日銀会合への思惑で夕刻に乱高下、米CPI発表後の下落も買われる
〇昨日のドル円、日銀利上げをめぐる報道で151.04へ急落後、152.78まで急伸して高値圏を維持
〇夜の米CPI発表後に151.92へ反落するも、長期利回り上昇で12/12早朝152.71へ戻す
〇来週の日銀会合、一部審議委員は利上げ賛成だが、全体としては見送りの公算
〇米CPIは予想と一致で12月利下げは濃厚だが、来年の利下げペースは緩慢になるとの見方
〇151.92を上回るうちは一段高余地ありとし、152.78超えからは153円台前半への上昇を想定
〇151.92を割り込んでも早々に152円台を回復する場合は上昇再開とする
【概況】
ドル円は12月11日未明に152.17円へ上昇して12月3日深夜安値148.64円以降の高値とし、目先の上昇一服で151円台中盤へ下げていたが、夕刻に一部メディアが「日銀の一部審議委員が12月会合で利上げが提案されれば反対しない見通し」と報じたことで18時過ぎに151.04円へ急落したが、「日銀は利上げを急いでいない」とも報じられたことで急速に買い戻されて19時過ぎに152.78円まで急伸し、その後の152.50円割れを買われて高値圏を維持した。
22時半の米11月CPI上昇率が前月から拡大したものの市場予想と一致したことで、12月FOMCの0.25%利下げは濃厚との見方で発表後に151.92円へ反落したが、インフレ上振れリスクにより米国の利下げペースは緩慢になるとの見方も根強く、米長期債利回りは9日から3連騰で上昇したため、12日早朝には152.71円へ戻し、12日午前序盤は152.50円を挟んだ揉み合いで推移しつつ、昨夕からの一段高状態を維持している。
【来週の日銀会合、一部審議委員は利上げ賛成だが見送りの公算】
11日夕刻に、一部メディアは「日銀は消費者物価の上昇が加速せずに海外経済の不確実性が強まっている中では追加利上げを急ぐ状況にはないと認識している」としつつ、「今後のデータや為替動向次第では来週の利上げもあり得る」との認識だと報じた。また「一部の政策委員は12月会合で利上げが提案された場合、反対しない見通しだ」とも報じられた。
報道当初は一部委員の利上げ賛成が注目されて円高を招いたが、全体としては12月利上げ見送りの公算で、来年のトランプ政権発足後の世界情勢を見定めつつ1月利上げを検討する姿勢という印象だったため、円高から一転して円安へ風向きが変わったようだ。市場予想では12月利上げの確率は一時6割強だったものの現在は2割程度で、1月利上げの確率は6割強とされている。
【米CPIは予想と一致、来週のFOMC利下げ判断に寄与】
米労働省が11日に発表した11月CPI(消費者物価指数)上昇率は前月比0.3%で10月の0.2%を上回ったが予想と一致、前年同月比は2.7%で10月の2.6%を上回り3か月連続で伸びが拡大したが予想と一致した。変動の激しい食品・エネルギーを除くコアCPI上昇率は前月比0.3%で10月と変わらず予想と一致し、前年同月比は3.3%で10月と変わらず予想と一致した。コアCPIの内訳ではモノの価格が前年同月比0.6%低下する一方でサービス価格は4.6%上昇しており、インフレ低下傾向が停滞している印象を与えた。
インフレ低下が顕著に進んでいないものの、低下傾向そのものは変わらないとして、12月17-18日のFOMCでは0.25%の追加利下げが決定されるだろうとみられているが、2025年の利下げペースは9月会合で示した4回から3回ないし2回程度まで緩む可能性が高い印象を与えた。
【米10年債利回りは3日連続上昇、ダウ続落の一方でナスダックは高い】
12月11日の米長期債利回りは総じて上昇した。米CPI発表を受けて来週のFOMCで0.25%利下げが決定されるとの見方が強まる一方で、来年の財政赤字拡大やインフレ再燃への懸念により利下げペースが緩慢になるとの見方が勝り債券売り・利回り上昇となった。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.04%上昇の4.27%となり9日から3連騰し、30年債利回りも前日比0.06%上昇の4.48%となり9日から3連騰、政策金利動向により敏感な2年債利回りは一時4.195%へ上昇してから失速したものの前日比0.01%上昇の4.16%で9日から3連騰とした。
米財務省が11日に発表した11月財政赤字は3667億6300万ドルで前年同月比17.0%増となり、2025会計年度(2024年10月から2025年9月)の累計は6242億1300万ドルで前年同期比64.0%増と大幅に拡大した。トランプ次期政権発足からさらに財政支出が拡大するとみられるため、米国の赤字問題、国債増発による債券安・長期債利回り上昇を招きやすい状況になるのではないかと懸念されている。
一方でNYダウは12月4日に史上最高値を更新してから下落に転じており、11日も前日比99.27ドル安となり5営業日続落したが、ナスダック総合指数は前日比347.65ポイント高と上昇し、高値で20055.93を付けて取引時間中の史上最高値を更新、終値も20034.89で史上最高値を更新した。S&P500指数は前日比49.28ポイント高と上昇したが史上最高値更新には至らなかった。
ダウが調整安を続けているものの、総じて8月以降の上昇基調を継続しており、トランプ次期政権発足後の株高継続感に支えられている印象だ。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は12月11日夕刻の乱高下で151.04円へ下落してから152.78円へ反騰し、その後の152円割れも買われて一段高状態を維持しているので、11日夕安値を起点として新たな上昇期に入ったとみて13日深夜から18日未明にかけての間への上昇を想定するが、乱高下が続く可能性もあるので11日深夜反落時安値151.92円割れからは弱気転換注意とし、151.50円割れからは11日夕安値を試す下落を想定する。
60分足の一目均衡表では10日未明への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜き、その後も両スパン揃っての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、26本基準線割れを弱気転換注意とし、遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて先行スパンの上下限を試す下落を想定する。先行スパンからの転落を回避する内は遅行スパンがその後に好転するところからは上昇再開とするが、先行スパンから転落する場合は12月3日深夜以降の戻り一巡による下落期入りを疑う。
60分足の相対力指数は10日未明から11日未明にかけての一段高に際して指数のピークが切り下がり、11日夜の一段高に際しても指数のピークが切り下がっている。弱気逆行型につかまっているものの底固く一段高を繰り返しているため、50ポイントを割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとして65ポイント超えからは70ポイント台後半への上昇を想定するが、45ポイント割れからはいったん下げに入るとみて30ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、151.92円を下値支持線、152.78円を上値抵抗線とする。
(2)151.92円を上回るうちは一段高余地ありとし、152.78円超えからは153円台前半への上昇を想定する。152.25円以上は反落警戒とするが、明朝に152円を上回っている場合は13日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)151.92円を割り込んでも早々に152円台を回復する場合は上昇再開として一段高余地ありとするが、151.92円割れから続落の場合は11日夕安値151.04円試しとし、151.50円以下での推移なら13日も安値試しへ向かいやすいとみる。151.04円を割り込む場合は150.0円台前半へ下値目途を引き下げる。
来週の日銀会合へ向けた関係者発言に関する報道等で11日夕刻に乱高下したが、まだ暫くは類似報道をきっかけに波乱しやすいと注意する。
【当面の予定】
12/12(木)
休場 メキシコ
17:30 (ス) スイス中銀 政策金利 (現行 1.00%、予想 0.75%)
22:15 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 3.40%、予想 3.15%)
22:30 (米) 11月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (10月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 11月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (10月 2.4%、予想 2.6%)
22:30 (米) 11月 コアPPI(食品エネルギー除く) 前月比 (10月 0.0%、予想 0.2%)
22:30 (米) 11月 コアPPI(食品エネルギー除く) 前年同月比 (10月 3.1%、予想 3.2%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.4万件、予想 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 187.1万人、予想 187.5万人)
22:45 (欧) ラガルドECB総裁、記者会見
12/13(金)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (7‐9月 13、予想 13)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業製造業先行き (7‐9月 14、予想 12)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (7‐9月 34、予想 33)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業非製造業先行き (7‐9月 28、予想 28)
08:50 (日) 10-12月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (7‐9月 10.6%、予想 10.0%)
09:01 (英) 12月 GFK消費者信頼感 (11月 -18、予想 -18)
13:30 (日) 10月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 3.0%)
13:30 (日) 10月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 1.6%)
13:30 (日) 10月 設備稼働率 前月比 (9月 4.4%)
16:00 (独) 10月 貿易収支 (9月 170億ユーロ、予想 157億ユーロ)
16:00 (独) 11月 WPI(卸売物価指数) 前月比 (10月 0.4%)
16:00 (英) 10月 月次GDP 前月比 (9月 -0.1%、予想 0.1%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -0.5%、予想 0.3%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 -1.8%、予想 0.2%)
16:00 (英) 10月 貿易収支・物品 (9月 -163.21億ポンド、予想 -162.00億ポンド)
16:00 (英) 10月 貿易収支 (9月 -34.62億ポンド、予想 -32.50億ポンド)
19:00 (欧) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -2.0%、予想 -0.1%)
19:00 (欧) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 -2.8%、予想 -2.3%)
22:30 (米) 11月 輸入物価指数 前月比 (10月 0.3%、予想 -0.3%)
22:30 (米) 11月 輸出物価指数 前月比 (10月 0.8%、予想 -0.3%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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