ドル円見通し 北朝鮮騒動の円高一巡揺れ返す(8/30)

ドル円を積極的に買い進む材料には欠けること、8月17日未明のFOMC議事録公開、トランプ政権の迷走、25日夜のイエレン議長のジャクソンホール講演と、

ドル円見通し 北朝鮮騒動の円高一巡揺れ返す(8/30)

<概況>

8月25日夜、ジャクソンホール会合でのイエレン議長講演をきっかけに急落。28日は新たな手掛かりが無かった為に109円台序盤での下げ渋り持ち合いだったが、29日早朝の北朝鮮ミサイル発射騒動による午前には108.33円まで急落した。さらに夕刻には108.265円まで一段安となり、4月17日安値108.13円に迫った。しかし4月底割れには至らず、米国市場ではアジア市場時間で見られたほどのリスク回避感の拡大は見られなかったことから買い戻しに入り、米消費者信頼感指数等が良かったことをきっかけにさらに反騰、買いの連鎖反応で109円台後半まで戻した。
8月18日に下落した後、戻り高値は23日午前の109.82円、25日夜の109.84円であり、わずかに高値が切り上がっているものの110円に届かずに失速してきた。30日未明高値では109.89円まで上昇し、25日夜高値をわずかに上抜いており、三度目となる110円試しとなっている。

ドル円を積極的に買い進む材料には欠けること、8月17日未明のFOMC議事録公開、トランプ政権の迷走、25日夜のイエレン議長のジャクソンホール講演と、ドル安基調を継続させる材料で推移してきた流れが覆るには時期尚早と思う。ただし、北朝鮮動向による有事緊張リスクは、日本、アジア市場では相当に強烈ではあるが、米国市場ではそれほどでもないという印象であり、有事リスクによるクロス円の買い戻しによる円高はひとまず落ち着いたということだ。米トランプ大統領は北朝鮮非難の声明を発しているが、それよりも現下はテキサスの大洪水対策優先という事だろう。

S&P/ケース・シラーが発表した6月の20都市住宅価格指数(季節調整前)は前年比5.7%上昇となり、市場予想の5.6%上昇を上回った。
米コンファレンス・ボードが発表した8月の消費者信頼感指数は122.9となり、前月の120.0(改定値)から上昇、市場予想の120.3も上回った。 これらはドル高要因となった模様。

北朝鮮はグアム沖ではなく北太平洋に中距離弾道ミサイルを発射、ロフテッド軌道ではなく通常発射角度で2700キロを飛ばした。グアムを攻撃できる能力を示したわけだが、ロシア上空、韓国上空、グアム方面を避け、日本の上空といっても宇宙空間で通り越して日本の領海外へ落したのだから、これを以てただちに米国が軍事オプション実行へのレッドラインを超えたとは言い難い。
しかし、米朝間の緊張は高いまま継続してゆく可能性を排除できないだろう。9月9日には北朝鮮の建国記念日がある。28日には韓国紙報道で既に新たな核実験準備が完了しているとの報道もある。ひとまず、ミサイル騒動は一服だが、まだこの問題は継続してゆき、ドル円の戻りを抑えるだろうし、揺れ返しの上昇後に再び緊張を煽る事態が発生すれば、今度は楽観し過ぎたことの反動で、29日朝、日中よりも懸念度合が大きな円高を呼び起こしかねないと思う。

【60分足 一目均衡表分析】

【60分足 一目均衡表分析】

60分足の一目均衡表では29日夕安値からの急反騰で遅行スパンが好転。先行スパンを上抜き返した。このため、遅行スパン好転中はさらに高値を試す可能性が残る。110円前後を抵抗として30日夜へ反落の場合は深夜以降に遅行スパンは再び悪化しやすくなる点に注意するが、その際は先行スパン上部が下値支持線となってくると思われる。ただし、相当に乱高下してきているので、両スパン好転状態から一転して両スパン悪化となりかねない点にも注意する。

60分足の14本相対力指数は29日早朝の急落時と、その後の安値更新時とでは指数が切り上がって強気逆行を示していた。深夜急騰では70ポイントを超えているのでかなり買われ過ぎ状態となっている。まだ弱気逆行は見られていないが、相場が高値を更新しても指数が30日未明の高値を更新できない場合は弱気逆行となり、60ポイント割れから弱気転換へ向かう可能性もある点に注意する。

概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、8月24日安値を前回のサイクルボトムとし、25日夜高値を同サイクルトップとして下落期に入っていた。今回の安値形成期は29日午前から31日の日中にかけての間であったが、29日夕安値でボトムをつけて上昇期に入ったと思われる。新たな高値形成期は30日夜から1日夜にかけての間と想定されるので、30日夜にかけては一段高へ進む可能性が残る。ただし、8月19日未明高値、23日午前高値、25日夜高値と2日半程度でやや短縮気味に高値をつけては反落しているので、30日の日中からは高値警戒の時間帯と注意する。

以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)109.50円を支持線とし、上回る内は高値試しを優先する。110円前後は戻り売りの抵抗もかなりきついとみるが、仮に110円乗せの場合は110.20円台への上昇と、その後の反落警戒とみる。特に30日夜の米国市場時間から反落する場合は短期サイクルの高値をつけて弱気転換へ進む可能性に注意する。
(2)109.50円割れから続落の場合は弱気転換注意として109.00円前後試しを想定する。109円前後ではいったん買い戻しも入るとみるが、30日深夜以降に下落して109円割れしてくる場合は下落期入りと31日への続落注意とみる。(了)<10:00執筆>

【当面の主な予定】

8月21日から米韓軍事演習、31日まで

8月30日
メイ英首相来日(8月30日-9月1日)
21:15 (米) 8月ADP全国雇用者数 (7月 +17.8万人、予想 +18.5万人)
21:30 (米) 4-6月期GDP・改定値 前期比年率 (速報値 +2.6%、予想 +2.7%)
21:30 (米) 4-6月期個人消費・改定値 前期比年率 (速報値 +2.8%)
21:30 (米) 4-6月期GDPデフレーター・改定値 前期比年率 ( 速報値 +1.0%、予想 +1.0%) 
21:30 (米) 4-6月期コアPCEデフレーター・改定値 (+0.9%)
22:15 (米) パウエルFRB理事講演

8月31日
08:50 (日) 7月鉱工業生産・速報値 (6月 +2.2%、予想 -0.3%)
10:00 (中) 8月製造業PMI (7月 51.4、予想 51.3)
10:00 (中) 8月非製造業PMI (7月 54.5)
10:30 (日) 政井日銀審議委員講演
20:30 (米) 8月チャレンジャー人員削減予定数
21:20 (欧) ドンブレト独連銀理事講演、シェリング・オーストリア財務相講演
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.4万件、予想 23.6万件)
21:30 (米) 7月個人所得 (6月 +0.0%、予想 +0.3%)
21:30 (米) 7月個人消費 (6月 +0.1%、予想 +0.4%) 
21:30 (米) 7月コアPCEデフレーター前年比 (6月 +1.5%、予想 +1.4%)
22:45 (米) 8月シカゴ購買部協会景気指数 (7月 58.9、予想 58.5)
23:00 (米) 7月中古住宅販売保留件数指数 前月比 (6月 +1.5%、予想+0.5%)

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