『ドル円は節目150.00をついに突破。上昇トレンドの本格再開に期待』
〇今週のドル円、週後半にかけ150.30(8/1以来の高値圏)まで上昇、週末は149円台半ばでの推移
〇米9月小売売上高等米指標の好調からの米金利上昇、米主要株価指数の堅調推移等が背景
〇ユーロドル、ECB理事会の利下げ決定、ラガルド総裁のハト派発言等に一時1.0810まで下落
〇ドル円、心理的節目150.00を2か月半ぶりに突破、テクニカルの地合い極めて強い
〇日米金利差縮小観測後退、中国の景気刺激策、中東地政学リスク、トランプトレード等がドル円を支持
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの本格再開をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):148.00ー152.00、(EURUSD):1.0700−1.0950
今週のレビュー(10/14−10/18)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初149.14で寄り付いた後、(1)中国経済の回復期待(中国政府・当局は国慶節前に相次いで景気刺激策を発表した他、週末10/12には藍仏安財政相より「国債発行を大幅に増やす」との発言あり)や、(2)株式市場の堅調推移(ダウ平均・S&P500が共に史上最高値更新→リスク選好の円売り圧力)、(3)ウォラーFRB理事による「利下げペースについてはより慎重に進める必要がある」「労働市場は依然としてかなり健全」とのタカ派的な発言が支えとなり、週明け海外時間に一時149.98まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)心理的節目150.00を背にした戻り売り圧力(上値トライ失敗に伴う見切り売り)や、(5)米10月ニューヨーク連銀製造業景気指数(結果▲11.9、予想+3.9)の市場予想を下回る結果、(6)オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングスによる業績見通しの大幅下方修正(ASMLショック発生→半導体株急落→日経平均急落→リスク回避の円買い圧力)、(7)安達日銀審議委員による「金融政策が正常化プロセスに入る条件は既に満たしている」との追加利上げを示唆する発言が重石となり、翌10/15にかけて、週間安値148.85まで下落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(8)安達日銀審議員による「基調的インフレ率は2%を下回っている」「追加利上げを急ぎすぎてデフレに戻るのは最も避けなければならない」との慎重な発言や、(9)米新規失業保険申請件数(結果24.1万件、予想25.8万件)の良好な結果、(10)米9月小売売上高(結果+0.4%、予想+0.3%)および、同除自動車(結果+0.5%、予想+0.1%)の市場予想を上回る結果、(11)米10月フィラデルフィア連銀製造業景況指数(結果+10.3、予想+3.0)の市場予想を上回る結果、(12)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(13)米主要株価指数の堅調推移、(14)心理的節目150.00突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、週後半にかけて、週間高値150.30(8/1以来の高値圏)まで上昇しました。週末にかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間10/19午前6時15分現在)では、149.54前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0933で寄り付いた後、早々に週間高値1.0937まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)欧州経済を巡る先行き不透明感の高まりや、(2)上記1を背景としたECBによる連続利下げ観測台頭、(3)中東情勢を巡る地政学的リスク、(4)ウォラーFRB理事によるタカ派的な発言、(5)心理的節目1.0900を割り込んだことに伴う仕掛け的なユーロ売り圧力、(6)ECB理事会での今年3回目となる25bpの利下げ決定(2会合連続利下げは13年ぶり)、(7)ラガルドECB総裁による「インフレ率は今後数カ月間上昇する可能性があるものの、来年中には目標値まで低下する見通し」とのハト派的な発言、(8)米経済指標(米新規失業保険申請件数、米9月小売売上高、米10月フィラデルフィア連銀製造業景況指数など)の力強い結果、(9)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(10)テクニカル的な地合いの悪化(最後の関門として市場参加者に意識されていた200日移動平均線の下方ブレイク)が重石となり、週後半にかけて、週間安値1.0810(8/2以来の安値圏)まで下落しました。
週末にかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間10/19午前6時15分現在)では、1.0868前後で推移しております。尚、今週発表されたドイツ10月ZEW景況感指数(結果+13.1、予想+10.0)や、ユーロ圏8月鉱工業生産(結果+0.1%、予想▲1.0%)は市場予想を上回る結果となりましたが、ユーロ買いでの反応は一時的なものに留まりました。
来週の見通し(10/21−10/25)
<ドル円相場>
ドル円は9/16に記録した安値139.58をボトムに切り返すと、今週後半にかけて、一時150.30まで急伸しました(心理的節目150.00を2カ月半ぶりに突破)。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、一目均衡表転換線、基準線、雲下限、ボリンジャーミッドバンド)の上側で推移していることや、4時間足および週足ベースで強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役好転」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて強いと判断できます。
来週は日足ベースの一目均衡表の雲上限が150円台後半へと降りてくるため、同水準を試す動きに警戒が必要でしょう。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による過度な利上げ期待の後退(石破首相は10/2に「現在は追加利上げをするような環境にはない」と市場で燻る早期利上げ期待を牽制→市場では年内追加利上げを見送った上で、来年1月に25bpの利上げを実施するとの見方が主流)や、(2)米FRBによる過度な利下げ期待の後退(直近で発表された米9月雇用統計が力強い結果となった他、米9月消費者物価指数も市場予想を上回る結果。今週発表された一連の米経済指標も総じて力強さを維持したことで、米経済のハードランディング懸念が一段と後退)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの再開期待(8月以降円ロング気味に構えていた海外勢による円ショートの再構築期待)、
(4)中国政府・当局による景気刺激策(リスク選好の円売り要因)、(5)中東情勢を巡る地政学的リスク(リスク回避の円買い以上に有事のドル買いで反応し易い)、(6)米大統領選におけるトランプ氏優勢報道(トランプトレードの再開期待)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。来週予定されている一連の米経済指標が市場予想を上回る場合には、米FRBによる11月利下げ見送り観測の再浮上を通じて、米金利上昇→米ドル急伸→ドル円急伸の波及経路が想定されることから、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの本格再開をメインシナリオとして予想いたします。尚、心理的節目150.00を突破したことで、来週は日本政府・当局による円安牽制発言が出てくる可能性があるものの、このタイミングでの実弾介入の可能性は限りなく低いと見られることから、円買いでの反応は限定的となりそうです。
来週の予想レンジ(USDJPY):148.00ー152.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/25に記録した年初来高値1.1214をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、約2カ月半ぶり安値となる1.0810(8/2以来の安値圏)まで急落しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のバンドウォーク」「8/26高値1.1202と9/25高値1.1214を天井とするダブルトップのネックライン割れ」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となっております。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(ドイツ政府は先週、2024年のGDP見通しを▲0.2%へ下方修正)や、(2)ECBによる根強い連続利下げ観測(ECB理事会は今週、今年3回目となる25bp利下げを実施。2会合連続利下げは13年ぶり。市場では12/12に予定されている次回会合での連続利下げを織り込む動き)、(3)米FRBによる過度な利下げ期待の後退(米経済のハードランディング懸念後退→米長期金利に上昇圧力)、(4)上記2、3を背景とした欧米金融政策のスタンスの違い(欧米金利差に着目したユーロ売り・ドル買い)、(5)中東を巡る根強い地政学的リスク(リスク回避のユーロ売り+有事のドル買いの組み合わせ)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。
来週予定されている欧州経済指標(ユーロ圏10月消費者信頼感指数速報値、ドイツ10月PMI速報値、ユーロ圏10月PMI速報値、ドイツ10月IFO景況感指数など)が市場予想を下回る場合には、欧州経済の先行き不安を背景に、ユーロドルがもう一段売り込まれるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします(8/1に記録した安値1.0775や、6/26に記録した安値1.0664を試すシナリオを想定)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0700−1.0950
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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