ドル円見通し 12月利上げを意識112円台回復(11/30)

米連銀のイエレン議長は29日の議会上下両院合同経済委員会で証言を行ったが、22時には発言原稿が事前配布され、それをきっかけにドル高が加速した。

ドル円見通し 12月利上げを意識112円台回復(11/30)

【概況】

11月23日未明のFOMC議事録公開から23日午前に111.06円まで下落、感謝祭祝日中は下げ渋っていたが11月27日朝の戻り高値111.69円から一段安となり、27日夜には110.84円を付けて111円割れとなった。そこまでのドル円下落背景はユーロ高、ドル指数続落、米長期金利低下であった。
28日は111円割れに対する突っ込み警戒感からやや戻していたが、28日夜の米連銀次期議長のパウエル理事による米上院公聴会証言、強い米経済指標、トランプ政権による税制改革法案が上院予算委員会で可決されたこと等を背景に続伸となり、27日朝高値に迫った。
29日未明には北朝鮮が弾道ミサイルを発射したが市場はさほど反応せず、リスク回避の円高は発生しなかった。29日夜のイエレン現議長による議会証言、米GDPの上方修正を背景に12月利上げを意識したドル高株高が進み、米長期債が下落=長期金利上昇となってドル円は27日朝高値を上抜いて112円台に到達した。

【イエレン議長議会証言、米GDP上方修正】

米連銀のイエレン議長は29日の議会上下両院合同経済委員会で証言を行ったが、22時には発言原稿が事前配布され、それをきっかけにドル高が加速した。
発言原稿では「健全な労働市場、物価安定に向けた緩やかな利上げは適切」「米経済は年初来、力強さを増している」等と記載され、12月FOMCでの利上げ姿勢を再認識させた。
米商務省が発表した7-9月期の実質GDP改定値は、季節調整済み年率換算で前期比プラス3.3%となり、速報値のプラス3.0%増から上方修正され、市場予想のプラス3.2%を上回った。上昇率は2014年7-9月期の5.2%増以来3年ぶりの高水準となった。
今週は27日の新築住宅販売、28日の米消費者信頼感指数等が市場予想を大きく上回り、29日の米GDPも上方修正される等、米経済指標の強さが目立った。加えてFRB次期議長、現議長の証言も続いたことから12月利上げ問題へ市場の意識が向かい、下落基調にあったドルが買い戻され、株の一段高によるリスク選考性で米長期債下落=利回り上昇となり、日米長期債利回り格差が再拡大する中でドル買い円売りへと進みやすくなったといえるだろう。

北朝鮮のミサイル発射については、米本土へ射程を伸ばしたとは言え、そこまでの進歩は予想内であり、着弾が日本海であったこと、グアム近海や米本土近海へ向けられなかったこと、米国主導の経済制裁強化に中国の制裁も厳しくなっていることで北朝鮮経済が絞められていることの効果も見えてきていることから、今回の発射騒動をもって軍事衝突リスクが一挙にエスカレートすることはないだろうと、市場は楽観している。安全資産、リスクオフに際して注目されるゴールドはミサイル発射に反応せず、29日夜に急落している。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では、29日未明安値からの上昇で遅行スパンは好転、先行スパンを上抜いた。29日夜への続伸で両スパン好転は維持されているため、遅行スパン好転中はさらに高値を試しやすい状況にあると思われる。ただし、戻り高値更新がストップすると遅行スパンは悪化しやすくなるので、111.70円割れからは弱気転換注意、遅行スパン悪化からは下落再開を疑う。

60分足の相対力指数は23日安値から28日未明へ安値を更新する間に指数は安値を切り上げて強気逆行型を示した。29日夜の上昇で70ポイントを一時超えている。今のところ弱気逆行は見られていないが、29日深夜高値を上抜いてくる場合は弱気逆行パターンが見られるかどうか注意したい。また50ポイント割れから続落の場合は下げ再開を疑う。

概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、11月23日午前安値を前回のサイクルボトム、27日朝高値を同サイクルトップとして下落していたが、27日朝高値を上抜いたため、前回ボトムから3日目となる28日未明安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたと思われる。
今回のトップ形成期は30日朝から12月4日午前にかけての間と想定されるので、既にトップアウト注意期にある。

以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)29日深夜高値超えの場合は112.50円前後試しまで上値目途を引き上げるが、112.50円以上は反落警戒とみる。(2)仮に反落しても111.50円以上を維持するうちは12月1日へ上昇継続となる可能性が残るので112円超えから上昇再開とみる。
(3)111.70ドル割れを弱気転換注意、111.30円割れから続落の場合は新たな弱気サイクル入りの可能性を優先して28日未明安値試しを想定する。また111.50円割れの状況が続く場合は12月1日へ続落しやすいとみる。(了)<9:10執筆>

【当面の主な予定】

11月30日
08:50 (日) 10月鉱工業生産・速報値 (9月 -1.0%、予想 +1.8%)
09:00 (日) 岩田日銀副総裁、講演
10:00 (中) 国家統計局 製造業PMI (10月 51.6、予想 51.5)
10:00 (中) 国家統計局 非製造業PMI (10月 54.3)
10:30 (日) 原田日銀審議委員、講演
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.9万件、予想 24.0万件)
22:30 (米) 10月個人所得 前月比 (9月 +0.4%、予想 +0.3%)
22:30 (米) 10月個人消費支出 前月比 (9月 +1.0%、予想 +0.2%)
22:30 (米) 10月コアPCEデフレーター 前年比 (9月 +1.3%、予想 +1.4%) 
23:45 (米) 11月シカゴPMI(購買部協会景気指数) (10月 66.2、予想 62.0)

12月1日
02:30 (米) クォールズFRB副議長、講演
03:00 (米) カプラン米ダラス連銀総裁、講演

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