ドル円見通し 日銀金融政策で円安反応に(8/1)

7月31日発表の米経済指標は概ね良好だった。

ドル円見通し 日銀金融政策で円安反応に(8/1)

【概況】

7月19日高値113.17円から23日安値110.75円へ急落した後は、26日に110.59円まで若干安値を切り下げたが概ね111円を中心とした持合いでの推移となって31日の日銀金融政策決定会合待ちとなっていた。7月20日に時事通信社が「日銀が長期金利上昇へ柔軟対応に転換」との独自取材記事を報じていたため、今回の会合では長期金利上昇を容認するのかどうか、出口戦略を意識するようなものになるのかどうかが注目されていた。
発表は13時過ぎまで遅れたが、市場予想通りに長期金利の上昇に対して柔軟姿勢を示すとともに長期金利上昇局面では国債買い入れで抑え込み異次元緩和状態を継続する姿勢を強調した。ETF買入は総額ベースで変わらずであったがTOPIX系の比率を高めるとし、国債買い入れペースも現状維持とした。

発表が遅くなったことで当初は円高先行となって110.75円まで下げ、発表直後は異次元緩和継続を円安要因として上昇、多少乱高下したが欧米市場時間ではさらに円安が進んだ。米経済指標が強かったことも加わって深夜には111.95円まで上昇している。

7月31日発表の米経済指標は概ね良好だった。米商務省が発表した6月の個人消費物価指数は前年同月比2.2%上昇となり前月と変わらずであったが米連銀が目標とする2%を4カ月連続で維持した。7月のシカゴPMIは65.5で前月の64.1から上昇、市場予想の62.3を上回った。また米コンファレンス・ボードが発表した7月の消費者信頼感指数は127.4とで前月の127.1から上昇、市場予想の126.4も上回った。

【日銀金融政策決定会合骨子】

1.長短金利操作付き量的・質的金融緩和の持続強化措置を決定
  長期金利は経済・物価情勢に応じて上下にある程度変動し得る
  金利が急上昇する場合は、迅速かつ適切に国債買い入れを実施
  長期国債買い入れ、年80兆円の増加をめどとしつつ、弾力的に買い入れる
2.当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持
  強力な金融緩和継続のための枠組み強化
  政策金利残高を見直し=マイナス金利適用の政策金利残高を減少

3.ETFの銘柄別買い入れ額見直し
  ETFの買い入れ、日経225など3指数連動は年間3兆円から1.5兆円に
  TOPIX連動のETF買い入れは年間2.7兆円から4.2兆円に
4.物価2%の実現には、これまでの想定より時間がかかる
5.政策金利のフォワードガイダンス導入

【52日移動平均まで下げてから前日比0.78円高の日足陽線】

7月19日高値から7月26日安値までの下げ幅は2.56円幅となり、5月21日から5月29日へ3.27円幅と大幅下落した時以来の下げ幅となった。5月29日安値は52日移動平均に支えられ、前後で3日の日足が下ヒゲをつけて踏み止まり、6月1日には前日比0.72円幅と陽線をつけて上昇に転じた。その当時と比較すると今回は、7月26日安値で52日移動平均まで下げたが当日を含めて日足は3日間を下ヒゲで踏みとどまり、7月31日は前日比0.78円幅の陽線で切り返しており、状況は類似していると言える。

今後は米連銀FOMC、米中貿易戦争問題での強弱報道、あるいはトランプ大統領発言等で強弱状況も変わる可能性があるが、仮に米FOMCからドル高となり、米中問題でやや楽観的な推移となり、米国からの円安牽制がまだ出てこないなら、ドル円も5月29日安値から上昇再開したように、7月31日の上昇をきっかけとして7月19日高値試し、あるいは突破へ進む可能性も出てきたと考えるところか。
ただし、下落途中の大陽線は、翌日以降に続かずにその半値を解消する場合は売り方がやや狼狽して買い戻しただけの「化け線」に終わり、陽線を解消するところから本格的に下げるケースがある。31日の陽線中心値111.41円を割り込む場合は化け線型に注意し、上回るか高値更新なら上昇再開を示す「勢力線」と考える。

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月26日午後安値を前回のサイクルボトム、27日未明高値を同サイクルトップとした弱気サイクル入りとし、31日朝時点では27日未明高値超えへ進めない内は次の安値形成期となる31日午後から8月2日午後にかけての間への下落を想定するとしたが、日銀金融政策発表及び黒田総裁会見等から反騰する等で27日未明高値を超える場合は高値更新による新たな強気サイクル入りとして次の高値形成期となる8月1日未明から3日未明にかけての間への上昇を想定するとした。31日午後へ安値を更新してから27日未明高値超えへ反騰したため、31日午後安値を直近のサイクルボトムとし、高値更新による強気サイクル入りと考える。既に前回サイクルトップから3日を経過しているのでトップアウト注意期に入るが、111.50円を上回る内は上昇継続性ありとし、112円乗せの場合は112.25円から112.50円にかけてのゾーンを試すとみる。111.50円割れから続落し始める場合は弱気サイクル入りの可能性を踏まえて111円台序盤試しへの下落を想定する。

60分足の一目均衡表では31日午後からの反騰で遅行スパンが好転、先行スパンを突破しているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とし、悪化の場合は弱気転換注意とし、先行スパン転落からは弱気サイクル入りと仮定して遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は31日深夜に70ポイント台後半へ急伸、その後は60ポイント台まで下げているが、まだ弱気逆行(相場が高値を更新して指数がピークを切り下げる弱気サイン)は見られていないので、70ポイント超えからは上昇再開とし、弱気転換は50ポイント割れからとする。

以上を踏まえて31日の日中から1日朝にかけてのポイントを示す。
(1)当初、111.50円を支持線、112円を抵抗線とみておく。
(2)111.50円以上を維持する内は上昇余地ありとし、112円乗せからは112.25円から112.50への上昇を想定する。112.50円以上は反落警戒とするが、111.75円以上を維持する内は2日も高値を試しやすいとみる。
(3)111.50円割れからは弱気転換注意、111.25円割れからは弱気サイクル入りの可能性を優先して111.00円前後試しを想定する。111.25円以下での推移が続く場合は2日も安値を試しやすいとみる。
(4)1日夜はADP民間雇用統計、ISM製造業景況指数の発表あり。2日未明3時にはFOMC声明文発表もあるので、それらの内容次第では大幅上昇で113円に迫る可能性ありとし、逆に弱気反応が続く場合は110円台後半へ急落する可能性もあると注意する。(了)<9:55執筆>

【当面の主な予定】

8/1(水)
スイス 休場
07:45 (NZ) 4-6月期 四半期失業率 (前期 4.4%、予想 4.4%)
10:45 (中) 7月 財新製造業PMI (6月 51.0 )
16:55 (独) 7月 製造業PMI、改定値 (速報 57.3、予想 57.3)
17:00 (欧) 7月 製造業PMI、改定値 (速報 55.1、予想 55.1)
17:30 (英) 7月 製造業PMI (6月 54.4、予想 54.2)
21:15 (米) 7月 ADP民間雇用者数 前月比 (6月 17.7万人、予想 17.5万人)
23:00 (米) 6月 建設支出 前月比 (5月 0.4%、予想 0.3%)
23:00 (米) 7月 ISM製造業景況指数 (6月 60.2、予想 59.8)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利発表 (現行 1.75-2.00%、予想 据え置き)

10/2(木)
08:50 (日) 7月 マネタリーベース 前年比 (6月 7.4%)
10:30 (豪) 6月 貿易収支 (5月 8.27億豪ドル、予想 9.00億豪ドル)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.8%、予想 0.8%)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数 前年比 (5月 3.0%、予想 3.5%)
20:00 (英) イングランド銀行(BOE)政策金利発表 (現行 0.50%、予想 0.75%へ引き上げ)
20:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 4350億ポンド、予想 据え置き)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.7万件、予想 22.0万件)
23:00 (米) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 0.4%、予想 1.0%)
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 7.75%)

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