パウエルFRB議長の利下げを急がない姿勢で一段高
〇昨日のドル円、午前に156円台到達、19時台には156.24まで高値を伸ばす
〇昨日夜発表の米PPIは前月から再加速、新規失業保険申請件数は改善するも市場の反応は鈍い
〇本日早朝のFRB議長講演「利下げを急がない」との発言をきっかけに156.41へ上昇
〇米10年債利回りは上昇、米主要株価指数は上昇一服
〇156.65超えからは157円前後への上昇を想定
〇155.50割れからは155円試しとみる
【概況】
ドル円は11月13日夜の米CPI(消費者物価指数)の上ブレにより直前高値155.23円から154.32円までいったん下げたところを買われて14日早朝に155.50円を超え、11月14日午前には156円台に到達して19時台に156.24円まで高値を伸ばした。
14日夜の米10月PPI(生産者物価指数)が前月から上ブレし、米週間新規失業保険申請件数が前週から改善したことに対する市場反応は鈍く、深夜にかけてややドル安となり155.50円までいったん下げたものの、15日早朝のパウエルFRB議長講演での「利下げを急がない」との発言をきっかけに156.41円へ上昇して9月16日安値139.57円以降の高値を更新した。15日午前序盤もさらに高値を伸ばしている。
米大統領選でのトランプ氏勝利と与党共和党が上下院を制したことによる強い大統領と与党勢力という「トリプル・レッド」の状態でトランプ政権が発足する見通しとなり、大型法人減税、国債増発、関税強化によりインフレが再燃するとの懸念が強まってFRBの利下げペースが鈍化するとの思惑で米長期債利回りは上昇基調を続けており、9月後半からのドル円は米10年債利回りと概ね相関して上昇している。
米財務省は14日に為替報告書を発表し、今年6月の前回報告書で監視対象に再指定された日本は今回も監視対象とされた。報告書は為替介入に関して「極めて例外的な状況に限定し、適切な事前協議を踏まえて実施するべき」とし、今年7月の政府・日銀の市場介入については「日本は毎月介入実績を公表しており透明性がある」としているため、政府・日銀は米国の理解を得ながら今後も慎重かつ必要に応じて市場介入を行う可能性があると思われる。
【米PPIは9月から再加速、パウエルFRB議長は利下げ急がず】
14日夜に米労働省が発表した10月PPI(生産者物価指数)上昇率は全体の前月比が0.2%となり予想と一致したが9月の0.1%を上回り、前年同月比は2.4%で9月の1.9%から伸びが再加速して予想の2.3%を若干上回った。コアPPIの前月比は0.3%で予想と一致したが9月の0.2%を上回り、前年同月比は3.1%で予想の3.0%及び9月の2.9%を上回った。
新規失業保険申請件数は11月9日までの週間で前週比4000件減の21万7000件となり2週ぶりに改善して市場予想の22万3000件を下回った。失業保険受給者総数は11月2日までの週間で187万3000人となり前週から1万1000人減少して市場予想の188万人を下回った。
パウエルFRB議長は15日早朝の講演で「政策金利の今後の推移は指標と経済見通し次第」、「堅調な米景気を踏まえれば利下げを急ぐ必要はない」と述べた。議長は13日夜の米10月CPIや14日夜の米10月PPIについて若干上ブレしたとしたが、「インフレの鈍化傾向は多少上下しても2%の目標に向かって低下し続ける」、「労働市場は底堅いが、減速している」とし、「FRBは政策金利をより景気に中立的な水準へ時間の経過とともに動かしていく」等として追加利下げを示唆したものの、急がない姿勢とされたことでドル高反応を招いた。
【米10年債利回り上昇、米主要株価指数は上昇一服】
11月14日の米長期債利回りはパウエルFRB議長の利下げを急がない姿勢をきっかけに総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは一時4.39%へ低下したところから4.49%へ上昇してから上昇幅を削ったものの4.46%となった。30年債利回りは4.66%まで上昇していたところから4.56%まで低下していたが、議長発言から4.60%まで戻した。政策金利動向に敏感な2年債利回りは4.25%まで低下していたところから議長発言をきっかけに4.37%へ上昇した。
総じて9月後半からの上昇基調を維持しており、10年債利回りについては5%を目指すとの声も徐々に強まっている印象だ。
一方で14日の米主要株価指数はパウエルFRB議長の利下げを急がない姿勢と米長期債利回り上昇を嫌って下落した。NYダウは前日比207.33ドル安、ナスダック総合指数は前日比123.08ポイント安で12日から3営業日続落、S&P500指数は36.21ポイント安と下落した。3指数ともに11月11日に史上最高値を更新した後は上げ渋りだが、来年1月のトランプ政権発足後の大型法人減税や規制緩和への期待により米国株高基調は継続してゆくのではないかと思われる。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は13日夜の米CPI発表直後にいったん下げてから一段高したため、13日深夜安値を押し目として新たな上昇期に入っている。14日夜の米PPI発表後に小反落したところ買われてから15日早朝へ一段高しているため、15日の日中から20日夕にかけての間への上昇を想定する。14日深夜の反落時安値155.50円割れからは弱気転換注意として155円台序盤試しとする。
60分足の一目均衡表では11月11日夜への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いたが、その後も両スパン揃っての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンへ潜り込むところからは下落継続を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は15日早朝に50ポイントへ迫ってから60ポイント台へ切り返している、13日未明から相場が高値を更新しているのに対して指数のピークは切り下がっているものの、13日深夜の50ポイント割れから指数のボトムも切り上がっているためまだ上昇余地ありとみるが、次の50ポイント割れから続落に入る場合は下落継続とみて40ポイント前後を試す流れとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、155.50円を下値支持線、156.65円を上値抵抗線とする。
(2)155.50円を上回るうちは上昇余地ありとし、156.65円超えからは157円前後への上昇を想定する。157円前後は反落注意とするが、156円を上回って週を終える場合は週明けも続伸しやすいとみる。
(3)155.50円割れからは155円試しとみる。155円割れを回避して156円台へ戻す場合は上昇継続から一段高へ進む可能性ありとするが、155円割れからは下落継続とみて154円台中盤への下落を想定し、週明けも安値試しを続けやすいとみる。
【当面の予定】
11/15(金)
休場 ブラジル、インド
11:00 (中) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 3.2%、予想 3.8%)
11:00 (中) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 5.4%、予想 5.6%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 1.4%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -2.8%)
13:30 (日) 9月 設備稼働率 前月比 (8月 -5.3%)
13:30 (日) 9月 第三次産業活動指数 前月比 (8月 -1.1%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP速報値 前期比 (4‐6月 0.5%、予想 0.2%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP速報値 前年同期比 (4‐6月 0.7%、予想 1.1%)
16:00 (英) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 0.5%、予想 0.1%)
16:00 (英) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 -1.6%、予想 -1.2%)
16:00 (英) 9月 貿易収支・物品 (8月 -150.60億ポンド、予想 -162.00億ポンド)
16:00 (英) 9月 貿易収支 (8月 -9.55億ポンド、予想 -12.00億ポンド)
22:30 (米) 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 0.5%、予想 0.3%)
22:30 (米) 11月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (10月 -11.9、予想 -0.7)
22:30 (米) 10月 輸入物価指数 前月比 (9月 -0.4%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 10月 輸出物価指数 前月比 (9月 -0.7%、予想 -0.1%)
23:15 (米) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -0.3%、予想 -0.3%)
23:15 (米) 10月 設備稼働率 (9月 77.5%、予想 77.2%)
24:00 (米) 9月 企業在庫 前月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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