【概況】
6月26日安値109.36円から7月3日高値111.13円まで5連騰したが、4日の米独立記念日休場、5月から6日への重要イベントが連続する前のポジション調整的な動きに入り、3日夜から反落して4日午前には110.27円まで下げた。5日昼には110.28円まで下げたものの新たな安値更新には至らず、午後からは110.50円強へ戻し、110.71円を高値とした揉み合いとなった。
7月5日夜の米経済指標は強弱まちまち、6日未明のFOMC議事録内容もサプライズ的なものはなく、6日早朝まで揉み合いのまま推移した。
米民間雇用サービス会社ADPが発表した6月全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比17万7000人増となり、市場予想の19万人増を下回ったが良好な水準は維持された。
米労働省が発表した週間新規失業保険申請は23万1000件となり前週比3000件増、市場予想の22万5000件を上回ったが特に弱い数字ではなかった。
米サプライ管理協会ISMが発表した6月の米非製造業景況指数は59.1となり前月の58.6から上昇、市場予想の58.3も上回った。
【FOMC議事録】
6日未明、米連邦準備制度理事会FRBは6月12〜13日の連邦公開市場委員会FOMCの議事録を公表した。議事録では「経済が既に非常に力強く、インフレは中期的に2%で持続的に推移すると見込まれる中で、フェデラルファンド金利のレンジを2019年ないし20年までに当局が予想する中長期的な水準かそれをやや上回る水準へむけて今後も漸進的に引き上げていくのが適切になる可能性が高いと参加者は総じて判断した」と記された。また多くの参加者が、利上げの終着点となる中立的な金利水準に「来年のいつか」に到達するとの見解を示した。
大半の参加者は貿易政策をめぐる不透明感とリスクが強まったと懸念を示し、米政権による減税や歳出拡大は景気の上振れリスクになるものの数人は現在の財政が持続不可能だと憂慮を示した。欧州や新興国の動向についても多くの参加者が下向きリスクになる恐れがあると指摘した。
6月のFOMCでは政策金利の誘導目標レンジを1.75−2.00%に引き上げ、年間の利上げ回数予想の中央値を4回として3月会合時の3回から上方修正していた。
議事録は特にサプライズはなく、市場の予想内だが、来年か再来年には利上げの打ち止めも見えてくるという印象を与えたこと、財政拡大や貿易戦争リスク等の顕在化によっては引き締め姿勢に変化が生じる可能性も意識させるものだった。7月6日から発動が予定されている米中関税戦争による金融市場及び実体経済への影響によっては米連銀のスタンスも変わってくるかもしれないが、今のところは粛々と目標水準への利上げを継続してゆくという事だろう。
今晩は米雇用統計もあるが、それ以上に米国による中国に対する制裁関税発動が予定通り行われるか、中国側が即座に対抗策を発動するか、市場反応は織り込み済とした反応か、より悲観的でリスク回避行動が深まるのかどうかが試される。
トランプ大統領は6月に500億ドル相当の中国製品に25%の追加関税を課すと発表し、中国政府も659項目の米国製品500億ドル相当に同様の関税を課す報復措置をとるとした。これをきっかけに6月15日からは人民元安と上海株安が発生してきた。トランプ大統領はまた「中国が米国に対抗措置をとるならさらに2000億ドル相当の中国製品に対する追加関税を実施する」とも述べてきた。
7月6日は当初発表した500億ドル相当の中国製品への25%の追加関税第一弾として、340億ドル相当の製品800項目以上に追加関税を発動する予定となっている。
【5月21日高値を超えて一段高へ進むか、6月25日安値割れから円高へ走るか】
ドル円は3月26日安値104.63円から5月21日高値111.39円まで上昇、昨年11月6日からの下落に対する凡そ3分の2を戻した。5月29日安値108.11円へ反落してから戻しに入り、7月3日高値で111.13円をつけて6月15日高値を超えて5月21日高値に迫ったが、今のところは高値更新に至らず、日足チャートは抵抗線ほぼフラットで支持線が切り上がる三角持合いの様相となっている。
米中関税発動問題を通過して5月21日高値を超えれば三角持合い上放れによる一段高として112円前後まで上値目処が切り上がる可能性がある。逆に110円割れからは三角持合いの支持線割れとなり、6月25日安値割れからは持合い下放れ、さらに3月26日と5月29日安値を結ぶ支持線(52日移動平均とほぼ重なる)から転落するために3月26日からの戻りは一巡して円高ドル安期に入る可能性が強まると思われる。大きな分岐点に来ている。
【60分足 一目均衡表、サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月3日高値で前回のサイクルトップをつけて下落したが、6月28日夜安値から4日目に入った4日午前安値で直近のサイクルボトムをつけて戻しに入った。今回も高値形成期は7月5日から10日にかけての間と想定される。6日夜の米雇用統計や米中貿易戦争問題で上昇なら6日深夜から週明けへの上昇継続と考えるが、それらを弱気反応して4日安値110.27円を割り込む場合は底割れによる弱気サイクル入りとして次の安値形成期となる7月9日から11日にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では7月5日の反発で先行スパンへ潜り込んだ。遅行スパンは好転したがその後はもみ合いが続いているため悪化し易い状況にある。先行スパン転落から4日安値試しとし、底割れからは遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンを上抜いて続伸の場合は遅行スパン好転中の高値試し優先としてゆく。
60分足の相対力指数は5日の反発で60ポイント台をつけたがその後は50ポイント割れまで押されている。45ポイント以下への下降が続く場合は下げ再開注意とし、4日安値割れの場合は30ポイント以下への下降を想定する。65ポイント超えからは上昇再開と7月3日高値試しを想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初の下値支持線を7月4日午前安値110.27円、上値抵抗線を6日未明高値110.71円とみておく。
(2)110.71円超えからは110.80円から111.00円手前への上昇を想定するが、111円超えからさらに続伸するには6日夜の雇用統計や米中問題を強気で通過する必要があると思う。3日高値超えからは5月21日高値111.39円試しへ向かうとみる。また110.75円以上で終了の場合は週明けも高値を試す可能性ありとみる。
(3)110.50円割れから続落の場合は4日午前安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして当初110.00円試しとするが、110円割れからは109.75円前後まで下値目処を引き下げる。また米中問題等への悲観から金融市場全般がリスク回避型行動に走る場合は6月26日安値109.36円前後試し、さらに週明けの続落という可能性に注意する。(了)<9:40執筆>
【当面の主な予定】
7/6(金)
15:00 (独) 5月鉱工業生産 前月比 (4月 -1.0%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月非農業部門雇用者増加数 (5月 +22.3万人、予想 +19.8万人)
21:30 (米) 6月失業率 (5月 3.8%、予想 3.8%)
21:30 (米) 6月平均時給 前月比 (5月 +0.3%、予想 +0.3%)
21:30 (米) 5月貿易収支 (4月 -462億ドル、予想 -454億ドル)
米国による中国への制裁関税発動予定、中国も対抗措置発動の可能性
オーダー/ポジション状況
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