トランプ・ラリーの円売り一巡で急落、「化け線」か「勢力線」か見極め
〇先週のドル円、15日にパウエル議長のタカ派発言に156.74の高値をつけるもトランプラリー一巡で反落
〇週末にかけては加藤財務相の円安牽制等に155円台に下落し、16日3時台には一時153.86円へ急落
〇米10年債利回り、一時4.51%をつけて9/17の3.60%以降の最高を更新してから低下、4.44%で終了
〇ドル円、加藤財務相の牽制発言以外決定的なドル売り材料見られず、持ち高調整による売りの連鎖反応か
〇トランプ次期政権下のインフレ再燃懸念と米利下げペース鈍化見通しによりドル高基調は継続しやすい
〇15日の日足大陰線を高値での一時的「化け線」とするか弱気の「勢力線」とするか試される
〇155円以下に留まるうちは一段安警戒とし、153.86割れからは153円前後への下落を想定
〇早々に155円台を回復する場合、急落調整一巡による上昇再開とみて156.74へ迫ってゆく上昇を想定
【概況】
ドル円は11月15日早朝の講演でパウエルFRB議長が利下げを急がない姿勢を示したことをきっかけとしたドル高で15日午前に156.74円を付けて9月16日安値139.57円以降の最高値としたが、米大統領選でのトランプ氏勝利と米上下院で与党共和党が過半数を制したことによるトランプ・ラリーによるドル買い円売りが一巡し、加藤財務相による円安けん制発言やG20首脳会議を控えた持ち高調整により売り優勢となり15日夕刻に155円台前半へ下落した。
15日夜の米経済指標は小売売上高やNY連銀製造業景況指数が予想を上回る堅調さを示す一方で鉱工業生産が低調で輸出入物価が再上昇するなど強弱まちまちで決め手に欠き、ドル円は深夜に155.75円まで戻してから下落を再開して16日3時台には153.86円へ急落し、154円割れに対する突っ込み警戒感でやや持ち直して154.28円で週を終えた。
【米小売は堅調、鉱工業生産は低調】
15日に発表された米経済指標は強弱まちまちだった。
米商務省による10月小売売上高は前月比0.4%増となり9月の0.8%増(速報の0.4%増から大幅上方修正)から鈍化したが市場予想の0.3%増を上回った。変動の激しい自動車・同部品を除くと0.1%増で予想の0.3%増を下回り、ガソリンを除き0.4%増、自動車・同部品・ガソリンを除き0.1%増だった。
米ニューヨーク連銀による11月製造業景況指数は31.2となり10月のマイナス11.9から大幅上昇して市場予想のマイナス0.7を大幅に上回った。
米FRBによる10月鉱工業生産指数は前月比0.3%低下の102.3となり市場予想と一致したが9月の0.5%低下(速報の0.3%低下から下方修正)に続き2カ月連続低下した。設備稼働率も77.1%で9月の77.4%および市場予想の77.2%を下回った。
米労働省による10月の輸入物価指数は前月比0.3%上昇で予想の0.1%低下に反して9月の0.4%低下から再加速し、輸出物価指数も0.8%上昇で予想の0.1%低下に反して9月の0.6%低下から再加速した。
総じて12月利下げを排除しない内容ながら利下げ休止の可能性もアリとするものと市場は受け止めた。
【米長期債利回り上昇はやや頭打ち、米主要株価指数は上昇一服】
11月15日の米長期債利回りはまちまちの動き。
長期金利指標の10年債利回りは一時4.51%をつけて9月17日の3.60%以降の最高を更新してから低下して前日比変わらずの4.44%で終了し、週間では8日終値4.31%から0.20%上昇した。
30年債利回りは前日比0.03%上昇の4.62%で終了、一時4.66%をつけたが11月6日に付けた9月以降の最高である4.68%には届かず、週間では8日終値の4.47%から0.15%上昇した。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.04%低下の4.31%で終了、一時4.38%をつけて9月25日の3.51%以降の最高としてから上昇幅を削り、週間では8日終値4.34%から0.03%低下した。
一方、米主要株価指数はトランプ・ラリーの買い一巡で軟調推移となり、NYダウは前日比305.87ドル安で14日の207.33ドル安から続落し、ナスダック総合指数は427.53ポイント安で12日から4営業日続落、S&P500指数は78.55ポイント安で14日の36.21ポイント安から続落した。いずれも11月11日に史上最高値を更新した後は上昇一巡で調整期に入っている印象だ。
【7月3日以降の下げ幅に対する4分の3戻し、市場介入警戒水準に達する】
加藤財務相は15日の会見で「投機的な動向を含め、為替市場の動向を極めて高い緊張感を持って注視する」と円安をけん制したが、それ以外では決定的な円買いドル売り材料がみられず、高値警戒水準に達したことによる持ち高調整による売りの連鎖反応で午前高値から翌朝にかけて3円近い下落規模に至ったと思われる。
しかし下落規模は政府日銀による市場介入時に近い印象もある。直近では7月11日(3兆1678億円)の市場介入で当日高値161.75円から157.42円まで下落幅4.33円となり、12日にも2兆3670億円の連続介入があり、7月31日の日銀追加利上げを経て8月6日安値141.69円まで大幅下落した経緯がある。
4月29日に5兆9185億円、5月1日に3兆8700億円の介入を行った際には、4月29日高値160.16円から5月3日安値151.85円まで5営業日で下落規模は8.31円となっている。
中長期的にはトランプ次期米政権による関税拡大、法人税率引き下げ、国債増発等によるインフレ再燃懸念とFRBの利下げペース鈍化見通しによるドル高基調は継続しやすいと思われるが、150円以上の水準は2022年10月21日の市場介入などを含めて介入警戒水準にあるため、米長期債利回りの上昇にやや頭打ち感が出ている現状では一段高(円安継続)へ進むためにはもう一つ強力な押し上げ材料が欲しいということだろうと思われる。
【11月15日の日足大陰線を「化け線」とするか弱気の「勢力線」とするか試される】
上昇途中で日足が大陰線で下げる場合、買い方の利食い売りと高値をつかんだ売り方の狼狽売りが一時的な急落商状を招いた「化け線」だとすれば、翌日からの反騰で大陰線の中心値を超えるところから上昇再開に入り、高値更新からは大陰線による下げ幅の倍返しへ進むケースが多い。しかし、大陰線の後も大陰線の下部に留まるか続落陰線となる場合は、大陰線が下落開始への「勢力線」となり、3営業日連続陰線(三羽烏)へ進む場合は9月16日以降の上昇一巡による下落期入りとして下落が長引いてゆくことになりやすい。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月16日早朝安値153.86円を下値支持線、155.00円を上値抵抗線とする。
(2)急落後のリバウンドで戻しても155円以下に留まるうちは一段安警戒とし、153.86円割れからは153円前後への下落を想定する。153円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、153.86円を下回っての推移が続き、一時的に戻しても戻り高値切り下がりに終わる場合は翌日以降の一段安警戒として先行きで152円前後へ向かう流れと考える。
(3)早々に155円台を回復する場合は、一時的な急落調整一巡による上昇再開とみて15日午前高値156.74円へ迫ってゆく上昇を想定する。156円以上は口先介入等も出やすいと注意し、15日午前高値とのダブルトップ形成までにとどまり下落再開となるケースにも注意する。
【当面の予定】
11/18(月)
休場 メキシコ
G20首脳会議(11/19日まで)
06:45 (NZ) 7-9月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (4-6月 1.1%)
08:50 (日) 9月 機械受注 前月比 (8月 -1.9%、予想 1.5%)
08:50 (日) 9月 機械受注 前年同月比 (8月 -3.4%、予想 2.1%)
19:00 (欧) 9月 貿易収支・季調済 (8月 110億ユーロ)
19:00 (欧) 9月 貿易収支・季調前 (8月 46億ユーロ)
24:00 (米) 11月 NAHB住宅市場指数 (10月 43、予想 42)
24:00 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、挨拶
27:30 (欧) ラガルドECB総裁、講演
11/19(火)
G20首脳会議最終日
09:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調済 (8月 315億ユーロ)
19:00 (欧) 10月 HICP(調和消費者物価指数)改定値 前年同月比 (速報 2.0%)
19:00 (欧) 10月 コアHICP(食品エネルギー除く)改定値 前年同月比 (9月 2.7%)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数・年率換算 (9月 135.4万件、予想 133.8万件)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数 前月比 (9月 -0.5%、予想 -1.2%)
22:30 (米) 10月 住宅着工許可件数・年率換算 (9月 142.8万件、予想 144.2万件)
22:30 (米) 10月 住宅着工許可件数 前月比 (9月 -2.9%、予想 1.2%)
11/20(水)
08:50 (日) 10月 通関貿易収支・季調前 (9月 -2943億円、予想 -3604億円)
08:50 (日) 10月 通関貿易収支・季調済 (9月 -1872億円、予想 -1362億円)
16:00 (独) 10月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (9月 -0.5%)
16:00 (英) 10月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (9月 0.0%)
16:00 (英) 10月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (9月 1.7%、予想 2.1%)
16:00 (英) 10月 コアCPI(食品エネルギー等除く) 前年同月比 (9月 3.2%)
16:00 (英) 10月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (9月 2.7%)
19:00 (欧) 9月 建設支出 前月比 (8月 0.1%)
19:00 (欧) 9月 建設支出 前年同月比 (8月 -2.5%)
22:00 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、講演
24:30 (米) 米エネルギー省EIA 週間石油在庫統計
11/21(木)
トルコ中銀、南ア中銀 政策金利発表
14:10 (日) 植田日銀総裁、パリのフォーラムで講演
22:30 (米) 11月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (10月 10.3、予想 5.0)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.7万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 187.3万人)
22:45 (米) ハマック・クリーブランド連銀総裁、会議挨拶
24:00 (欧) 11月 消費者信頼感速報値 (10月 -12.5、予想 -12.2)
24:00 (米) 10月 コンファレンス・ボード景気先行指数 前月比 (9月 -0.5%、予想 -0.3%)
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数・年率換算 (9月 384万件、予想 388万件)
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数 前月比 (9月 -1.0%、予想 1.0%)
26:25 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、質疑応答
26:30 (米) ハマック・クリーブランド連銀総裁、懇談会
11/22(金)
08:30 (日) 10月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (9月 2.5%、予想 2.3%)
08:30 (日) 10月 全国CPI(生鮮食料品除く) 前年同月比 (9月 2.4%、予想 2.2%)
08:30 (日) 10月 全国CPI(生鮮食料品・エネルギー除く) 前年同月比 (9月 2.1%、予想 2.2%)
09:01 (英) 11月 GFK消費者信頼感 (10月 -21)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.3%)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 3.9%)
16:00 (独) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.2%)
16:00 (独) 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 -0.2%)
17:30 (独) 11月 HOCB製造業PMI速報値 (10月 43.0)
17:30 (独) 11月 HOCBサービス業PMI速報値 (10月 51.6)
17:30 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、講演
18:00 (欧) 11月 HOCB製造業PMI速報値 (10月 46.0、予想 46.0)
18:00 (欧) 11月 HOCBサービス業PMI速報値 (10月 51.6、予想 52.0)
18:30 (英) 11月 S&PG製造業PMI速報値 (10月 49.9)
18:30 (英) 11月 S&PGサービス業PMI速報値 (10月 52.0)
23:45 (米) 11月 S&PG製造業PMI速報値 (10月 48.5)
23:45 (米) 11月 S&PGサービス業PMI速報値 (10月 55.0)
24:00 (米) 11月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 73.0、予想 72.0)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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