【概況】
11月23日未明のFOMC議事録公開から23日午前に111.06円まで下落、感謝祭祝日中は下げ渋っていたが11月27日朝の戻り高値111.69円から一段安となり、27日夜には110.84円を付けて111円割れとなった。そこまでのドル円下落背景はユーロ高、ドル指数続落、米長期金利低下であった。
28日は111円割れに対する突っ込み警戒感からやや戻していたが、28日夜の米連銀次期議長のパウエル理事による米上院公聴会証言、強い米経済指標、トランプ政権による税制改革法案が上院予算委員会で可決されたこと等を背景に続伸となり、27日朝高値に迫った。
29日未明には北朝鮮が弾道ミサイルを発射したが市場はさほど反応せず、リスク回避の円高は発生しなかった。29日夜のイエレン現議長による議会証言、米GDPの上方修正を背景に12月利上げを意識したドル高株高が進み、米長期債が下落=長期金利上昇となってドル円は27日朝高値を上抜いて112円台に到達した。
【イエレン議長議会証言、米GDP上方修正】
米連銀のイエレン議長は29日の議会上下両院合同経済委員会で証言を行ったが、22時には発言原稿が事前配布され、それをきっかけにドル高が加速した。
発言原稿では「健全な労働市場、物価安定に向けた緩やかな利上げは適切」「米経済は年初来、力強さを増している」等と記載され、12月FOMCでの利上げ姿勢を再認識させた。
米商務省が発表した7-9月期の実質GDP改定値は、季節調整済み年率換算で前期比プラス3.3%となり、速報値のプラス3.0%増から上方修正され、市場予想のプラス3.2%を上回った。上昇率は2014年7-9月期の5.2%増以来3年ぶりの高水準となった。
今週は27日の新築住宅販売、28日の米消費者信頼感指数等が市場予想を大きく上回り、29日の米GDPも上方修正される等、米経済指標の強さが目立った。加えてFRB次期議長、現議長の証言も続いたことから12月利上げ問題へ市場の意識が向かい、下落基調にあったドルが買い戻され、株の一段高によるリスク選考性で米長期債下落=利回り上昇となり、日米長期債利回り格差が再拡大する中でドル買い円売りへと進みやすくなったといえるだろう。
北朝鮮のミサイル発射については、米本土へ射程を伸ばしたとは言え、そこまでの進歩は予想内であり、着弾が日本海であったこと、グアム近海や米本土近海へ向けられなかったこと、米国主導の経済制裁強化に中国の制裁も厳しくなっていることで北朝鮮経済が絞められていることの効果も見えてきていることから、今回の発射騒動をもって軍事衝突リスクが一挙にエスカレートすることはないだろうと、市場は楽観している。安全資産、リスクオフに際して注目されるゴールドはミサイル発射に反応せず、29日夜に急落している。
【60分足 一目均衡表分析】
60分足の一目均衡表では、29日未明安値からの上昇で遅行スパンは好転、先行スパンを上抜いた。29日夜への続伸で両スパン好転は維持されているため、遅行スパン好転中はさらに高値を試しやすい状況にあると思われる。ただし、戻り高値更新がストップすると遅行スパンは悪化しやすくなるので、111.70円割れからは弱気転換注意、遅行スパン悪化からは下落再開を疑う。
60分足の相対力指数は23日安値から28日未明へ安値を更新する間に指数は安値を切り上げて強気逆行型を示した。29日夜の上昇で70ポイントを一時超えている。今のところ弱気逆行は見られていないが、29日深夜高値を上抜いてくる場合は弱気逆行パターンが見られるかどうか注意したい。また50ポイント割れから続落の場合は下げ再開を疑う。
概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、11月23日午前安値を前回のサイクルボトム、27日朝高値を同サイクルトップとして下落していたが、27日朝高値を上抜いたため、前回ボトムから3日目となる28日未明安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたと思われる。
今回のトップ形成期は30日朝から12月4日午前にかけての間と想定されるので、既にトップアウト注意期にある。
以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)29日深夜高値超えの場合は112.50円前後試しまで上値目途を引き上げるが、112.50円以上は反落警戒とみる。(2)仮に反落しても111.50円以上を維持するうちは12月1日へ上昇継続となる可能性が残るので112円超えから上昇再開とみる。
(3)111.70ドル割れを弱気転換注意、111.30円割れから続落の場合は新たな弱気サイクル入りの可能性を優先して28日未明安値試しを想定する。また111.50円割れの状況が続く場合は12月1日へ続落しやすいとみる。(了)<9:10執筆>
【当面の主な予定】
11月30日
08:50 (日) 10月鉱工業生産・速報値 (9月 -1.0%、予想 +1.8%)
09:00 (日) 岩田日銀副総裁、講演
10:00 (中) 国家統計局 製造業PMI (10月 51.6、予想 51.5)
10:00 (中) 国家統計局 非製造業PMI (10月 54.3)
10:30 (日) 原田日銀審議委員、講演
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.9万件、予想 24.0万件)
22:30 (米) 10月個人所得 前月比 (9月 +0.4%、予想 +0.3%)
22:30 (米) 10月個人消費支出 前月比 (9月 +1.0%、予想 +0.2%)
22:30 (米) 10月コアPCEデフレーター 前年比 (9月 +1.3%、予想 +1.4%)
23:45 (米) 11月シカゴPMI(購買部協会景気指数) (10月 66.2、予想 62.0)
12月1日
02:30 (米) クォールズFRB副議長、講演
03:00 (米) カプラン米ダラス連銀総裁、講演
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.25
ドル円 基本は揉み合い、地政学リスクに依然要注意(週報11月第3週)
先週のドル/円相場はドルが底堅い。しかし上値も重いようで、ザラ場ベースで一度も156円台を付けることはなく、前週高値を超えられなかった。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:川合 美智子
2024.11.25
ドル円 テクニカル週報(2024年11月第4週)
直近の日足は先週末の東京市場で(9:00am)前日足から下寄りのスタートとなりましたが、153.90-00の下値抵抗に跳ね返されて小陽線で切り返しています。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:上村 和弘
2024.11.25
ドル円週間見通し リスク回避的円高とユーロ安等によるドル高で板挟み(24/11/25)
11月15日高値156.74円から11月19日安値153.28円まで失速した後は、153円台へ下げたところを買われつつ155円台後半で売られるやや乱調な騰落を続けている。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2017.11.30
ドル円レンジを上抜けリスクは再びドル高に?(11/30夕)
30日の東京市場は、ドル高・円安。形成レンジのものは決して広くなかったが、「寄り付き安・大引け高」で、円は対NZドルを除き、クロスを含めて全面安の様相だった。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2017.11.30
ドル円一時112円台、GDP改定値大幅改善(11/30朝)
昨晩の海外市場でドルは強含み、ドル円も堅調に推移し一時112.15と約一週間ぶりに112円台を回復する場面もありましたが、その後は反落
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。