ドル円見通し 156円手前から反落、米長期債利回り動向とウクライナ情勢から方向感を探る(24/11/21)

20日夜にかけての上昇で18日夜高値を超えて156円に迫ったことで、二段下げ型の調整を消化して上昇トレンドの再構築に挑戦している印象だ。

ドル円見通し 156円手前から反落、米長期債利回り動向とウクライナ情勢から方向感を探る(24/11/21)

156円手前から反落、米長期債利回り動向とウクライナ情勢から方向感を探る

〇昨日のドル円、夜にかけての上昇で11/18夜高値155.35を超え、156円に迫る
〇クックFRB理事の利下げ停止言及等により、米長期債利回り上昇したことが背景
〇ウクライナ情勢による圧迫感、リスク回避的なドル買いの一方、円も買い戻されやすい状況
〇本日は日銀総裁講演、米失業保険申請件数、10月CB景気先行指数等の発表予定
〇155.88超えからは15日午前高値156.74を試す上昇を想定
〇154.80割れからは154円前後への下落を想定

【概況】

ドル円は米大統領選でのトランプ氏勝利によるドル高・米長期債利回り上昇により11月15日午前高値で156.74円を付けて9月16日安値139.57円以降の最高値としたが、当面の円売りドル買い一巡で18日朝安値153.83円へ下落し、18日夜に155.35円まで戻したところを再び売られ、ウクライナ情勢の緊迫化によるリスク回避的な円買いにより19日夕刻に153.28円へ一段安した。
その時点では11月6日安値151.28円と8日安値152.14円、18日安値153.83円をほぼ1直線で結ぶ上昇チャンネルの支持線を割り込んだのだが、20日夜にかけての上昇で18日夜高値を超えて156円に迫ったことで、二段下げ型の調整を消化して上昇トレンドの再構築に挑戦している印象だ。

20日夜はクックFRB理事が労働市場が底固くインフレが再燃する場合は利下げ停止もあり得るとの見方を示し、他のFRB高官も追加利下げの可能性を持たせつつ慎重姿勢を見せたことで米長期債利回りが上昇し、20日夜にかけてドル円の上昇に寄与した。
21日は植田日銀総裁の講演、夜に米週間新規失業保険申請件数、11月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、10月米中古住宅販売、10月米CB景気先行指数などが予定されている。

【ウクライナ情勢による圧迫感】

ウクライナは19日に米国製長距離ミサイルでロシア領内を攻撃し、プーチン大統領は核兵器の使用条件を示した核ドクトリンを改定してウクライナを軍事支援する欧米等も核を含む攻撃の対象になり得ると警告して緊張が高まったが、バイデン政権はウクライナに対人地雷を供与すると決定し、ウクライナは20日に英国が供与した長距離巡航ミサイル「ストームシャドー」をロシア領内に撃ち込んだ。
ロシアのラブロフ外相が「核戦争の勃発を回避するためあらゆる手段を講じる」との姿勢を示したことでウクライナ関連の緊張感が一時緩んだものの、ウクライナ戦争を強力に後押ししてきたバイデン政権がトランプ政権平行する前に緊張をさらに高める可能性もあり、情勢は予断を許さない局面に入っている。
有事拡大リスクが高まる場合、リスク回避でドルが買われてユーロ等が下落する一方で円もリスク回避的に買い戻されやすい。

【クックFRB理事は利下げ停止に言及】

FRBのクック理事は20日の講演で、「適切な金融政策動向は金利引き下げ方向」とし、「インフレと労働市場の動向が予想通りに進めば、中立金利への緩やかな利下げを継続する」としたものの、「インフレ鈍化の進展が停滞し労働市場が底堅さを保つなら、利下げ停止を視野に入れる可能性がある」と述べた。トランプ政権発足後に情勢変化があれば利下げサイクルの中断ないし早期終了もあり得ると市場は受け止めた。
ボストン連銀のコリンズ総裁も20日に、「現行政策金利水準は少なくとも幾分景気抑制的」であり、「いくらか追加金融緩和が必要だ」と述べ、「雇用の伸びは減速しており、これ以上の雇用鈍化は望ましくない」として労働市場統計の悪化状況により利下げペースも決まるとの認識を示した。

FRBのボウマン理事は20日に、「インフレ鈍化進展は停滞している」とし、「物価安定の責務を巡るリスクが雇用最大化よりも大きい」と述べて、雇用情勢よりもインフレの高止まりが問題との認識を示した。
19日にはカンザスシティー連銀のシュミッド総裁が「大規模な財政赤字が発生する場合にFRBはインフレ抑制のため高金利政策を取らざるを得ない」としてトランプ次期米政権が関税引き上げや移民規制を強化する等により「インフレや雇用に影響をもたらせばFRBは対応する」と述べている。
11月14日にパウエルFRB議長が利下げを急がないと述べて以降、FRB高官らの発言は利下げ余地に言及しつつ慎重な姿勢であり、20日のクック理事発言はよりタカ派的に一歩踏み込んでいる印象を与えた。

【米長期債利回りは概ね上昇、米主要株価指数はまちまち】

11月20日の米長期債利回りは前日の低下から総じて持ち直した。
長期金利指標の10年債利回りは11月15日に一時4.51%をつけて9月17日の3.60%以降の最高としてから低下したが、19日は一時4.34%まで下げてから4.40%まで持ち直し、20日は一時4.44%まで戻してから伸び悩んだものの前日比0.01%上昇の4.41%で確りした。
30年債利回りは前日比0.01%上昇の4.60%、政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.04%上昇の4.32%となった。
米財務省による20年債入札(160億ドル)が低調だったことが利回り上昇要因となる一方、ウクライナ情勢を意識した米国債への安全資産買いが利回り上昇を抑えた印象だ。

一方で米主要株価指数はまちまち。11月11日に3指数揃って史上最高値を更新した後は方向感を模索中という印象だ。NYダウは前日比139.53ドル高、ナスダック総合指数は21.33ポイント安、S&P500指数は0.13ポイント高だった。ウクライナ情勢への警戒感が上値を抑え、トランプ次期政権人事報道で医療関連が買われたり、米長期債利回り上昇に圧迫されて買い控えられた側面もあるようだ。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は19日夕刻に153.28円まで一段安してから20日未明に154.79円へ切り返したため、20日午前時点では19日夕安値を起点として戻りを試す流れとし、18日夜高値155.35円を上抜く場合は20日の日中から22日午前にかけての間への上昇を想定するとした。
20日夜に155.88円へ上昇して18日夜高値を上抜いたため、15日午前高値からの二段下げ調整を消化して新たな上昇トレンド構築へ向かう可能性を示したと思われるが、15日以降は乱調な展開であり、154円前後へ再び下落して押し目形成とできるか試す可能性もあると注意し、154.50円割れからは弱気転換注意として154円割れを試す流れとみる。

60分足の一目均衡表では20日夜への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いた。その後はややジリ安の推移で遅行スパンは悪化しやすい位置にあるが、先行スパンを上回っているうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とし、先行スパンから転落する場合は下落が長引くとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は20日夜の上昇で70ポイントを超えたがその後の反落で50ポイント割れを試している。60ポイント台回復からは上昇再開として70ポイント台を試すとみるが、45ポイント割れからは下落継続とみて30ポイント台前半への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、154.80円を下値支持線、20日夜高値155.88円を上値抵抗線とする。
(2)155円を上回るか一時的に割り込んでも回復する内は上昇余地ありとし、20日夜高値155.88円超えからは15日午前高値156.74円を試す上昇を想定する。156.74円手前は反落注意とするが、155.50円を上回っての推移か直前高値から1円を大きく超える反落がみられないなら、22日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)154.80円割れからは154円前後への下落を想定する。154円前後は買われやすいと注意するが、154.50円以下での推移なら22日も安値試しへ向かいやすいとみる。米経済指標やFRB高官発言、ウクライナ情勢等で下げ足が速まる場合は19日夕安値153.28円へ迫る可能性もあると注意する。

【当面の予定】

11/21(木)
トルコ中銀、南ア中銀 政策金利発表
14:10 (日) 植田日銀総裁、パリのフォーラムで講演
22:30 (米) 11月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (10月 10.3、予想 8.0)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.7万件、予想 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 187.3万人、予想 187.3万人)
22:45 (米) ハマック・クリーブランド連銀総裁、会議挨拶
24:00 (欧) 11月 消費者信頼感速報値 (10月 -12.5、予想 -12.4)
24:00 (米) 10月 コンファレンス・ボード景気先行指数 前月比 (9月 -0.5%、予想 -0.3%)
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数・年率換算 (9月 384万件、予想 395万件)
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数 前月比 (9月 -1.0%、予想 2.9%)
26:25 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、質疑応答
26:30 (米) ハマック・クリーブランド連銀総裁、懇談会

11/22(金)
08:30 (日) 10月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (9月 2.5%、予想 2.3%)
08:30 (日) 10月 全国CPI(生鮮食料品除く) 前年同月比 (9月 2.4%、予想 2.2%)
08:30 (日) 10月 全国CPI(生鮮食料品・エネルギー除く) 前年同月比 (9月 2.1%、予想 2.2%)
09:01 (英) 11月 GFK消費者信頼感 (10月 -21、予想 -22)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.3%、予想 -0.3%)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 3.9%、予想 3.4%)
16:00 (独) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
16:00 (独) 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 -0.2%、予想 -0.2%)
17:30 (独) 11月 HOCB製造業PMI速報値 (10月 43.0、予想 43.1)
17:30 (独) 11月 HOCBサービス業PMI速報値 (10月 51.6、予想 51.8)
17:30 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、講演
18:00 (欧) 11月 HOCB製造業PMI速報値 (10月 46.0、予想 46.0)
18:00 (欧) 11月 HOCBサービス業PMI速報値 (10月 51.6、予想 51.6)

18:30 (英) 11月 S&PG製造業PMI速報値 (10月 49.9、予想 50.0)
18:30 (英) 11月 S&PGサービス業PMI速報値 (10月 52.0、予想 52.0)
23:45 (米) 11月 S&PG製造業PMI速報値 (10月 48.5、予想 48.9)
23:45 (米) 11月 S&PGサービス業PMI速報値 (10月 55.0、予想 55.1)
24:00 (米) 11月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 73.0、予想 74.0)


注:ポイント要約は編集部

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