ドル円見通し ユーロ安ドル高により上昇再開(9/27)

米連銀のイエレン議長は26日の講演で「インフレ率が目標の2%に戻るまで金融政策を据え置くのは賢明ではない」「ゆっくりし過ぎないよう注意するべきだ」と発言した。

ドル円見通し ユーロ安ドル高により上昇再開(9/27)

<概況・ポイント>

9月21日未明の米連銀FOMC声明で12月利上げの確率が高まったとしてドル円は111円台序盤から112円台後半まで上昇したが、トランプ大統領による独自制裁強化の大統領署名やこれに対する北朝鮮側の反発等から有事リスクが再認識されて22日午前には112円割れ、さらに26日未明には22日の安値も割り込んでFOMCからの上昇分の過半を解消した。
26日の日中も111円台中盤での持合いに止まっていたが、ユーロが一段と下落、さらにイエレン議長講演での発言等で12月の米利上げ感が一段と強まったこと等を背景に反発、112円台を回復してきた。

週末のドイツ連邦議会(下院)選挙において、メルケル首相の与党・保守党が第1党となり、連立政権を維持する見通しとなったものの、民族主義右派政党が躍進したためにドイツ、欧州全般への政治混迷リスクが意識され、ユーロは25日、26日と大幅下落している。ユーロ安によるドル高がドル円のドル高円安にも影響している。

米連銀のイエレン議長は26日の講演で「インフレ率が目標の2%に戻るまで金融政策を据え置くのは賢明ではない」「ゆっくりし過ぎないよう注意するべきだ」と発言した。またアトランタ連銀ボスティック総裁も「12月の段階で金利を変更しようとする考えについて現時点で極めて満足している」と述べた。21日未明のFOMCでは年内の利上げ見送り支持は4名、あと1回の利上げ支持が11名、2回の利上げ支持が1名となり、12月利上げに対する市場の予想確率はそれまでの五分五分から7割強へと上昇し、ドル円が112円台へ乗せる要因となった。北朝鮮情勢が円安の加速にはブレーキをかけているが、この日の議長発言によりFOMCからのドル高感が再認識されたという印象だ。

しかし、北朝鮮情勢が圧迫要因となっているため、21日午後高値から25日午前高値へと高値は切り下がっており、26日夜からの上昇でも現時点では25日午前高値を上抜けていたため、この高値切り下がりの範囲にある。
トランプ大統領はスペインのラホイ首相との会談後に共同会見した席上で北朝鮮問題に触れ、「われわれは第2の選択肢の準備を完全に整えた。これは望ましい選択肢ではないが、実行すれば破壊的だと言える」「これは軍事的選択肢と呼ばれる。そうせざるを得ないなら、実行するだろう」と述べた。
9月11日の国連安保理による制裁決議は、その前に出された米国の当初制裁案から大幅に譲歩された内容だったが、21日夜の大統領令はそれを補完するものとして経済制裁の強化、経済封鎖的に北朝鮮を追い込むような内容となった。またトランプ大統領による挑発的な発言も続いており、北朝鮮側は外相コメントとして「米国が宣戦布告したとみなす」と述べ、緊張感は高まっている。これらの動向は投資家のリスク回避感を拡大させ、ドル円の上昇にブレーキをかけている印象だ。

しかし、9月11日の国連制裁決議、15日の北朝鮮による弾道ミサイル発射騒動を消化しながら9月8日から上昇基調で推移してきたことは、市場心理としては北朝鮮情勢を意識しつつも、ドル円の高値を試したいところにあるともいえる。

21日高値112.71円の後は112円を挟んだ持合いであり、21日未明のFOMCから上昇する直前の水準を上回っているため、高値圏を維持しているともいえる。25日高値112.52円を上抜いてくるようなら21日からの高値切り下がり型の抵抗線突破となり21日高値試しへと進み、さらに21日高値を上抜くようなら高値圏持合いからの上放れとして113円台を目指す可能性が高まると思われる。しかし、21日高値を上抜けないうちは21日未明安値および111円割れから持合い下放れとなり、9月8日からの上昇一巡、円高再開となりかねない。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では、25日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落したが、26日夜の上昇で遅行スパンは再び好転、先行スパンも上抜き返している。このため、先行スパンを上回る状況を維持するうちは21日高値試し、高値更新から一段高へ進む可能性も維持されると思う。先行スパンから転落する場合は下げ再開の可能性も踏まえて111円前後試しへ失速する可能性を疑う。

60分足の相対力指数は25日深夜の下落後、相場は横ばいで推移する中、指数としては26日未明から26日午後にかけて安値を切り上げており、深夜の上昇で70ポイントに迫るところまで上昇した。50ポイントを上回るうちは上昇余地ありとみて置き、50ポイント割れからは下げ再開注意とみる。

概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、21日高値を当面のピークとして安値を形成する時間帯に入っていたが、21日未明安値から3日目となる26日未明安値ないしは午後安値で底を付けて上昇期に入ったと思われる。21日午後高値を基準とすれば今回の高値形成期は27日の日中から28日にかけての間と想定されるが、前回のサイクルトップ形成が短縮されていたため今回は延長される可能性もあるので、当面は112円を上回るうちは高値更新余地ありとみておき、112円割れを弱気転換注意、111.70円割れからは新たな弱気サイクル入りとして29日から10月3日にかけての間へ安値を付けに行くと想定する。

以上を踏まえて、27日の日中から28日へのポイントを示す。
(1)112円を上回るうちは21日午後高値試しとし、高値更新の場合は113円台前半への上昇を想定する。113円到達ではいったん売られやすいとみるが、その後も112円台後半を維持するうちは高値更新へ進みやすいとみる。
(2)112円割れからは弱気転換注意、111.70円割れからは弱気サイクル入りとして111円試しへの下落を想定する。111円台序盤では押し目買いも入りやすいとみるが、111円割れの場合はFOMCからの一段高状態解消となるため、下げ再開へ向かうと想定する。(了)<9:45執筆>

【当面の主な予定】

9月27日
21:30 (米) 8月耐久財受注 前月比 (7月 -6.8%、予想 +1.0%) 
23:00 (米) 8月中古住宅販売保留件数指数 前月比 (7月 -0.8%、予想 -0.5%)

9月28日
00:45 (加) ポロズBOC総裁講演、 01:55 記者会見
02:30 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁講演
03:00 (米) ブレイナードFRB理事講演
05:00 (NZ) RBNZオフィシャル・キャッシュレート発表 (現行 1.75%、予想 据え置き)
08:00 (米) ローゼングレン米ボストン連銀総裁講演
17:00 (欧) プラートECB理事講演
17:15 (英) カーニーBOE総裁講演
18:00 (豪) デベルRBAA総裁補佐講演
20:10 (欧) ラウテンシュレーガーECB専務理事講演
21:30 (米) 4-6月期GDP確報値 前期比年率 (改定値 3.0%、予想 3.1%)
21:30 (米) 4-6月期個人消費確報値 前期比年率 (改定値 +3.3%、予想 +3.2%)  
21:30 (米) 4-6月期GDPデフレーター確報値 前期比年率 (改定値 +1.0%、予想 +0.1%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 25.9万件、予想 26.5万件)
22:45 (米) ジョージ米カンザスシティ連銀総裁講演
23:00 (米) フィッシャーFRB副議長講演

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