ドル円、北朝鮮軟化の兆しで一服(5/25)

トランプ米大統領は24日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長への書簡を公開して6月12日にシンガポールで予定されていた米朝首脳会談を中止すると表明した。

ドル円、北朝鮮軟化の兆しで一服(5/25)

【概況】

トランプ大統領による米中通商協議に対する「不満足」発言、米朝首脳会談に対する「延期」の可能性示唆発言等からリスク回避感が拡大、ドル円は23日午前から株安を伴って急落商状に入った。21日高値111.39円から23日夜安値109.55円まで1.84円幅の大幅下落となり、24日未明に110.33円まで戻したが24日の日中はさらに一段安、24日はトランプ大統領が米朝首脳会談中止を発表したことで深夜には108.95円まで一段安となった。
これで21日高値からの下落幅は2.43円幅、日足は22日から3日連続の陰線=三羽烏(黒三兵)となり、重要支持線の26日移動平均、一目均衡表でも26日基準線を割り込んだ。3月28日から陽転してきた新値三段抜きも陽転11手から23日に陰転、24日は陰転2手目となった。
2か月以上の上昇から反落開始して26日移動平均を割り込むのは昨年9月8日から11月6日まで上昇した後に同線割れして以来である。概ね5か月から6か月周期のサイクルにおいても、昨年11月高値から6か月を超過したことと、各種テクニカルの陰転状況等を踏まえれば、3月26日からの上昇が戻り一巡、下落期に転じ始めた可能性が懸念される姿だ。

【北朝鮮情勢】

トランプ米大統領は24日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長への書簡を公開して6月12日にシンガポールで予定されていた米朝首脳会談を中止すると表明した。書簡では北朝鮮による「激しい怒りと敵意をあらわにした最近の発言」により「現段階での開催は適切ではない」との考えを示した。「いつの日か正恩氏に会えることを期待している」とも述べ、北朝鮮側の姿勢によっては将来の会談開催に含みを残した形だが、「あなたは自国の核能力を自慢したが米国の核能力は非常に大きく強力だ。これらを使わずに済むことを神に祈っている」と北朝鮮への軍事力行使の可能性にも言及した。
トランプ大統領が中止の可能性を示唆していた段階から市場は有事リスク再燃と受け止めていたが、中止決定は来週以降になるのではないかとみていたため、北朝鮮が核実験場を爆破廃棄した直後の中止発表でサプライズ反応となった印象だ。

5月23日時点ではリスク回避で円高となる一方、ユーロ等が下落したためにドル指数は高値を更新し、クロス円での円高とドルストレートでのドル高が混在していた。しかし24日はリスク回避感がさらに強まる中で米長期債が安全資産として買い戻されたために米10年債利回りが低下し、ユーロ安等にも歯止めがかかった。このため24日は円高だけではなくドル安感も強まった。

25日朝、北朝鮮国営の朝鮮中央通信「米大統領が6月に予定されていた米朝首脳会談を中止すると発表したことは極めて遺憾」とする金桂冠第1外務次官の声明を報じた。また北朝鮮としては問題解決のため、いついかなる形ででも直接会談する意向があることを改めて米側に伝えるとした。この報道からドル円は買い戻されている。市場は北朝鮮側の強硬姿勢再燃、あるいは軍事的緊張が再燃するのではないかというところまで24日夜時点では警戒したわけだが、25日朝の北朝鮮反応は案外に低姿勢なものとなった。24日までの米国避難姿勢とは裏腹に米朝首脳会談実現へ向けた真剣さがあったことの裏返しであり、6月12日の首脳会談が中止されても近い将来に首脳会談実現へ漕ぎ着けたい姿勢が見て取れる。
ひとまずこの問題から一挙に軍事的緊張化へ走り、南北首脳会談の成果が台無しになることはなさそうと市場が受け止めれば、ドル円もいったん戻しに入る可能性も出てきたが、25日から28日朝にかけてはトランプ大統領、金委員長らの発言次第では緊張緩和も緊張激化もあり得ると注意したい。

【60分足 一目均衡表 サイクル分析】

【60分足 一目均衡表 サイクル分析】

60分足の一目均衡表では5月22日深夜に先行スパンから転落した。遅行スパンも22日に悪化し、両スパン揃っての悪化が続いてきた。25日午前の反発で遅行スパンは好転しやすい位置取りとなっているが、109.50円から110.00円にかけては先行スパンが分厚く待ち構えているのでこれを突破するには大きな推進力が必要と思われる。先行スパン到達では戻り売りも出やすいとみるが、潜り込む場合は上限へ向かう可能性ありとみる。またいったん遅行スパンが好転してもその後に再び悪化する場合、及び遅行スパンが好転できずに相場が安値更新へ進む場合は下落継続と考える。

60分足の相対力指数は23日から24日深夜安値へ一段安した際に指数のボトムが切り上がる強気逆行型を見せている。50ポイント超え、維持へ進むようなら戻りを試しやすい状況に入ると思われるが、50ポイントに到達しても維持できずに40ポイント割れしてくる場合は下げ再開を疑う。

概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、5月21日高値をサイクルトップとして下落してきたが、23日夕安値からいったん戻したため、24日朝時点では16日夜安値から5日目となる23日夕安値を直近のサイクルボトムとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとした。24日夜へ一段安したため底割れによる弱気サイクル入りとみる。今回のボトム形成期は28日から30日にかけての間と想定されるので、25日夜、週明けへさらに一段安する可能性ありとみるが、米朝問題での首脳発言等で大きく変動しているため、24日夜の戻り高値109.76円を超える場合は強気転換注意として110円から24日未明高値110.33円にかけてのゾーンを試す可能性ありとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、25日朝安値109.10円を支持線、24日夜高値109.76円を抵抗線とみておく。
(2)109.76円を超えないうちは109.10円割れから下げ再開とし、24日夜安値108.95円割れの場合は108.50円前後への下落を想定する。また109.25円以下で終了の場合は週明けも安値を試しやすいとみる。
(3)109.76円超えの場合は110円前後試しを想定するが、そこは戻り売りも出やすいとみる。110円超えの場合は24日未明高値110.33円試しまで上値抵抗が切り上がる可能性もあるが、そのためには25日朝時点よりもさらに緊張緩和感が拡大し、米朝首脳会談が延期されても実現する可能性が高まる必要もあるだろう。(了)<9:40執筆>

【当面の主な予定】

5/25(金)
08:30 (日) 5月 東京都区部消費者物価コア指数 前年比 (4月 0.6%、予想 0.6%)
17:00 (独) 5月 IFO景況指数 (4月 102.1、予想 102.0)
17:30 (英) 1-3月期 四半期GDP、改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
17:30 (英) 1-3月期 四半期GDP、改定値 前年比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注 前月比 (3月 2.6%、予想 -1.4%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (3月 0.1%、予想 0.5%)
22:00 (米) パウエル米FRB議長、リクスバンク350周年記念会合出席
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数 確報 (速報 98.8、予想 98.8)
24:45 (米) カプラン米ダラス連銀総裁、ボスティック米アトランタ連銀総裁、エバンス米シカゴ連銀総裁、講演

週明け28日のニューヨーク各金融市場は、米国のメモリアルデー(戦没者追悼の日)のため、すべて休場となる。これに伴い、週末25日の債券市場は午後2時までの早終いとなる。29日は全市場とも通常取引に戻る。

オーダー/ポジション状況

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