<概況>
先週後半からの米経済指標が悪かったことに加え、週明けからはトランプ米大統領への弾劾の動きが強まり、特に17日は金融市場全般がリスク回避へと動き、ドル円は急落、米長期債上昇(利回り低下)、NYダウが372ドル安と大幅下落、リスク回避先としてゴールドが急騰という展開であった。
ドル円は17日深夜の急落で112円割れとなり、売りの連鎖で18日朝には110.52円まで下げた。ひとまず突っ込み警戒で111円台前半まで戻していたが、18日の欧州市場時間ではさらに一段安となって110.23円の安値をつけた。
安値更新からさらに続落かと懸念されたが、米経済指標が予想を上回る良好さだったこと、前日暴落的に下げたNYダウが下げ止まって反発気配となったことで17日深夜からのリスク回避的な展開がやや過剰反応だったとしてドル円も戻した。19日未明からは111円台半ばで持ち合いとなっている。
【米大統領の弾劾について】
米合衆国憲法第2条第4節によれば、大統領、副大統領及び合衆国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪又はその他の重罪及び軽罪につき弾劾され、かつ有罪の判決を受けた場合は、その職を免ぜられる。大統領が弾劾、罷免されるには、まず下院が大統領を「反逆罪、汚職、その他の重罪および軽罪」の疑いにより弾劾裁判にかけることを過半数をもって支持すること、さらにそれを受けて上院が3分の2以上の賛成で弾劾に対して有罪とすることが必要である。有罪となれば罷免される。ビル・クリントン大統領に対する弾劾裁判は上院で否決された。またウォーターゲート事件の際にはニクソン大統領が弾劾裁判にかけられたが、判決を前に自ら辞職している。
トランプ大統領がコミー前FBI長官を解任したことに絡み捜査妨害行為があった可能性、ロシアへの機密情報漏洩等が問題視されている。個別には刑事事件的な犯罪性はないと思われるが、様々な問題行動により、微罪の積み重ねでも共和党の反トランプ派が同調すれば大統領弾劾へ進む可能性もゼロではない。
暫くはこの問題が尾を引くことになりそうだ。
【予算教書とFOMC議事録】
トランプ政権は23日に2018会計年度(2017年10月〜2018年9月)の予算教書を発表する予定だ。行政管理予算局(OMB)のマルバニー長官が17日に明らかにしている。3月の予算骨格に税収、財政赤字見通しなどが盛り込まれ、予算の全体像が明らかとなる。
5月24日には5月2、3日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が公表される。そこで今後の金融政策正常化プロセスと意欲の度合いが計られる。
この2つの事案から金融市場全体の方向性も見えてくるのではないかと思われる。その際に、大統領弾劾への動きが強まり、予算教書に失望感が高まり、FOMCの追加利上げへの姿勢が後退する印象となってゆけば、ドル円にとってはリスク回避と米長期金利低下による一段安へ進む可能性が高まることになるだろうし、大統領弾劾への動きがトーンダウンし、予算への期待、FOMCの利上げ姿勢から米長期金利上昇となるならドル円もリスク回避感後退によりいったん戻しに入る可能性も出てくるのだろう。
そうした重要イベントを来週に控えているため、目先は戻りも限定的となり、一段安の際には突っ込み警戒感も出やすいという市場心理だろうか。
【60分足 一目均衡表分析】
18日ロンドン市場安値で110円割れを回避して戻したが、19日午前は遅行スパンが好転したものの、先行スパンの下限が分厚い抵抗となって戻りを抑えている印象だ。
概ね3日から5日周期の短期的な底打ちサイクルで見れば、15日朝安値から4日目となる18日夜安値で底をつけて戻したと思われる。16日未明高値を基準として今回の戻り高値形成は19日未明から23日未明にかけての間と考えられる。このため、早ければ19日午前までに戻り一巡、新たな下げに入る可能性もあるが、111円処(26本基準線近辺)を維持する内は19日夜にかけてもう一段高へ戻す可能性も残る。その場合は先行スパン上限の112円試しとみるが、先行スパンを突破して上昇が本格化するには材料不足と思われるので、戻り一巡からの下げ再開リスクをやや高めに考え、111円割れ=基準線割れからは下げ再開を疑う。
19日夜へ110.50円以下へと下げる場合は18日夜安値割れから110.00円、さらに109.70円前後へ下落する可能性を考える。(了)<9:40執筆>
【19日から20日の予定】
5月19日
22:15 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁講演
イラン大統領選挙
5月20日
トランプ米大統領外遊(サウジアラビア、イスラエル、ローマ)
オーダー/ポジション状況
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