年初来安値更新後に持ち直すも戻りは鈍い。一巡後の反落リスクに要警戒
〇ドル円、アジア時間午後にかけて、年初来安値140.72(昨年12/28以来の安値圏)まで急落
〇中川日銀審議委員のタカ派的な発言、米大統領候補者討論会でのハリス氏優勢との見方の台頭等が背景
〇売り一巡後は米CPIコアの伸び率上昇等に米国時間に142.55まで反発、142円台前半での推移
〇ユーロドル、ハリス氏優勢との見方等に一時1.1055まで上昇後、米長期金利上昇に1.1002に反落
〇米FRBの関心事は「物価抑制」から「雇用の悪化阻止」にシフト、ドル売り基調続くか
〇引き続き、短期的なドル円下落をメインシナリオとして予想
〇本日の予想レンジ:140.50ー143.50
海外時間のレビュー
11日(水)のドル円相場は急落後に持ち直す展開。(1)中川日銀審議委員による「見通しが実現していけば緩和度合いを調整していく」とのタカ派的な発言(円金利先高観を背景とした円買い圧力)や、(2)米大統領候補者討論会でのハリス氏優勢との見方の台頭(トランプトレードの逆流懸念→ドル売り・円買い)、(3)日経平均株価の大幅下落(リスク回避の円買い圧力)、(4)8/5に記録した安値141.69を下抜けたことに伴う仕掛け的なドル売り・円買いが重石となり、アジア時間午後にかけて、年初来安値140.72(昨年12/28以来の安値圏)まで急落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(5)急ピッチな下落に対する反動買いや、(6)米8月消費者物価コア指数(結果+0.3%、予想+0.2%)の市場予想を上回る結果、(7)米8月消費者物価スーパーコア(結果+0.327%、前回+0.205%)の伸び率上昇、(8)上記6、7を背景とした米FRBによる大幅利下げ観測後退が支援材料となり、米国時間朝方にかけて、高値142.55まで上昇しました。引けにかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間9/12午前5時45分現在)では、142.40前後で推移しております。
11日(水)のユーロドル相場は上昇後に反落。(1)米大統領候補者討論会でのハリス氏優勢との見方の台頭(トランプトレードの逆流懸念→ドル売り・ユーロ買い)や、(2)米金利低下に伴うドル売り圧力、(3)欧州株の堅調推移、(4)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力が支援材料となり、米国時間朝方にかけて、高値1.1055まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(5)米8月消費者物価コア指数の市場予想を上回る結果や、(6)米8月消費者物価スーパーコアの伸び率上昇、(7)上記5、6を背景とした米FRBによる大幅利下げ観測後退が重石となり、日本時間23時過ぎに、安値1.1002まで反落しました。引けにかけて反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間9/12午前5時45分現在)では、1.1015前後で推移しております。
本日の見通し
ドル円は一時140.72まで急落するなど年初来安値を更新しました。米CPI後に持ち直すも戻りは鈍く、上値の重い展開が続いております。こうした動きの背景には、米大統領候補者討論会でハリス氏優勢との見方が広がったこと(トランプトレードの逆流リスク→ドル売り圧力)や、中川日銀審議委員の「見通しが実現していけば緩和度合いを調整していく」との発言を通じて日銀による追加利上げ観測が高まったこと(円金利先高観→円買い圧力)、不安定な株式市場を背景にリスク回避ムードが高まっていること(リスク回避の円買い圧力)など、幾つかの材料の組み合わせが挙げられます。
昨日発表された米CPIは、「コア指数」「スーパーコア指数」共に力強い結果となったものの、前回7月の米FOMC声明文でこれまで使用されてきたhighly attentive to inflation risksという表現からattentive to the risks to both sides of its dual mandateとの表現に変更されたことや、8/23に実施されたジャクソンホール会議でパウエルFRB議長が「労働市場がこれ以上冷え込むのを望まないし歓迎しない」と発言したこと等を見る限り、米FRBの関心事が「物価抑制」から「雇用の悪化阻止」にシフトしたことは明確であるため、昨日発表された米CPIが強かったからといって足元のドル売り基調がストップする可能性は乏しいと考えられます。
以上を踏まえ、当方では引き続き、短期的なドル円下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、本日は田村日銀審議委員記者会見、ECB理事会、ラガルドECB総裁記者会見、米8月生産者物価指数、米新規失業保険申請件数などが予定されております。
本日の予想レンジ:140.50ー143.50
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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