅市場の軟化、貿易摩擦や政府閉鎖を受けた景況感の落ち込みなどが今後の懸念要因だと指摘した。
米クリーブランド連銀のメスター総裁(FOMC投票権有)も前日の講演で「政策金利の変更前に景気情勢を収集し見通しとリスクの評価を継続できる環境にある」として当面は利上げを停止すべきとの姿勢を示している。
両総裁の発言はパウエル議長含めFOMCメンバーの中心的なスタンスを示していると思われる。株高による債券売りでの米長期債利回りの上昇も、米連銀の利上げ棚上げ姿勢を踏まえれば限定的な動きに止まりやすいと思われる。このため株高によるリスクオン的な円安効果と利上げ棚上げによる円高圧力がバランスしやすい状況と言える。そうした状況のなかで株高が修正安局面に入るようだとドル円も再び下落感を強め始めるかもしれない。
【米中協議】
米国時間5日夜にダウジョーンズ通信がムニューシン米財務長官とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が来週初めに中国を訪問して閣僚級の貿易協議を再開すると報じた。先のワシントンにおける劉副首相を含めた閣僚級協議の際には劉副首相がトランプ大統領と会談しており、ベトナムでの米朝首脳会談に併せて米中首脳会談も実現するのではないかとの観測記事も出ている。米中協議の期限は3月1日であり、今回の米高官訪中で詰めの協議が進むなら米中首脳会談での合意形成へ進む可能性も高まるかもしれないが、ぎりぎりのところで合意に至らなければ本格的な米中貿易戦争開始となる。
【60分足一目均衡表、サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月31日未明の急落で29日午前安値を割り込んだために31日朝時点では底割れによる弱気サイクル入りとして2月1日の日中から5日にかけての間への下落を想定していたが、4日深夜の上昇で30日深夜高値を超えたために5日朝時点では31日深夜安値を短縮されたサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。また30日深夜高値を起点として今回の高値形成期を4日深夜から6日深夜にかけての間と想定し、既にトップアウト注意期にあるとしたが109.50円を上回る内は上昇余地ありとした。4日深夜高値からは新たな高値更新へ進めず、前回ボトムからもすでに3日を経過したので4日深夜高値を直近のサイクルトップとする。高値更新へ進めない内は6日の日中から7日深夜にかけての間への下落を想定する。ただし4日深夜高値超えからは新たな強気サイクル入りと仮定して7日夜から11日深夜にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では31日深夜安値からの反発で遅行スパンが好転し、1日深夜の上昇で先行スパンを突破したが、4日深夜高値以降の横這いにより遅行スパンは実線と交錯状態に入っている。先行スパンの上限が下値を支えている。5日午後安値109.78円を割り込んでくる場合は遅行スパンが悪化して先行スパンへ潜り込むために安値試し優先とし、4日深夜高値超えからは両スパン揃っての好転となるため高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は4日深夜への上昇で80ポイント台後半へ急伸してからは50ポイント台へ低下し、その後は50ポイント台での横ばいとなっている。50ポイント割れから続落の場合は下げ再開の可能性を優先して30ポイント台後半への低下を想定し、60ポイント超えからは上昇再開の可能性を優先する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月5日安値109.78円を下値支持線、4日深夜高値110.15円を上値抵抗線とみておく。
(2)4日深夜高値を超えない内は109.78円割れからの下落で109.50円前後試しへ向かうとみる。米大統領演説等をきっかけに円高が加速する場合は109円台序盤へ下値目処を引き下げるが、109円台序盤ではいったん買い戻しも入りやすいとみる。
(3)4日深夜高値超えからは新たな強気サイクル入りとして110.50円超えへの上昇を想定する。110.50円超えは反落注意とするが、1月3日からの二段上昇が発展してゆく場合は1月23日から31日への下げ幅の倍返しで111.48円前後まで先行きの上値目処が切り上がる可能性もあるとみる。(了)<9:50執筆>
【当面の主な予定】
2/6(水)
休 場 (中) (香) (SG) 旧正月
休 場 (NZ) ワイタンギ条約記念日
未 定 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)1日目
11時過ぎ 米トランプ大統領一般教書演説予定
10:30 (豪) ロウ豪中銀総裁講演
16:00 (独) 12月 製造業新規受注 前月比 (11月 -1.0%、予想 0.3%)
16:00 (独) 12月 製造業新規受注 前年同月比 (11月 -4.3%、予想 -6.7%)
22:30 (米) 10-12月期 単位労働コスト 前期比年率 (前期 0.9%、予想 1.7%)
22:30 (米) 10-12月期 非農業部門労働生産性 前期比 (前期 2.3%、予想 1.7%)
22:30 (米) 11月 貿易収支 (10月 -555億ドル、予想 -540億ドル)
2/7(木)
休 場 (中) 旧正月
休 場 (香) 旧正月
06:45 (NZ) 10-12月期 失業率 (前期 3.9%、予想 4.1
08:05 (米) クオールズFRB副議長、講演
09:00 (米) パウエル米連銀議長、発言 教育者とのタウンミーティング催
14:00 (日) 12月 景気先行指数(CI)速報 (11月 99.1、予想 97.9
16:00 (独) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 -1.9%、予想 0.7
16:00 (独) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -4.7%、予想 -3.3
20:30 (欧) メルシュECB理事講演
21:00 (英) イングランド銀行(BOE)政策金利 (現行 0.75%、予想 0.75
21:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 4350億ポンド、予想 4350億ポンド)
21:00 (英) 英中銀イングランド銀行、四半期物価報告
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 25.3万件、予想 22.3万件)
23:30 (米) クラリダFRB副議長講演
29:00 (米) 12月 消費者信用残高 前月比 (11月 221億ドル、予想 153億ドル)
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。